朝比奈御大が亡くなったとき、特に在阪の民放テレビ局はこぞって追悼番組を放映した。東京に住んでいる僕は、当時、仲間や身内の協力を得て、とにかく一つの情報も漏らすまいと網を張り、多くの特別番組を録画してもらったものだ。
中でも、「朝比奈隆の肖像」とタイトルされた、岡田真澄をナレーションに据えた番組は出色だった。御大と関係のあった有数の音楽関係者はもとより、ご家族の登場、そして何より数々の名演奏の抜粋など、今見ても実に興味深い内容で、どなたかがYoutubeにアップされているのを発見し、僕は思わず欣喜雀躍した(後日関東地域で放映されたときは短縮版だった)。
朝比奈隆の93年の人生は、文字通り生涯現役の、一日でも多く舞台に立つという目標を達成した素敵な人生だった。そしてまた、たくさんの人たちに愛された、音楽家としては珍しく特別な音楽教育を受けていない稀有な存在だった。
2002年2月にザ・シンフォニー・ホールで開催された「お別れの会」に僕は足を運んだ。それは、本当にたくさんのファンが訪れた、素敵な会だった。あのときの、温かい空気感を僕は今も忘れない。
今日は、朝比奈御大113回目の誕生日。
今でも御大の音盤を取り出しては悦に浸る僕がある。
特に、御大のブルックナーはいまだに世界一。
あらためてありがとうございました。