やっぱり彼女は実演で聴いて確かめたい

まだ少しあどけなさが残る面持。
それでいて一旦演奏が始まると、鬼神が乗り移ったかのような妖気を漂わせ(?笑)、時に不敵な笑みを浮かべつつ指揮者とアイコンタクトする様は、本当にこの娘は人間なのだろうかという思いに駆られる。すごみばかりが前面に押し出され、世間の評判もその超絶技巧のことで大半が費やされているように見えるが、少なくとも映像を観る限りにおいて、悠々として地に足のついた姿勢から久しぶりの大物といった感じ。残念ながら実演に未だ触れ得ていないので、本領というのは未知数だが、それでも演奏そのものには釘づけにされるわけだから、並大抵のオーラでないことは間違いない。
マジシャンのようにいとも軽々とピアノを操る姿。一糸乱れることなく繰り出される音楽の見事さ。それがまたプロコフィエフの第3協奏曲のような、モダニズム全開で、打楽器的奏法の極致たる音楽が相手なのだからなおさら舌を巻く。

とはいえ、決してスリリングとは言えない。
もちろんまだ若いということもその理由のひとつだろう。明らかにイニシアティブは指揮者のアバドにある。本当はピアニストがもうちょっと暴れて丁々発止とやり合う方がより面白いと思うのだが、そうもいかないのかな。
かつて、もう25年以上前だが、若きアルゲリッチが小澤&新日本フィルをバックにチャイコフスキーの協奏曲をやった時はそれこそ大変なパフォーマンスだった。終楽章コーダの猛烈なアッチェレランドなどは、完全にじゃじゃ馬をコントロールし切れないまま、何とか手綱を緩めないように御者が必死でとにかくついて行っているという様子で、あれは小澤征爾じゃなければまず崩壊していただろうと後々内々でも語り草になったほど。
まさにあの時の感覚が手に汗握る、スリリングというもの。要は実際に目の当たりにしたそれに比べるとということだから、先の断定も参考にはならないだろう。

ただし、名曲の名演奏であることは間違いない。やっぱり彼女は実演で聴いて確かめたい。そしてそれからいろいろと考え、言葉にしてみたいと思うところ。

プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番ハ長調作品26
マーラー:交響曲第1番ニ長調「巨人」
ユジャ・ワン(ピアノ)
クラウディオ・アバド指揮ルツェルン祝祭管弦楽団(2009.8.11-15Live)(Bru-ray Disc)

対してマーラーの「巨人」。僕はアバドの演奏するマーラーは昔から好き。
第4番などはウィーン・フィルとの最初のものがいまだにNo.1の愛聴盤だし、「巨人」もよく聴いた。彼の演奏は年々進化していると思うが、大病を患った後、復帰してからの演奏には何だかますます磨きがかかっているのでは、と思える。それと、2002年のベルリン・フィルとのパレルモでのコンサートでは指揮棒を持って演奏しているのが、このルツェルンでの演奏の時は指揮棒なし。いつからこのスタイルになったのだろう。例えば、小澤もいつの頃からか指揮棒を持たずに演奏するようになったが、意外に指揮棒なしというのが「巨匠の仲間入り」のポイントなのかも(笑)。ムラヴィンスキーも晩年は指揮棒なし。そういえばゲルギエフもここ数年見る限りにおいて指揮棒なしだ。
さて、実際のところどうなんだろう?

※マーラーを振る時のアバドの身振り手振り、表情、どれも最高!!


4 COMMENTS

雅之

こんばんは。

私は、ユジャ・ワンの実演は聴いたことがないけれど、デュトワ&N響とやったラフマニノフ《パガニーニの主題による狂詩曲》をTVで視聴して、そのテクニックにスゲえなあ!!と感心したことがあります。

持ってるCDは下の1枚のみ。

ユジャ・ワン/ソナタ&エチュード
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3554998

曲目
・ショパン:ピアノ・ソナタ第2番変ロ短調Op.35『葬送』
・リゲティ:ピアノのための練習曲 第4番『ファンファーレ』
・スクリャービン:ピアノ・ソナタ第2番嬰ト短調Op.19『幻想ソナタ』
・リゲティ:練習曲 第10番『魔法使いの弟子』
・リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調S.178

(国内盤でしたので)ボーナス・トラック
・モーツァルト(ヴォロドス編曲):トルコ行進曲 

この曲目を、あのテクニックでリサイタルでやられたら、本当にカッコいいと思います。少なくとも、私は確実にノックアウトされますね(笑)。

深みが足りない?
>まだ若い

ほらほら、お得意の小姑バイアスがかかっています(笑)。

何を言っても、所詮僕らおじさん達の負け。
小姑は弱し、女は強し(爆)。

しかし、女々しい(?)ショパンよ、ざまあみろ!!って、じつに爽快な気分になれましたよ(笑)。

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雅之

小姑(こじゅうと)は小舅(こじゅうと)の変換ミスです。僕たちは男なので(笑)。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。

>この曲目を、あのテクニックでリサイタルでやられたら、本当にカッコいいと思います。

同感です。僕は彼女の音盤はこれ以外に持っていなのですが、Youtubeで確認する限りどれもすごいですよね。唖然です。

>小姑バイアスがかかっています

はい、失礼しました。しかし、名演でありヴィルトゥオーソであることは間違いありません。
「まだ若い」というのも裏に期待が込められており、決して否定的な見解ではありません。ご理解いただいていると思いますが。

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アレグロ・コン・ブリオ~第4章 » Blog Archive » 遊びの心

[…] 盛り上がった。 縦横無尽に様々な話の中、聴きづてならない話題が。 何と、アバド&ルツェルンの2009年の公演の実演を2度聴いたのだと。そう、あのユジャ・ワンとのプロコフィエフと […]

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