Pauline Oliveros “electronic works 1965+1966″を聴いて思ふ

oliveros_electronic_works685これははまる。
電気的に増幅された音楽は、そして当時最新のテープを駆使しての作品は、人間の意志と機械との共同作業だ。
こういう「音楽」が50年も前に生み出されていたことに驚きを隠せない。
あの頃の視点からするとそれは間違いなく前衛という範疇に入るもの。現在の視点からしてみても見事に「新しい」。
ポーリン・オリヴェロスは「聴く」ことが鍵なのだという。

聴くことは、最初の鍵となります。もし耳を傾けなければ、気づくこともありませんから。
ハンス・ウルリッヒ・オブリスト著/篠儀直子・内山史子・西原尚訳「ミュージック―『現代音楽』をつくった作曲家たち」(フィルムアート社)P192

やはりすべては外界とのコミュニケーションなのである。しかも、彼女が「ディープ・リスニング」と呼ぶいわば全方位的瞑想が重要なのだと。

それは1953年で、テープレコーダーが初めて一般消費者向けに発売された年でした。私が最初にしたことは、窓にマイクを取り付けて、そこで起こること全てを録音することでした。そのテープを聴いたときに、録音している時には気づいていなかった音がそこにあったことに気づきました。だから、その瞬間から、いつも全てに耳を傾け、いつでもどこでも自分を取り巻く音に意識を拡張し続けようと自分に言い聞かせました。これが言うなれば私のメディテーション(瞑想)で、そこから発展しました。
~同上書P191

オリヴェロスの言葉は重い。文明の発展とともに芸術家の視野が確実に拡がり、それによって創造物の可能性が格段に大きくなったことはやはり喜ばしいことなのだと思う。

ポーリン・オリヴェロス:エレクトロニック・ワークス1965+1966
・I・オブ・IV(1966)
・ビッグ・マザー・イズ・ウォッチング・ユー(1966)
・バイ・バイ・バタフライ(1965)

彼女の作品が、おそらく後の様々なジャンルのミュージシャンに影響を与えたことは間違いないだろう。
30分以上に及ぶ「ビッグ・マザー・イズ・ウォッチング・ユー」の壮大な音絵巻。水の如く流れる(雑音のような)持続音の上に、ちょうど5分を過ぎたときに突如現れる信号音の新鮮さ。そしてまた、代表作「バイ・バイ・バタフライ」におけるめくるめく電子音の快感。コラージュ的に挿入される女声歌唱の美しさ。
オリヴェロスの作品には不思議なハーモニーがある。
オリヴェロスはかく語る。

ハーモニーとは聴くことで、関係性を感じ取ることについてです。聴くことを通じて関係性を感じ取ること、それこそが私がハーモニーと考えるものです。
~同上書P193

御意!!

 

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3 COMMENTS

雅之

>人間の意志と機械との共同作業だ。
>こういう「音楽」が50年も前に生み出されていたことに驚きを隠せない。

面白そうな録音ですね。1965+1966ですか。日本では「ウルトラQ」が作られた時代ですね(笑)。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%A9Q

https://www.amazon.co.jp/%E3%80%8E%E7%B7%8F%E5%A4%A9%E7%84%B6%E8%89%B2%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%A9Q%E3%80%8FBlu-ray-BOX-I-%E4%BD%90%E5%8E%9F%E5%81%A5%E4%BA%8C/dp/B004UD3U6E

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岡本 浩和

>雅之様

電子音楽のはしりで、イーノなんかにも少なからず影響を与えているかもしれません。
確かに日本では「ウルトラQ」ですよね。総天然色版は観ておりませんが、興味深いです。

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