素敵な老指揮者

昨夜、スーパーワールドオーケストラのレセプションに招かれ参加した。
その名の通り世界各国のコンサートマスターレベルの奏者が集合してのオケ。演奏も一流ながら(予想に反して・・・)、パーティーでの気さくさも一流。話しかけると喜んでいろんな話をしてくれる温和な人たちばかりだ。

ところで、一昨日かつしかシンフォニーヒルズで生本番を聴いたのだが、面白かったのはタマーショ・ヴァシャーリ氏の指揮姿。身体の全てを駆使してのテンポの引き締まった情熱的な演奏。あとでお年を伺うと75歳だという。天晴れ。

そのヴァシャーリ氏とも会合では少しばかり話をさせていただいたが、まるで印象が違う。猫背で誰ともコミュニケーションをとらず一人もそもそと料理を口に運ぶ姿からは全くエネルギーを感じない。とても人の良さそうな人だが・・・。
彼はもともとピアニストで、今回は何とバレリーナの奥様も同伴で来日しているということ。何と40歳以上も年齢が離れているらしい。普通見てるとただの爺さんなんだが、ひとたび演奏が始まるとそのオーラたるや半端ではない。若い女性を魅了する「何か」があるんだろう。
昨日も宴の終わり近く、数人の関係者を前に別室でピアノを披露してくれた。あくまで余興だが。いやすごい・・・。ほんとにピアノを前にすると人が変わる。ホテル行きのバスが到着しており指揮者待ちの状況。周りのスタッフはやきもきして声を掛けたいが掛けられないという有様。ショパンのスケルツォ、ノクターンに続きベートーヴェンの「月光ソナタ」を弾き始めたと思いきや、そのまま第2楽章に突入・・・。「もしや全曲弾くの?いやいや、時間が・・・」という中、とうとう全曲を弾き終わってしまった。
完全集中!!立派なものです。思わず「ブラヴォ!」って言ってしまいました。

ところで、今日は最近リリースされたカール・ベーム最晩年の来日公演の記録を観た。当時NHK教育テレビで放映された際、その鈍重なテンポに全く辟易し感心しなかったという記憶がある。27年の時を経て再度DVDで見てみると、自分が感じたほど「遅い」感じがしない。むしろその「遅さ」の中にベームの最後の「輝き」が潜んでいるように聴こえてならない。終演後ベーム翁が一人舞台に何度も呼び出されるときの聴衆の熱狂ぶり。こちらも大したものです。うーん、どういうことだ・・・。自分の耳が進歩したのか・・・。
いずれにせよ間違いなく巨匠的名演奏です。

カール・ベーム指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
1980年来日公演(DVD)

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1 COMMENT

アレグロ・コン・ブリオ~第4章 » Blog Archive » 調和とバランス

[…] ベームは間違いなく実演の人だ。 モーツァルトのシンフォニーの録音も多数残されているが、ライブでこそ生命力に溢れたベームの真骨頂が堪能できる。この映像もそう。どこまで編集されたものなのか想像はつかないが、少なくともグラモフォンのスタジオ盤よりは明らかに燃えるベームその人がそこにいる。 1970年代の前半というとまさにカール・ベーム全盛期。このDVDセットは3枚組で1978年頃の映像も含まれるが、わずか4,5年の歳月の差が人間の風貌に翳りを与えるんだということもわかって非常に面白い。確かに僕の記憶の中の動くカール・ベームは、1980年の人見記念講堂での来日公演の映像だったり、同じ年の上野での「フィガロの結婚」を指揮するオーケストラ・ピットでの老いぼれた(?)姿(座って指揮していた)だから、その2年前はまだ立って指揮していたんだとこのDVDを初めて観た時には驚かされたことを思い出す。80歳前後の人間のエネルギーというのはがわずか1年ほどでこうも変化してしまうんだな・・・(驚)。 […]

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