プロッセダ メンデルスゾーン 6つの前奏曲とフーガ作品35(2014録音)

形式の模倣。
何事もそういうところからスタートするが、バッハの形式を借りつつ内容はあくまでメンデルスゾーンその人の、明朗かつ軽快ないつもの音調に溢れる佳作。
6つの前奏曲とフーガ作品35。

1837年初頭、メンデルスゾーンはロベルト・シューマンのためにこの作品を全曲演奏した。
そして、ロベルトはこの作品をとても気に入り、また評価した。

しかし編集者が気がつくかどうかは別としても、これは決して作曲家が暇潰しに書いた曲ではなく、ピアニストに昔のすぐれた形式をもう一度注意させて、それになじませるために書かれた曲である。そうして、そのために例のおもしろくもなければ役にも立たない、楽節の技巧や模倣などをことごとく避けて、全くバッハの形式を堅持しながらも、旋律的な小歌謡の支配を強化した事なども確かに正しかった。
シューマン著/吉田秀和訳「音楽と音楽家」(岩波文庫)P130

シューマンの批評は相変わらず的確だ。
歌謡こそメンデルスゾーンの価値だと僕も思う。

シューマンはこの小論の最後に書く。

前奏曲についていうと、たいていのものは、バッハの多くの前奏曲と同様、フーガと根本的な連関を持たず、フーガができてから、その前につけられたものらしい。この前奏曲はこれだけ演奏しても独立した効果を残すから、ピアニストは概してこの方をフーガよりも好んでひくだろう。ことに第1番の如きは、実に効果的で終始息もつかせずひきつけてゆく。ほかのものは自分でみられたい。この作品は作曲家の名がなくとも、ひとりでりっぱにものをいう。
~同上書P131-132

・メンデルスゾーン:6つの前奏曲とフーガ作品35
ロベルト・プロッセダ(ピアノ)(2014録音)

何と艶やかで清らかな歌!
プロッセダの弾くメンデルスゾーンはいずれもが澄んで柔らかく、夢心地にさせてくれる佳演。バッハの模倣とはシューマンの指摘だが、確実にメンデルスゾーンの音楽になっている点が見事。そして、作曲家への尊敬の念を※、見事に歌うプロッセダの力量に感銘を受ける。第1番についてはシューマンの書く通り。

その他の5曲については自らの耳で確かめよ。

余談だが、プロッセダの弾くグノー/バッハの「アヴェ・マリア」のあまりの美しさ!

シャイー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管 メンデルスゾーン 交響曲第3番「スコットランド」(1842ロンドン稿)(2009.1Live)ほか メジューエワのメンデルスゾーン メジューエワのメンデルスゾーン

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