ジャズの神様が降臨したかのような名盤たちがマイルス・デイヴィスの「周辺」には多い。あえて「周辺」と書いたのは、マイルス自身の作品に畏れ多さを感じてなのか、少なくとも僕の少ないジャズ音盤体験に照らし合わせてみたところ帝王本人のものより彼に見い出され、卒業していったジャズメンの作品にシンパシーを感じ、よく聴いてきたように思われるから。チック・コリアの初期の録音からは天使が舞い降りるような清楚で眩い光が常に感じられるし、一方、ハービー・ハンコックの場合は、地から大王が沸き立つような芯の通った力強さが聴いてとれる(あくまでこれは僕の勝手な見解だけれど)。洗練された、いかにも白人的なニュアンスが充溢するチックに対して、黒くしつこい、ストーカー的な粘着質の、一度聴いたら忘れられない音楽がハービーの録音には刻まれる。
どちらも一時期マイルス・デイヴィスを支えた優秀なサイドメンであり、ほどなくジャズ界の中心を歩くようになる天才たちである。ピアノという楽器の可能性を最大限追求し、しかも互いに違った表現方法で駒を前に進めながら時にはコラボレートし、ジャズを音楽を牽引してきた2人を前に今更僕が何かを述べる必要もない(作品自らが彼らを語るから)。
昨日はモーツァルトを聴きながら、晩年の不滅の作品群が真の「自立」を条件に生み出されたものだということにようやく気がついた。他人に何らかの智慧を与えるにはまずは自らが己に克ち、自律的に生きることが重要なのだとも教えてもらった。そして、そのことはジャズの世界においてマイルス・デイヴィス個人やその周辺の音楽家たちを具に調べてゆけば自ずと理解できるものだということもわかった。チックの、ハービーの60年代の音楽からは輝けるばかりの光が燦々と降り注ぐよう・・・。本当に美しく、そして心が躍り騒ぐ。
Herbie Hancock:Empyrean Isles
Personnel
Freddie Hubbard(cornet)
Herbie Hancock(piano)
Ron Carter(bass)
Tony Williams(drums)
“One Finger Snap”
“Oliloqui Valley”
“Cantaloupe Island”
“The Egg”
あまりに正当なカルテット。マイルスとは違う「ドロドロ感」のないフレディ・ハバードのトランペットの咆哮が胸を劈く。繰り返し聴くたびに、独特のリズムが心臓の鼓動と同化し、一気に心地良い気分に浸れる。これは子守歌である(先日、ファンキー”Cantaloupe Island”について触れたが、やっぱりオリジナル版の方が僕は好きかな・・・)。
出逢ってもう6,7年になろうとするが、さきと初めてサシで飲んだ。「いかれた」話を肴に盛り上がった(笑)。そんな中、僕の以前のボスたちは究極に人間っぽい人だったんだという話に及んだ。欲や情、あるいは嫉妬や怒り・・・、人間の持つあらゆる「俗的なもの」をデフォルメして生きている人々。10数年という長きにわたってそういうものを学習する必要があったんだということが今になって理解できた。ありがとう。
おはようございます。
ハービー・ハンコックについては、あれやこれや感心して聴いたことはありますが、彼についてのベーシックな知識は、ほとんど持ち合わせていませんでした。
そこで、例によって安直にウィキペディアで調べると、
・・・・・・・2003年2月20日、日本外国特派員協会にて以下の発言をしている。
「私自身は決してそういう人間にならないようにと願っています。自分は何でも知っていると信じ、ほかの人たちの言うことに耳を貸すことを忘れてしまった人、年長者だというだけの理由で年下の人たちよりも何でも知っていると思い込んでいる人、私は絶対にそういう人間にはなりたくありません。そこには非常に大きな誤りがあるんです。実際、私も教えるという機会に恵まれたときに経験したことですが、先生と呼ばれる人たちの多くが、教える生徒たちよりも、むしろ教える自分のほうが生徒たちから学ぶことのほうが多いと証言していました。これはとても良いことだと思います。」「私は演奏するとき、一生懸命にならないように努力しています。演奏するときはただ、オープンな気持ちになりたいと思うだけです。そうすれば、何が起きてもオープンに受け入れられ進んでその瞬間に起きていることの自然な流れの一部になりたいと思うようになります。」・・・・・・
などと、非常にいいこと言ってますね。
・・・・・・SGI(創価学会インターナショナル)を信仰しており、アメリカSGI会員、SGI芸術部長であることを公言している。入信は、1972年にベーシストのバスター・ウィリアムスに「南無妙法蓮華経」の題目を教えられたことがきっかけであり、現在では毎朝、毎晩題目を唱えているという。ハンコックの創価学会を根本にした宗教信仰は作曲、演奏などにも影響を与えており、例えばヘッドハンターズ時代の楽曲である「Actual Proof」は日蓮の教えで言うところの「現証」の英語訳である。「FUTURE 2 FUTURE」の1曲目「WISDOM」は参加ボーカリストによる法華経の池田大作による解説文の朗読とハービーのキーボード演奏のみの曲である。・・・・・・
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%93%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%82%B3%E3%83%83%E3%82%AF
『信じない人のための「法華経」講座』 中村 圭志(著) 文春新書
http://www.amazon.co.jp/%E4%BF%A1%E3%81%98%E3%81%AA%E3%81%84%E4%BA%BA%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E3%80%8C%E6%B3%95%E8%8F%AF%E7%B5%8C%E3%80%8D%E8%AC%9B%E5%BA%A7-%E6%96%87%E6%98%A5%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E4%B8%AD%E6%9D%91-%E5%9C%AD%E5%BF%97/dp/4166606565/ref=sr_1_9?s=books&ie=UTF8&qid=1320277941&sr=1-9
断然、禅宗ファンの私も、学ぶところの多かった本でしたが、創価学会となるとですね・・・。
>人間の持つあらゆる「俗的なもの」をデフォルメして生きている人々。
あなたも私もハンコックもモーツァルトもね(笑)。
>雅之様
おはようございます。
対象が何の宗教でも(宗教じゃなくても)信仰心篤い人というのは素敵だと思います。
まぁ特定の宗教に対してはいろいろと難しい問題もあるのでコメントは避けておきます(笑)。
>あなたも私もハンコックもモーツァルトもね
はいっ!!