見よ、勇者は帰る

ベートーヴェンのチェロのためのヘンデル変奏曲を聴きながら思った。楽聖がヘンデルをことのほか尊敬していたことは有名な話だけれど、そういえばヘンデルについてはあまりよく知らない。伝記類にも目を通したことがないし、作品も限られたものを少しかじる程度。
今夜、池袋の某大学にて最後の講義を終えた。産学協同の課外プロジェクトだったにもかかわらず学生諸君は最後までよく頑張ったということで修了証書をひとりひとりに。するとどこからともなく「マカベウスのユダ」の合唱曲「見よ、勇者は帰る」を口ずさむ輩・・・(予想通り)。
この音楽がヘンデルのものだと知っている人ってどれくらいいるのだろう?

話は変わる。
僕はメールソフトにサンダーバードを利用しているが、昨晩突然不具合が起こった。たまたま電気の使用容量オーバーでブレーカーが落ち、当然PCの電源が切れた。そのまま普通に再度立ち上げたまでは良かったのだが・・・。
メールをチェックしようとThunderbirdを開いたら、受信や送信メールのフォルダが消えていて、メッセージが読めない。辛うじて送信は可能なようだが、それからインターネットでいろいろ調べて試行錯誤しても一向に埒が明かない。仕方がないので今朝、合気道の稽古から帰宅後PC相手にあれやこれやと試みるもやっぱりだめ(この分野に精通している人に聞いても)。よくよく調べていくうちいくつか参考になるページがあった。ちなみに、Thunderbirdのフォーラム・サイトでは昨晩全く同じ状態になった人がいるようで、トピックとして投稿されていた。残念ながら今のところ回答がないので為す術ないのだけれど。

コンピューターというのは人間のように「ま、いっか」というのがないので困る。100か0という、デジタル的完璧主義者そのもので(コンピューターだからデジタルは当たり前だけれど)、何か一つでも狂いが生じると動かなくなるのだから・・・。

こういう状況を目の当たりにして、結局今は途方に暮れているのだが(笑)、機械はともかく、人間には曖昧さ、ある程度の融通が必要だなとあらためて考えた。得てして、忙しいときに限ってこういうことになるものなのだが、この際なるようになれとどんと構えて、本件は一旦忘れ、やるべき仕事に没頭する方が良かろうと(とにかく原因不明だから何とも言えないが、そもそもThunderbirdのバグの可能性もある。ならばなおさらじたばたせず、だ)。

ついでに、音楽でもかけながらゆったりと思考しようとここで選んだのがヘンデル。

ヘンデル:オラトリオ「マカベウスのユダ」HWV63
ライランド・デイヴィス(テノール)
フェリシティ・パルマー(ソプラノ)
ジャネット・ベイカー(コントラルト)
ジョン・シャーリー=カーク(バス)ほか
ワンズワース・スクール合唱団
サー・チャールズ・マッケラス指揮イギリス室内管弦楽団(1976.4録音)

聴きどころはたくさん。こうやってじっくりとオラトリオを聴いてみると、ヘンデルの作曲家としての天才がとてもよく理解できる。同年齢のバッハとは異質の天才。
指揮者のきびきびした溌剌な音楽作りも多分に影響していると思うのだが、実に音楽がすーっと消化されて心身に沁みわたるといった感じ。少なくともバッハにおいて時に感じられる厳格さがほとんどここには感じられないのが不思議。長大なオラトリオのどの部分をとっても音楽が生きているし、何よりメロディが秀逸(あくまでドイツ的なバッハに比して、ラテン的な要素を持つヘンデルはバランスに優れている)。
ちなみに、「マカベウスのユダ」は旧約聖書外典によるらしい。偶像崇拝を強要する異教徒の圧政からイスラエルを解放したユダヤの英雄ユダ・マカバイを主人公にしたものとのこと。こうなると映像付でじっくりと鑑賞したくなる。


4 COMMENTS

雅之

おはようございます。

>コンピューターというのは人間のように「ま、いっか」というのがないので困る。100か0という、デジタル的完璧主義者そのもので(コンピューターだからデジタルは当たり前だけれど)、何か一つでも狂いが生じると動かなくなるのだから・・・。

最近は、必ずしもそうとはいえないようです。複数のコンピューターで補完すればいいので・・・。逆に人間は、頭の血管1本切れたら致命的とか、機械より脆弱なところもあります。

先日の「米長邦雄永世棋聖 vs. ボンクラーズ プロ棋士対コンピューター 将棋電王戦米長戦」には興奮しました。
http://gadget.itmedia.co.jp/gg/articles/1201/17/news085.html

・・・・・・・「ボンクラーズのクラスターシステムは、各ブレードごとが独立して動作しています。局面の読む際には、マスターとなる1台がスレーブとなるその他のブレードに読む範囲を割り振るのですが、あるマシンでの結論により、他のマシンに割り振った作業が無駄になることがあります。そこで、サーバー間で指令を頻繁にやりとりし、無駄な読みを減らすことが重要なのです」(富士通関係者)・・・・・・

・・・・・・長年コンピューター3 件将棋界に携わる瀧澤武信・早稲田大学大学院教授によると、評価関数の数値はある程度標準化されていて「評価関数の数字が100でおよそ歩1枚程度有利、1000だと逆転できないぐらいの大差とソフトが判断しているということです。逆にマイナスの数値であれば、同じだけ不利ということになります」という。・・・・・・

コンピューターか人間かと色分けするのも二元論ですよね。

ちなみに、どんな楽器も人間が使う機械です。

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岡本 浩和

>雅之様
こんにちは。

>最近は、必ずしもそうとはいえないようです。複数のコンピューターで補完すればいいので・・・。逆に人間は、頭の血管1本切れたら致命的とか、機械より脆弱なところもあります。

なるほど、そういわれればそうですね。
まぁ、使いようですかね。ある程度のITの知識さえもてば意外に素人でもPCくらいは使いこなせるものですね。
しかし、話題になった「名人対コンピューター」の将棋についてはそんなことがあったということを知っていたくらいで、そもそも将棋に興味がないものですから無視しておりました。
ご紹介いただいた文面あたりの観点でこういうことを見るとまた別の面白さがありますね。
ありがとうございます。

>コンピューターか人間かと色分けするのも二元論ですよね。

ですね。二元論的物の捉え方、発想というのは人間の癖みたいなものなんでしょうね。

返信する
雅之

ただし、コンピューターは全損しても何とでもなるけれど、
人間は死んだら取り返しがつかないのです(涙)。

ブラームス:交響曲全集 ベルグルンド&ヨーロッパ室内管弦楽団
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%B9-%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E5%85%A8%E9%9B%86-%E3%83%A8%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%91%E5%AE%A4%E5%86%85%E7%AE%A1/dp/B00005COW2/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1327668874&sr=8-1

数あるブラームスの交響曲全集の中で一番好きだった録音。

返信する
岡本 浩和

>雅之様。
こんばんは。

・・・のようですね(絶句)。
このブラームスは雅之さんが以前から薦められているものですよね。
今はとても悲しげに響きます。

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