勇気の音楽

ワーグナーの破天荒ぶりは並大抵のものじゃなく、借金という借金を重ね、近しい人にいろいろと迷惑をかけたという意味では最低の人間だったらしい。しかしながら、その芸術的才覚は人類史上稀にみるほど天才的で、その才能に惚れこんだバイエルン王が一生を保障するだけの資金を提供したことは有名な話である。
人間的に最低というのは、女性関係でもそうで、最初の妻との結婚生活のときも、マティルデ・ヴェーデンドンクとの不倫問題で物議を醸したし、友人であったベルリン・フィルハーモニー初代常任指揮者のハンス・フォン・ビューローの妻であったコージマを寝取って自分の伴侶にしたりと、そのハチャメチャぶりは脱帽ものである。とはいうものの、そういった女性関係から彼の傑作楽劇が生まれているというのも事実で、「英雄色を好む」じゃないが、性欲はイコール創造欲求であるということも否めない。

ところで、ワーグナーの最後の妻となったコージマはフランツ・リストの娘であった。つまり、年齢は2歳しか違わないのだが、リストはワーグナーの義父であったわけだ。19世紀前半、ショパンと人気を二分した彼も義理の息子同様根っからの女たらしで、やはり「天才は色を好む」ということが納得できる。確かに、音楽の恋文を送られたり、自分のために超絶技巧的なピアノ曲をいとも簡単に目の前で弾かれたりすると女性はイチコロなのだろう。とにかくリストがピアニストとしても一流、作曲家としても名を成す天才であったことは否定しようのない歴史的事実なのだから。

フランツ・リストの作曲した交響詩「前奏曲」を聴く。

リスト:交響詩「前奏曲」
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

先日観た「愛と哀しみのボレロ」でも使用されていた楽曲。また、ナチス時代にラジオ・ニュースのテーマ音楽としても使われていたらしい。どうもワーグナー周辺の音楽は人間をアジテートするプロパガンダ音楽としての要素をもっているようだ。この「前奏曲」も何度も聴いていると飽きが生じる曲なのだが、久しぶりに聴くととても「勇気」を起こさせてくれる。「戦闘」向きの音楽なのだろう。

※ちなみに今日はリストの誕生日である。

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