Steve Reich Phases

ヨゼフ・スーク氏が亡くなった。
またひとり20世紀を代表する音楽家がこの世を去った。
残念ながら、実演に接する機会を逸した僕にとって、かつてのスプラフォンやDENONレーベルでの名演奏だけが彼の演奏を知る手掛かりだった。それでも若い頃のある時期、随分お世話になった。冥福をお祈りします。
ということで、故人を偲んでベートーヴェンのトリオから1枚(以前も採り上げたが)。

若きベートーヴェンの挑戦的で楽天的な心構えが見事に現出したこの時期の三重奏曲は、当時ウィーンという音楽の都で、ピアニスト、青年作曲家として認められつつあった彼の自信作だと思われるが、スーク率いるトリオの絶妙な「間合い」と「音楽性」がそれに輪をかけるように中後期の傑作並みの存在感を与える。作品1-3も、「街の歌」と呼ばれる作品11も人後に落ちない名演奏だが、それより何より1791年に作曲された作品番号を持たない変ホ長調トリオの素晴らしさよ(調性からひょっとするとフリーメイスンと関係ありか?!)。この作品の特徴は、さすがピアニストとして活躍し始めた頃のものだけあり、全楽章を通じ飛び跳ねるような、軽快で嬉々としたピアノが活躍するところ。ヨゼフ・ハーラの軽妙な指使いが目に見えるようで、嗚呼何とも実演を聴けなかったことが真に悔やまれる。

ベートーヴェン:
・ピアノ三重奏曲第3番ハ短調作品1-3
・ピアノ三重奏曲第4番変ロ長調作品11「街の歌」
・ピアノ三重奏曲変ホ長調WoO.38
スーク・トリオ
ヨゼフ・ハーラ(ピアノ)
ヨゼフ・スーク(ヴァイオリン)
ヨゼフ・フッフロ(チェロ)(1983.6,12 & 1984.4.10-17、プラハ芸術の家)

さて、本日は久しぶりに外出する用件のない一日で、朝から繰り返し聴いた音盤を。
Steve Reich Phases – A Nonesuch Retrospectiveから1枚。

・Music for Mallet Instruments, Voices, and Organ(1973)
・Drumming(1971)
Steve Reich and Musicians

ただただ、ひたすら繰り返される音の集積の中に、ほんの少しずつの音調の変化が聴き取れ、ライヒの言う”Gradual process”というものが、人間の生理現象に極めて近似的要素を秘めているんだということがよくわかる。そうやって人間の身体も日々少しずつ老化(変化)してゆくのだし、心身が自ずと欲しているかのようについつい耳を傾けてしまうのだから面白い。「ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」、これは・・・、はまる・・・。


4 COMMENTS

雅之

おはようございます。

そうなんですよ、ヨゼフ・スークは1929年8月8日のお生まれで、私の父(1929年7月7日)の生まれの1か月後だということを遠い学生時代に気付き、当時からものすごく個人的に親近感を抱いておりました。

じつは、岡本さんの7月4日付ブログ本文、ビル・エヴァンスの回 (1929年8月16日 – 1980年9月15日)にコメントして以来ここ数日なんとなく、1929年生まれのアーティストの誰かに近々不幸があるのではないかとの不吉な予感がありました(その時はシベリウスを集中して聴いていたので、ベルグルンドかと思って心配した)。それが、まさかヨゼフ・スークが父の誕生日7月7日にお亡くなりになるとは・・・絶句です。

ヨゼフ・スークは、私が何度も実演を聴き、最も感銘を受けたヴァイオリニストです。スメタナ四重奏団と並んで、チェコ弦奏法の最も輝かしい成果です。ご紹介のような室内楽でも、誇張が無い中欧の伝統の香りが素晴らしいです。
また、氏のヴィオラも美音で憧れました。ヴィオラを弾いた音盤も数多く残していますが、知る限り外れがありません。

私が氏の録音で最初に堪能したのは、バッハの無伴奏でした。

バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ集 ヨゼフ・スーク 
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%8F-%E7%84%A1%E4%BC%B4%E5%A5%8F%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%82%BF%E9%9B%86-%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%82%AF-%E3%83%A8%E3%82%BC%E3%83%95/dp/B00005GIN2/ref=sr_1_9?s=music&ie=UTF8&qid=1310158975&sr=1-9

バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ集 ヨゼフ・スーク 
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%8F-%E7%84%A1%E4%BC%B4%E5%A5%8F%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E3%83%91%E3%83%AB%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%82%BF%E9%9B%86-%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%82%AF-%E3%83%A8%E3%82%BC%E3%83%95/dp/B00005GIN3/ref=sr_1_8?s=music&ie=UTF8&qid=1310158975&sr=1-8

中欧の伝統に根付いた、精神性と美音の両立。シェリング、グリュミオーの長所を併せ持った、至高のバッハと言いたいです。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
それにしても完全に予想していたかのような先日のコメントでした。
それに、おそらく雅之さんは今日のコメントでバッハの無伴奏を持ってくるだろうとも予想しておりました(笑)。
名品ですね、これは。
何度もスークの実演に触れられたことのあるご体験羨ましい限りです。

返信する
雅之

>おそらく雅之さんは今日のコメントでバッハの無伴奏を持ってくるだろうとも予想しておりました(笑)。

今朝は直球ど真ん中すぎましたか(笑)。

仕方がないので、真の秘蔵愛聴盤をご紹介します。

フランク;ヴァイオリン・ソナタ/プーランク;同/フォーレ;子守歌@スーク(vn)パネンカ(p)
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AF-%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%82%BF-%E3%83%97%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AF-%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%AC-%E3%83%91%E3%83%8D%E3%83%B3%E3%82%AB/dp/B000UUXMUA

これなら絶対にお持ちになられていないはずです(笑)。
本当はもったいなくてご紹介したくない秘密の愛聴盤なんですが(笑)。

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岡本 浩和

>雅之様
こんにちは。
おっとっと・・・、これは参りましたm(_ _)m
確かに「絶対に」持っておりません。
しかも長らく廃盤のようですね。

>本当はもったいなくてご紹介したくない秘密の愛聴盤なんですが

そういわれると、ますます聴いてみたくなります。
一仕事終え、これから僕は教え子の結婚式なんですが、仕方がないので帰宅後これを聴いてみることにします。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B0007VLVWI?ie=UTF8&tag=opus3net-22&linkCode=xm2&camp=247&creativeASIN=B0007VLVWI

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