バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィル マーラー 交響曲第7番(1965.12録音)ほか

音楽には、意図があるのか、はたまた意図はないのか、不思議な一致がある。
バーンスタインのマーラーを聴きながら思った。ここにはジョン・アンダーソンの創発するイエスの世界と相似するものがある(個人的な妄想だが)。

マーラーの音楽には宇宙がある。否、もっと人間的な、大自然の描写が主たる要素だ。
外的世界と内的世界を一つにしようとする意志がマーラーにはあった。一見支離滅裂に見える事柄も本来は一つの根から派生したもので、それをマーラーは霊感によってキャッチし、俗世間に流れる音に同化させて音楽とした。様々な要素がコラージュされるように響くのはそのためだ。その意味では、彼の音楽は磨き抜かれている必要はない。ただありのままに、鳴るように鳴れば良い。それはまさにバーンスタインの慧眼だと僕は思う。

〈私の音楽は自然の音に満ちており、他のいかなるものも求める気はない〉。この《自然の音》は、民俗音楽と個人的霊感の、万人の経験と個人的体験の、避けがたい融合点となるのだ。《自然の音》とは、つまり、自然の美を前にしたときの人間の卑劣さと悲しみの感情であり、その反応を音によって翻訳したものである。〈われわれが主題やリズムを見出すのは自然のなかにおいてであり、芸術家は、それと調和するにせよ対立するにせよ、周辺の世界から形式や主題を取り出して表現するのだ〉。《自然の音》、それは大きな谷間であり、そこにマーラーは動物たちの叫びや物音、森のざわめき(『第7交響曲』の最初の「夜の音楽」)、小鳥たちのさえずり、再創造された農民舞曲、民謡などを集めた。
(デニス・レメリ/高橋英郎訳「自然の音、民衆の感情 マーラーにおける民俗的なるもの」)
「音楽の手帖 マーラー」(青土社)P213

交響曲第7番もまた地味な存在だ。中でもとっつき難い、不気味な印象の第3楽章スケルツォが、バーンスタインの棒によって美しく甦る。空ろな、まさに(埴谷雄高が呈する)虚体の顕現たるような不可思議な音楽が、(録音ながら)実存性をもって腸に染み入るのだ。

ちなみに、イエスのアルバム「究極」に収録される3曲目は再加入したリック・ウェイクマンのパイプオルガンを前奏にする”Parallels”だ。世界は、一人一人の意識の中でまったく別の世界が広がる。世界は、自分の知らない世界で成り立っているのだともいえる。これぞ鏡である。

・マーラー:交響曲第7番ホ短調
レイモンド・サビンスキー(マンドリン)
レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルハーモニック(1965.12.14&15録音)

その上で第4楽章の「夜の音楽」は何て可憐なのだろう。自然のすべては「夜」によって描かれるのだ。「究極」の4曲目”Wonderous Stories”の透明な歌!!相変わらずジョンの声は美しい。

・Yes:Going for the One (1977)

Personnel
Jon Anderson (lead vocals, harp)
Steve Howe (steel guitar, acoustic and electric guitars, vachalia, pedal steel guitar, vocals)
Chris Squire (bass guitar, fretless bass, 8-string bass, vocals)
Rick Wakeman (piano, electric keyboards, church organ at St. Martin’s in Vevey, Polymoog synthesizer)
Alan White (drums, percussion, tuned percussion)

なるほど、世界の反転たる第5楽章ロンド・フィナーレは、まさに目覚めの音楽であり、バーンスタインもそのことをよくわかっていた。

マーラーの運命は、偉大なドイツの交響曲の線を完成し、新しい方向へ発足することを許されないまま、世を去ることになった。これは、現在のわれわれには明らかであるかも知れないが、存命中のマーラーにとっては、それどころではなかった。彼自身の心の中は、少なくとも、古い世紀に劣らず新しい世紀が占めていた。彼は、眼を未来に向け、心を過去に向けて、さいなまれ、分裂した人間であった。
(レナード・バーンスタイン/三浦淳史訳「マーラーの時代がきた」)
~同上書P99

マーラーの後継は、実際にはジャズやロックというポピュラー音楽によって担われることになったのだろうと確かに思う。彼は文字通り眼を未来に向けていたのだから。

中間部の、ハウのギターの刺激、アンダーソンのヴォーカルの革新。終曲”Awaken”(アンダーソンとハウの共作)が未来への扉を開く(アンダーソンはイエスの最高傑作だと言う)。

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