フリック ヴィントガッセン シュトラウス セバスティアン指揮フランス国立管 ワーグナー 舞台神聖祭典劇「パルジファル」(抜粋)(1964.3.17Live)

コンサート形式による舞台神聖祭典劇「パルジファル」抜粋。
古い映像だが、フリック、ヴィントガッセン、シュトラウスという当時の名ワーグナー歌手の絶唱と絡み合いに僕は息を呑んだ。

第2幕のクライマックスたるパルジファルの覚醒の場面。ヴィントガッセンが歌うパルジファルの心からの叫びに感応する。

アムフォルタス!—
あの傷、あの傷だ!
あの傷が、この胸の中で燃えている。
ああ、嘆きだ、嘆きだ!
胸の奥底から、あの叫びが聞こえてくる。
ああ、ああ
いたわしや
苦悩の権化!

日本ワーグナー協会監修/三宅幸夫・池上純一編訳「パルジファル」(白水社)P71

編訳者の、ワーグナーの思想の深読みが素晴らしい。

クンドリの口づけによって、パルジファルは一挙に欲望と罪と救済の連環に開眼する。アムフォルタスの名が口をついて出たのは、この瞬間はじめてパルジファルの心に届いた「憐れみたまえ」の絶叫に対する無意識の反応。—いまやパルジファルは決定的な「知にいたり」、「世界を曇りなく見通せるように」なる。
~同上書P71

まさに聖愚者パルジファルの真骨頂!
何という力強い目覚めの歌唱であることか!

そして、第3幕からは崇高なる「聖金曜日の奇蹟」の場面!
ここではグルネマンツを歌うフリックの重いながら澄んだ声音に釘付けになる。
(最晩年のワーグナーの「再生論」が裏付けとなるグルネマンツの言葉の重み!)
(生き物に対する「共苦」の実践としての動物愛護、あるいは菜食のすすめ!)
ついにパルジファルはここで開眼したのだ!

フリック ケンペ指揮コヴェントガーデン王立歌劇場管 ワーグナー「パルジファル」抜粋(1959録音)

(小瓶の中身をすべてパルジファルの頭に振りかけ、そっと撫でつけてから頭上で合掌する)
まこと、われらに約束されしごとく
あなたの頭を祝福し
王としてお迎えしたい。
あなたこそ、けがれなく人。
共苦のうちに耐え忍び
知にいたりて大いなる救いのわざをなせる人。
救われし者の苦悩を共に苦しまれた方よ、
かの者の首から最後の枷を外したまえ。

~同上書P95

神が広大無量の心で人間を憐れみ
人間のために苦しまれたように、
今日は人間も慈愛の心で
草花を踏みつけぬよう、心して足を運びます。
すると地に花を咲かせ、はかなく枯れゆくものたちは
こぞって感謝を捧げるのです。

~同上書P97

パリはプレイエルホールでの実況収録。
何と、僕の誕生日の5日前のこと!
強いていうなら、明快な管弦楽がドイツのオーケストラだったらもっと重厚かついぶし銀の如くの響きを醸したであろうにと、贅沢な見解だが、その点だけが惜しまれる。

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