Sacred Songs

来月4日の「早わかりクラシック音楽講座」の流れをどのようにしようかと少し思い悩む。55年というドビュッシーの人生は長い方ではない。発表された作品の数も決して多くはないから全体を俯瞰するのはそう難しくないのだが、彼の楽曲同様どうも捉え難い。女性遍歴など波乱万丈の生き様にフォーカスを当てて進めていくだけで十分興味深いコンテンツになることは間違いなのだけれど・・・。

いくつもの皿を一度に回しているようで、例年になく追われている感じ。ただし、優先順位をつけながら、かつバランスを崩さないようにひとつひとつを丁寧にこなしてゆけば大丈夫だとはわかっているから焦りはあまりない(それに、切羽詰まれば「火事場の馬鹿力」が発揮できるタイプだから何とかなるだろうし)。

頭を冷やすのに、少々クラシック音楽から遠ざかることにする。
考え過ぎないで済むような音盤をと思いつつも、僕の場合どうしてもついつい暗めの音楽に触手が動く。

Daryl Hallのソロ・アルバムといいながら、間違いなくRobert Frippとのコラボレート・アルバムといったほうが正しいDarylのファースト・ソロ・アルバム。発表から30年超の月日が流れる。

Daryl Hall:Sacred Songs

Personnel
Daryl Hall(vocals, keyboards, synthesizer, mandar)
Robert Fripp(guitars, frippertronics)
Roger Pope(drums)

僕の世代では、Daryl HallというとHall & Oates時代の”Maneater”などが最初に思い浮かぶという人が多いかも。そういう僕自身もこのアルバムをまともに聴いたのはだいぶ後になってのこと。Frippの”Exposure”、Peter Gabrielのセカンドと合わせて3部作とされている”Sacred Songs”だが、じっくり聴いてみると実に素晴らしい。さすがに音の作りはGabrielの2枚目と酷似しているが、音楽的センスを含めた作品そのものの出来は、実にDarylの方に軍配が上がる(と僕は思う)。隠れた名盤であり名作。レーベルがリリースを渋ったお陰で録音から一般の耳に届くまでに2年以上の歳月を要したようだが、予想通り当時は(もちろん今も)一部のファンを除きほとんど売れなかった模様。
5曲目の”NYCNY”なんてKing Crimson風のイントロからしていかにもだし、6曲目”The Farther Away I Am”は涙が出るほど美しい。Daryl Hallの天才を感じる。

The farther away I am,
The farther away I am
Is it just a cloud passing under
I don’t want to lose you…

離れていく
どんどん離れていく
まるで雲が流れてゆくように
君を失いたくない・・・

6 COMMENTS

雅之

おはようございます。

>55年というドビュッシーの人生は長い方ではない。

そうか、ドビュッシーは田中好子と同じ歳で亡くなったんですか!!

Daryl HallとかHall & Oatesについても、残念ながら詳しくありませんので語れません。
いつも勉強になります。ありがとうございます。

しかし、こうして毎日岡本さんのブログを愛読し続けてみますと、
岡本さんの音楽嗜好も、私同様、99%以上、
10代~20代前半くらいに聴いたものが骨格になっていますね。

人間40代も後半に入ると、
新しいものを吸収するより昔を懐かしむ傾向が強くなり、
年寄になると、昔話が増えるのは自然の摂理なのでしょうが、
「昭和を懐かしむ」という、この我々中年世代全体に特に顕著な風潮も、
時代の閉塞感が、無意識・深層心理では密接に結びついているんではないでしょうかね
(まだ現役バリバリなのに、私を含め我々世代は、諸先輩世代の中年時代のころと比べ、
年齢の割に昔の思い出話が多過ぎる気がいつもしている)。

私がぼーっとしたい時、
このところちょっと実験的に、あえて行動パターンを変えて
過去の音盤にすがる比率を低めてみています。
CDもだいぶ、被災地への義捐金かせぐために売りましたし・・・。

明日から私はゴールデンウィークになります。
旅行等のため、当分、コメントはお休みします。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
こんにちは。

>「昭和を懐かしむ」という、この我々中年世代全体に特に顕著な風潮も、
時代の閉塞感が、無意識・深層心理では密接に結びついているんではないでしょうかね

おっしゃるとおりかもしれませんね。中年とは思いたくないですが、我々が懐古趣味ではなくもっと「今」を謳歌し、明るい未来に希望をもって日々を過ごしていく姿勢は大事ですね。口では偉そうにいいながら、ついつい自分は「昔」にばかり想いを馳せてしまっています。まぁ、それもリラックス法のひとつですから否定はしないほうがいいですが。

>あえて行動パターンを変えて
過去の音盤にすがる比率を低めてみています。

それは名案です!一番は実演に触れることでしょうね。

>CDもだいぶ、被災地への義捐金かせぐために売りましたし・・・。

素晴らしい!!雅之さんのコレクションにはファン垂涎ものもいっぱいあったことでしょうから結構な金額になったんじゃないですか?

>明日から私はゴールデンウィークになります。

ゆっくりお休みください。僕はGWもいろいろと頭を使う仕事が残っております。(苦笑)

返信する
みどり

“Lizard”から跳んで来ました。

クリムゾンを初めて聴いたのは中1の時分。もちろん「宮殿」。
私自身には、イアン・マクドナルドがいたKing Crimsonでした。
ロバート・フリップという人物に全く興味がなく(殆ど同義で
ワーグナーやプロコフィエフという人が好きではなく…)、
そもそも双方向のコミュニケーションを求める人なのかどうか
理解できず。

などと思いながら、思い出したのが“Sacred Songs”。
発売を待って買い、ジャケットを額装していたことも。

岡本さんとは同世代のはずですが、“Maneater”ですか?
確かにヒットチャートを賑わせていた時代もありましたが、
Hall&Oatesの真骨頂は“Bigger Than Both Of Us”から
“Along The Red Ledge”辺りの作品群にあるような気が
します、年季の入ったファンからすると。
Daryl Hallが書く歌詞って結構危ないの多くて(笑)。

“Sacred Songs”は30年近く聴いていないかも…と
思いましたが、“NYCNY”も“The Farther ~”も
覚えている自分がいて、驚きます。

私にとって天啓にも等しかった言葉の一つは、
30年以上も前のインタビュー記事でしたが
「あなたほどの人でも自己嫌悪を感じることがあるか?」
とイアン・マクドナルドが問われ、こう答えていたのです。
「自分の才能についてとかね」

以降、私は自分の「才能」について一切考えません。
馬鹿馬鹿しくって!(笑)

返信する
岡本 浩和

>みどり様
おはようございます。
みどりさんの音楽遍歴には僕など足元にも及びません。中1で「宮殿」とは恐れ入ります。
なるほど、イアン・マクドナルド=クリムゾンですか!!やっぱり相当の通だと思います。

>岡本さんとは同世代のはずですが、“Maneater”ですか?

いや、これは僕がロックについては遅れてきたファンなので、あのイメージが強いというだけですね。
多分きちんとHall & Oatesをオン・タイムで聴かれていた方はみどりさんがおっしゃる通りのご意見だと思います。

>“NYCNY”も“The Farther ~”も覚えている自分がいて、驚きます。

すごいですね~、筋金入りですわ。
いろいろと教えていただかなくてはなりませんね。
イアンのインタビューも素晴らしい!!

返信する
みどり

滅相もない。大してきちんと聴いていないというだけのことです。
クラシックは全然ダメだし日本の音楽も少数の古典以外は全く。

昔…アメリカの雑誌のインタビューで「お互いを一言で表すと」の
答えが秀逸で大笑いしたのですが
Daryl Hall “Short”
John Oates “Extremes meet”
だそうです。

返信する
岡本 浩和

>みどり様

何をおっしゃいますか!!

>アメリカの雑誌のインタビューで「お互いを一言で表すと」の
答えが秀逸で大笑いしたのですが

このエピソードそのものが群を抜いています。そういう昔の話をきっちり記憶されているところが誰も真似できないみどりさんの凄いところだと思います。

返信する

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