ジャズの肖像

ポール・モチアン逝去の報。なんと齢80だったんだとあらためて確認。つまり、ビル・エヴァンス率いるかの伝説的トリオの不滅の録音群は、パフォーマンスから既に50年以上が経過し、モチアンも当時は28歳の若手だったということになる。あれらジャズのスタンダードたるアルバムはいまだにどれひとつとして廃れることなく、多くのファンに聴き継がれていると思うのだが、収録された一つ一つの楽曲が、エヴァンスらによって極めて斬新なアレンジを伴って再創造されている点が驚異的。

この不滅のトリオの凄さは、スタジオ録音とライブ録音との音楽の作り方に明確な違いを見せながら、いずれも天才的なテンションを湧出し、「混沌」と「調和」のバランスがものの見事に「決まっている」点。スタジオでの演奏が「静」とするなら、実況録音は「動」。そう、昨日採り上げたフルトヴェングラーの「運命」47年のティタニア・パラストでの有名なライブ録音ととても同一の指揮者の演奏とは思えない「違い」を呈していることは有名だが、ある意味フルトヴェングラーの場合と同様のテンションの違いを感じさせてくれる。といって、「静」、「動」いずれもがビル・エヴァンス・トリオの驚異的なパフォーマンスであることに異論はなく、いずれも必要な録音であるというあたりがかの天才指揮者と非常に似ているところだと僕は思う。

ビル・エヴァンスはもちろんのこと、スコット・ラファロのソロも堪能できるし、時にポール・モチアンのドラムスも前面にフューチャーされているので、「ジャズの肖像」という名の通り、ジャズ音楽を究めるためには決して避けて通れない作品。

Bill Evans Trio:Portrait In Jazz(1959.12.28)

Personnel
Bill Evans(piano)
Scott LaFaro(bass)
Paul Motian(drums)

“Come Rain or Come Shine”
雨か晴れか・・・、我々にとっては双方必要。エヴァンスのピアノが明暗を浮き彫りにする。そして、ステレオ、モノラル2種の”Autumn Leaves”、これはこのアルバムの白眉であるように僕は感じる。あえて2つのバージョンを収めたところに演奏者の気概がみてとれる。何よりアップ・テンポで進められながら、エヴァンスの歌うピアノ、ラファロの芯のあるベース、モチアンの幾分明るめで軽快なドラムス、3者が見事にバランスよく演奏を試みているところが素敵。

さらには、Evans自作の”Peri’s Scope”においては、完全に一体化している点が素晴らしい。
ちなみに、Milesとの共作”Blue In Green”はもともと”Kind Of Blue”に収録されていた楽曲だが、Billなりの解釈を伴って、よりメランコリックな音楽に生まれ変わっている。

今宵、偶然同じお店に居合わせた仲間と再会した。世間は狭い。


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