山下達郎シアター・ライブ@新宿バルト9

久しぶりに東京にも雨が降り、少し涼しくなったお蔭で今年の夏もそろそろ終わりなんだと実感が湧いた。猛烈な雨が少し上がり始めた頃、新宿バルト9で上映されている「山下達郎シアター・ライブ~PERFORMANCE1984-2012」鑑賞のため新宿に向かった。

僕が初めて達郎の音楽に触れたのは確か”Ride On Time”のスマッシュ・ヒットで一般的にも有名になった70年代後半のことだったと思う。その後、きちんと聴き始めたのは82年のアルバム”Melodies”から。以降はほぼすべてのアルバムをオン・タイムで聴いてきているものの、何と言っても山下達郎のライブを一度も経験していないところが僕の弱点。これまで機会はもちろんあった。本気になればチケット争奪戦なども軽くクリアするだけの根性はあったのだけれど、クラシック音楽のコンサートの場合と違ってどうにもそこまでの気合いが入らず、結局今の今まで完全にチャンスを逸してしまっていた。今回の映画を観て、そのあたりを少し、いや、猛烈に後悔、反省した。

達郎自身が選曲し、マスタリングまでやっている映像と音楽の一言では語り尽くせないレベルの高さにまずは度肝を抜かれる。
1986年の中野サンプラザでの”SPARKLE”に始まり、2曲目の「ラブランド・アイランド」になだれ込む時にはもうすでに彼独自の世界に打ちのめされている自分に気づく。
もちろん達郎はまだまだ若い。でも、直後の「こぬか雨」に始まる90年代のパフォーマンスの時も風貌はそれなりに年輪を重ねているように見えるものの声質は相変わらずで、むしろ味わい深い本当に大人の歌唱(演奏)が聴かれ、心底魅入ってしまう。”Smoke Gets In Your Eyes”なんてもう最高に美しいし・・・!それと、今回の映像の中で唯一竹内まりやがバッキング・ヴォーカルとして参加しているSugar Babe時代の名曲”DOWNTOWN”の格好良さと言ったら・・・(絶句)。

そして、おそらく映画のクライマックスとして想定されている「希望という名の光」。間奏時に達郎自身が昨年の震災のこと、2010年に作曲したこの楽曲が震災後に注目され、自分が意図したおのとは違った方向にひとり歩きしていったことを紹介し、日本の1億2千万の全国民に受容されないにせよ(なんて謙虚な!)、少なくとも自分の音楽をこよなく愛し、コンサートに足を運んでいただけている聴衆の皆様に今後の日本の復興への祈りを込めて歌い捧げたいというような旨の話を聞いたときには心底感動した。まさに命と心を込めて歌う姿・・・。
さらに僕が好きな「アトムの子」の中間では「ドラえもんの歌」まで挿入、披露し、バックの女性が「はい、タケコプター」なんていう場面では何だかそれだけで元気がもらえる。
言葉にするとあまりに陳腐ゆえこれ以上は書かない(書けない)ことにしよう。達郎好きはもちろんのこと、そうでない方にも是非とも観ていただきたいライブ映像である。

今後は機会を作ってぜひとも舞台に触れたい。そんなことを感じた90分だった。

ところで、館内がだいぶ寒かったのでスタート半ばくらいから尿意を催し始め(笑)、とにかく最後まで我慢しようと頑張ったのだけれど、「恋の・ブギ・ウギ・トレイン」のところで、「おそらくこれが最後のナンバーだろう」と推測し、我慢ならず中座した。本当はエンド・クレジットまでしっかり見たいと思っていたのだけれど。
で、後からホームページで曲目リストを確認して愕然とした。何と、その後にもう1曲「さよなら夏の日」があったとは!

初秋の気配がほんの少し感じられつつあるのに、どうやら僕の夏は終わってないみたい(笑)。

山下達郎シアター・ライブ
PERFORMANCE1984-2012
新宿バルト9
シアター9 12:25~


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