ブラームスの第4

昔、まだ高校生の頃、その頃はまだCDなるものが開発されるちょっと前で、いわゆるLPレコードやカセット・テープが主流の時代で、ものによっては数百円で手に入る今のCDとは明らかに違い、新発売だと最低でも千円札2枚は必要だったものだから、音盤の1枚1枚が10代の僕にとってとても貴重なコレクションになっていったことを今更のように思い出す。
秋の今頃はちょうどブラームスを聴くのに相応しい時期で、そのときも確か今時分だったと記憶するのだが、ちょうど当時かぶれ始めていたハンス・クナッパーツブッシュの指揮するブラームスの第4交響曲(1957Live)が店頭に並んでおり、気になってなけなしのお金を投じて手に入れたことが懐かしい。 Seven Seasというレーベルから出ていたものだが、おそらく海賊版で、それでも鑑賞には十分に耐えうる音質だったし、何よりその解釈にぶったまげた。

当時、ブラームスの第4といえば、僕の中ではフルトヴェングラー盤ワルター盤が双璧で、友人たちとどちらが良いか、どちらが好きかなどを相当議論しあったものである。今から考えると、どちらも指折りの名演で甲乙つけがたく、一家にこの2枚は揃えておくべきCDではなかろうかと思うおススメ盤である。
とはいえ、しいて言うならフルトヴェングラー盤が僕の好み。それは、フルトヴェングラーらしい、テンポが著しく揺れるデモーニッシュな演奏で、特に、フィナーレなどは聴いていて自分自身の呼吸や鼓動がつられて勢い速くなるような目まぐるしさで、いまだにこの造形が耳から離れないほどである。
ちなみに、その様は偶然残されている1948年のロンドンでのリハーサル風景の映像を観れば一目瞭然だ。ひとたび観出すと画面の前に釘付けにされるほどのオーラが漂い、この曲はこうであらねばならない、という錯覚を起こさせてしまうほどフルトヴェングラー節丸出しの悪魔的音楽なのである。

ところで、クナッパーツブッシュ盤。僕が若い頃ぶっ飛んだという1957年盤ではなく、1953年盤がOrfeo D’orから正規音源で初めて発売されたので聴いてみた。

ブラームス:交響曲第4番ホ短調作品98(1953Live)
ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ケルン放送交響楽団

一聴、金管の咆哮や弦のうねりは明らかにクナッパーツブッシュの指揮なのだが、どちらかというと1957年盤に軍配が上がる。
終楽章において、フルトヴェングラーとは全く正反対の解釈、つまりだんだんテンポが遅くなるという異常に呼吸の深い解釈は圧倒的に57年盤が優位。その点、53年盤は基本的にインテンポで、時折金管の雄叫びは聴かれるものの、57年盤より印象は薄い。僕はクナッパーツブッシュの音源については全く詳しくないのだが、このLP(1957Live)はCD化されているのだろうか?
できれば正規音源のCDを聴いてみたいものである。

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