昔のマイスキーは良かった

以前モデリングについて書いたことがあるが(何と震災のちょうど3年前!)、何歳になっても謙虚に学ぶ姿勢を持つことは重要だとあらためて思った。特に人前で話をする仕事をしていると、ある意味マンネリ化する部分も出てくるようで、いろんな方の講義を聴講するだけで様々な気づきが得られる。ありがたいことである。

例えば「働く」ということを「傍楽」に置き換えて、しかもあるワークを入れながら学生に体感させる手法はなるほどと納得させられた。身近な人を楽にしてあげるということが働くということ。人のために動くとも書くが、生きがい、やりがいをもって動くことの大切さをまた教えていただいた。

時間が無限であるように、あるいは数の世界が無限であるように、人生に終わりはなく(卒業はなく)、学ぶことだらけ。知らないこと(知っていると思っていることも実にわかっていないことが多い)を吸収することをいつも心がけたいものである。

「アレグロ・コン・ブリオ」を書き始めた頃に「ゴルトベルク変奏曲」のシトコヴェツキー編曲のトリオ版を採り上げた。ミッシャ・マイスキーが今井信子らと録音した名演奏である。何よりシトコヴェツキーのアレンジが絶品。これが原曲だと言っても信じられるほどJ.S.バッハの精神を見事に表現しており、美しい(ピアノという音階が決定されてしまっている楽器での演奏に比べ音階が決定されない弦楽器の特性を活かした永遠性が感じられるところが素敵)。そのマイスキーが1984年に編曲者自身と録音した録音を(以前も採り上げたが、その時は第25変奏以降だったので今日は全曲を)。

J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲BWV988
~グレン・グールドの思い出に(シトコヴェツキー編曲による弦楽三重奏版)
ドミトリー・シトコヴェツキー(ヴァイオリン)
ジェラール・コセ(ヴィオラ)
ミッシャ・マイスキー(チェロ)

僕は変に自分を主張しすぎない謙虚な昔のマイスキーが好き。無伴奏チェロ組曲然り、新盤はともかく自分の色を出し過ぎていて、バッハを聴くというよりマイスキーを聴くという感じか。何よりこの「ゴルトベルク」の特長はシトコヴェツキー自身が主導権を握っているところが良い。

何歳になっても人から何かを吸収しようとする姿勢。特にトリオの場合は、三者が同等のレベルで調和しない限り良い演奏にならない。久しぶりにこの音盤を聴いて、その後新盤を抜粋で聴いてみて「調和」の重要性を感じた。昔のマイスキーは良かった・・・。

※先日採り上げた弦楽合奏版も同じく素晴らしい。


3 COMMENTS

雅之

こんばんは。

ちょっと、シトコヴェツキー編曲による弦楽三重奏版の「ゴルトベルク変奏曲」については、語れるほど聴き込んでおりません。謙虚に学びたいです(笑)。

>何歳になっても謙虚に学ぶ姿勢を持つことは重要だとあらためて思った。

はい、わかりました。今夜は、岡本さんに初めてお会いした夜に聴かせていただいた、
超お薦め盤の「あれ」を、久々に寝る前に少しだけ聴きたくなりました。
メンデルスゾーンのことを岡本さんから謙虚に学んだ、あの日を思い出しつつ・・・。

バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲 マイスキー(1984-1985)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/134693

>昔のマイスキーは良かった・・・。

同感です。私も人のことは言えない?

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
ぜひシトコヴェツキー版聴きこんでください。いろいろとまたご意見を伺いたいと思います。
ところで、超オススメ盤の「あれ」ですか??(笑)
何だろう?すっかり記憶を失っております(苦笑)
クライスラー&ブレッヒのコンチェルトかなぁ・・・。
といろいろ考えて、クラシック講座のHPをみて思い出しました。
マイスキーの旧盤でしたね!!そうでした、そうでした。あれから3年以上経過しますね。光陰矢の如しです。
この間いろいろ学ばせていただきありがとうございます。感謝いたします。

>私も人のことは言えない?
僕も人のことは言えません・・・(笑)。

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