ストラヴィンスキーに腰を抜かしたパリの人々

春が蠢くというより初夏の陽気。
所用で新宿界隈を自転車でぶらりとしたが、御苑は人の山。道行く人々はそこかしこに立ち止まり、満開の桜に酔い痴れる。こんな日は「春の祭典」か、はたまた「カルミナ・ブラーナ」か。いや、ここは少しひねって「結婚」を。
「フィガロ?」
「ノン!」
「真夏の夜の夢?」
「ノン!」

ストラヴィンスキーが三大バレエの後に創作したバレエ音楽「結婚」。人声と打楽器のみ(ピアノも打楽器として扱われている)による原始主義の真骨頂。20世紀初頭に生み出されたこの土着的、野心的音楽こそ今日のような気候に相応しい。
かつて「詩篇交響曲」、「春の祭典」とのプログラムでゲルギエフ&都響による実演を聴いたが、その時は三大バレエ以外のストラヴィンスキーの音楽については軽視していた頃で、いまひとつ面白味がわかっていなかったことが今となっては無念。しかしながら、ここのところのロシア音楽の研究の成果もあり(笑)、これらの音楽がとても面白く聴ける。
久しぶりに、バーンスタインがアルゲリッチ、ツィマーマンほかと録音したグラモフォン盤(それにしてもこの豪華な共演陣よ)。

ストラヴィンスキー:
・バレエ音楽「結婚」
アニー・モリー(ソプラノ)
パトリシア・パーカー(メゾ・ソプラノ)
ジョン・ミッチンソン(テノール)
ポール・ハドソン(バス)
マルタ・アルゲリッチ(第1ピアノ)
クリスティアン・ツィマーマン(第2ピアノ)
シプリアン・カツァリス(第3ピアノ)
オメロ・フランセシュ(第4ピアノ)
イギリス・バッハ祝祭合唱団
レナード・バーンスタイン指揮イギリス・バッハ祝祭パーカッション・アンサンブル
・ミサ曲
トリニティ少年合唱団
イギリス・バッハ祝祭合唱団
レナード・バーンスタイン指揮イギリス・バッハ祝祭管弦楽団員

まさに祝宴!ロックンロール!「春の祭典」と同様の衝撃性がここにはあるが、よりシンプルでありながら劇的な要素を秘めるのは使用される楽器の特性によるものだろう。
1923年の初演はエルネスト・アンセルメにより、1926年の米国初演は例によってレオポルド・ストコフスキーによる(「春の祭典」のスキャンダルから10年を経て、当時の聴衆の反応はどんなものだったのだろう?この曲ですら相当の革新性があるようにも思われるのだが)。
付録の(?)ミサ曲についてはいずれまた別の機会に。

ところで、昨深夜「アポロ13」を観た。
1970年のちょうど今頃の時期にアメリカで実際に起こったアポロ13号の事件を映画化したものだが、3人が無事帰還した最後のシーンを観て僕としたことが、何と涙が滲み出た。人と人とが互いを信じ、そして生きるという強固な信念の下行動した時に偉大なるシナジーが生まれることを教えてくれる。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。

その昔、柴田南雄は、こんなことを書いていました。

・・・・・・バッハの「4台のピアノ協奏曲」と、おなじく四台のピアノを必要とするストラヴィンスキーの「結婚」とを、音楽会でもバレエでもいいが、一夜のプログラムに組む、というのはちょっとした思い付きじゃなかろうか・・・・・・・・。とわたくしは思うのだが、日本でも外国でもそういう試みのあったのをきかない。もっともアメリカあたりではすでにやっていて、わたくしの耳目に触れないだけのことかもしれないが。・・・・・・「ステレオ」1974年9月号より

4台のピアノ協奏曲 エッシェンバッハ、オピッツ、フランツ、シュミット(西ドイツ 元首相)& ハンブルク・フィル
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3864958

柴田氏のアイデア、確かに、そういうプログラムはとても面白いと試みと思います。

アポロ13、観ていただけましたか!! お忙しい中、感謝です。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
なるほど!それは面白いアイデアです。さすが柴田氏!

それにしてもいつのどの雑誌にどんな評論が書かれていたのか記憶されている雅之さんの頭脳は凄いですね。
畏れ入ります。

「アポロ13」、ありがとうございます。
結末がわかっていても感動しました。

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