懐かしきワルターのマーラー第9番

mahler_walter_cso.JPG転職支援業を始めてかれこれ2年になる。リーマン・ショック以降、転職志願者は増えるものの求人案件は減り、次の仕事先が決まらないままいわゆる「浪人生活」を送っている若者が多く目に入るようになった。厳密には求人案件そのものが減っているわけではない。要は、即戦力になる優秀な人材であるなら企業はすぐにでも採用したいのである。しかしながら、優秀な人間は会社を辞めることはなく、またリストラに遭うこともないゆえ、案件が減ったようにみえるだけなのだ。

今年に入り、少しずつ状況が変わりつつあるように思える。景気の回復はまだまだのようにいわれるが、人材エージェント業に関していうなら「底」はついたように感じる。

それにしても人の行動パターンというものは根本的に変わることはない。転職活動において、学生時代の就職活動と同じような失敗を繰り返す輩が何と多いことか。そういう人は、いろいろと聴いてみると、なぜ失敗したのか、何がよくなかったのかという質問に即答できない場合が多い。反省していないのである。それに自分自身を深掘りして知ろうという努力が足りない。問題解決の端緒はまず「よく知る」ことなのに、そのあたりを甘く考えているのか、あるいは現実を見たくないと無意識に思うのかともかく「軽い」のである。

「人間力」向上の秘訣のひとつは、過去を掘り下げて自覚、肯定することと、日自分を振り返り自らを省みることである。どれほど忙しくても、毎日その日の出来事や感じたことを振り返る時間をとることは大切なことだと思う。

僕がマーラーを聴き始めたのは高校1年生の頃で、当時共にクラシック音楽を愛好していた友人の影響からだった。彼はブルーノ・ワルターに心酔しており、マーラーに限らずモーツァルトやブラームスなどいろいろな名盤について教えてもらった。大学から東京に出てきたので、以降出会うことは滅多になくなったが、彼はその後どうしているのだろう?久しぶりに会って当時を懐かしみながらマーラー談義、ワルター談義をしてみたいものだ。

マーラー:交響曲第9番ニ長調
ブルーノ・ワルター指揮コロンビア交響楽団

圧倒的なウィーン・フィルとのライブ録音のお陰で、この晩年のスタジオ録音は分が悪い(某評論家には「生ぬるい」とまで書かれているが、僕には決してそうは聴こえない)。しかしながら、僕にとっては初めてマーラーの第9番に触れた記念碑的音盤であり、1980年のある時期、少なくとも1ヶ月近くは毎日のように聴いていた故、いつ聴いても涙が出るほど思い入れのある演奏なのである。

それこそ先日のコメント欄で雅之さんが嘆いておられたように、音盤が世の中に溢れ、しかも30年前とは段違いに廉価で手に入ることが愛好者にとってはありがたい半面、音楽を聴くという行為そのものにおいては「思い入れを薄くするという点」で逆効果になってしまっているのは確かだ。ひとつひとつじっくり、そして大事に聴きたいものだ。

※この音盤にはワルターの貴重なリハーサル風景が収められている。素敵だ。


3 COMMENTS

雅之

おはようございます。
>いつ聴いても涙が出るほど思い入れのある演奏なのである。
ワルター&コロンビア響によるマーラー・第9交響曲についてのご評価については、まったく同感です。少なくとも、この曲の初演指揮者のワルター自身は、名高いVPOとのライヴ録音よりもこちらの演奏、録音に納得していたわけですし、私も本来のこの曲の本質は、バーンスタインのように、ねちっこくやり過ぎないほうが、また、一時評判をとったジュリーニ&シカゴ響
http://www.hmv.co.jp/product/detail/590180
のように大風呂敷を広げ過ぎないほうが良いのではないかとも思っています。一定の節度が、マーラー晩年の諦観の境地にはより相応しいと、同じく様々な苦難をくぐり抜けて晩年になったワルターがしみじみと実感し、あのような演奏になったという見方も、あながち間違ってはいないでしょう。
ただ、現在売られているリマスタリングCDで、この録音をLPを聴いたとき得られた感動が、初めて聴く人にちゃんと伝わるかは、甚だ疑問です。最近、バーンスタイン&ベルリン・フィルによる有名なこの曲のライヴ録音が、ORIGINALSシリーズでOIBPリマスタリングされました。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3709294
約82分が、何とCD1枚に収録されています。喜んで買って聴いてみたのですが、大昔FMのエアチェックで聴いたリアリティに富んだ迫力のある音とは、益々雲泥の差になっちゃいました。このCDで、この演奏を語って欲しくないと、強く思いました。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
>一定の節度が、マーラー晩年の諦観の境地にはより相応しいと、同じく様々な苦難をくぐり抜けて晩年になったワルターがしみじみと実感し、あのような演奏になったという見方
おっしゃるとおりですね。
また、確かにリマスタリングCDが初めて聴いた当時の感動を伝えているかについても同じように考えます。聴き手が若かったということもひょっとするとあるかもしれませんが、間違いなくLPの方が良かったように僕も思います。
>大昔FMのエアチェックで聴いたリアリティに富んだ迫力のある音とは、益々雲泥の差になっちゃいました。
バーンスタイン&BPOのライブは僕も発売当初から聴いており、これはこれで良いと思うのですが、当時FM放送を聴かれた方は皆さんそうおっしゃいますよね。残念ながら僕は放送当時聴かなかったと思うんです。何としてもテープを聴いてみたいと思うのですが、雅之さんはおもちじゃないですよね?
かつて所有していたたくさんのエアチェックテープが今となっては懐かしく、捨ててしまったことを後悔します。

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