人生の空虚感や孤独感を無くす最良の方法

朝比奈先生が亡くなって早10年が経つ。80年代中頃から東京公演のほぼすべては追っかけたが、超絶名演、駄演と様々で、本当にその日にその場に居合わせてみないと何ともわからないところが朝比奈隆の興味深いところだった。ゆえに、一度たりとも聴き逃すまいと90年以降のチケット争奪戦においては僕も必死だった・・・。
まだまだ、余裕で演奏会の切符が手に入った80年代掉尾の思い出といえばかの「ベートーヴェン・ツィクルス」。思わずのけ反る胸のすくような快演を披露してくれた、ちょうど昭和から平成への転換期のそれはいまだに一生の宝と思えるほど僕にとって最高の経験だった。

朝比奈先生との出逢いは、1980年10月の大阪フィルハーモニーの定期演奏会において。クラシック音楽の右も左もまだまだわからぬ若造にブルックナーの醍醐味を知るきっかけを与えてくれた大いなる第7交響曲。それを機に、人類の至宝ともいうべき「聖フローリアン」盤を仕入れて繰り返し聴いたことが懐かしい。お蔭で僕の脳内に刷り込まれているのはこの演奏であり、テンポやダイナミクスや楽器のバランス、あるいは版の問題、すべてにおいて満たしてくれるのはいつでも朝比奈隆の解釈だった。実演にも何度も触れた。ブルックナーの7番は朝比奈が一番という持論は実演を聴く回を重ねる毎に強まったし、その思いは今もそう。数種ある音盤もすべて収集しているが、一聴して御大のそれとわかるいずれも安定した凄演であると断言できる。

昨日、久しぶりに新宿のタワーレコードに寄ったら、Altusレーベルの1975年大フィルヨーロッパ公演の音盤が陳列されていた。10月26日のオランダ・フローニンゲンでの最終公演なのだと。数年前「ブラビッシモ!」からネットを通じてのみリリースされた西ドイツ・ランダウでの演奏(1975.10.20)を含めると、このツアーでのブル7は3種目になると思うが、やっぱりこれははずせまいと思わず手を伸ばした。

ここ1年ほど実は朝比奈先生関連の音盤(CDもDVDも)についてはリリースされても見送っていた。同曲異演がほとんどであったことも理由の一つだが、随分熱が冷めたようでもうそろそろ卒業かなと頭の片隅にあったよう。
しかしながら、今回のブルックナーを聴いてみて、やっぱり手元にない音盤はすべて手に入れようとあらためて決意した次第(苦笑)。朝比奈隆のその時その場での演奏はやっぱり唯一無二だと。そして20年にわたって最高のブルックナー、ベートーヴェン、ブラームスなどを聴かせていただいた先生に感謝の意を込めて。

ブルックナー:交響曲第7番ホ長調(ハース版)
朝比奈隆指揮大阪フィルハーモニー交響楽団(1975.10.26Live)

聖フローリアンの気絶するほどの長い残響の下に繰り広げられた演奏が染みついている身にはデッドな音に感じられるのだが、楽器の一つ一つが鮮明に浮き出て、ブルックナーの音楽が微細にわかるという意味では随一かも。多少の瑕など物ともしない極めて緊張感のあるパフォーマンス。この頃の朝比奈&大フィルは「音楽をする」という点では最高の状態だったのかも。

ブルックナーの音楽に出逢えてよかった。朝比奈先生の至高の演奏に触れられてよかった。
すべてが良い思い出。

ところで、話は変わるが、ここのところの最高の気づき。
「人生の空虚感や孤独感を無くす最良の方法は、自分から人を好きになること」


コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む