天才

今週末は第5回目の「早わかり古典音楽講座」である。孤高の(?)偏屈指揮者・宇宿允人の世界を芸術劇場で聴くことになっている。そこで当夜のプログラムの一つであるドヴォルザークの新世界交響曲を何枚か比較して聴いてみた。なるほど形式のしっかりした旋律美にあふれた至高の名曲である。人気が高いのも頷ける。
ドヴォルザークはその顔に似合わず(笑)非常に多くの美しい名旋律を残した。クラシック音楽など興味のない人でも「ユモレスク」や「スラブ舞曲」第10 番、「イギリス」交響曲の第3楽章、あるいは「新世界」交響曲の第2楽章などは間違いなくどこかで聴いたことがあるはずだ。とはいえ、僕自身はクラシック音楽を何十年と聴いてきたがそういう意味で注目し、のめり込んで聴いた記憶は残念ながらない。

ところで、20世紀になって有名なメロディ・メイカーがいる。そう、ポール・マッカートニーである。彼の作ったビートルズ時代の楽曲はどれも傑作であり、人気曲でもある。イエスタディ、ミッシェル、ヘイ・ジュード、レット・イット・ビー、ロング・アンド・ワインディング・ロードなどなど。若い頃、僕も夢中になって聴いていた。今も色褪せず名曲であると確信できる。しかし、「しかし」である。残念ながら何度も繰り返し聴きたいと思う音楽ではない。わかりやすく言うと、ドヴォルザーク同様「飽きてしまう」のである。同じビートルズ・メンバーであってもジョン・レノンの音楽はそうではい。決してキャッチーな楽曲ではないが、「何か」が違うのである。

ビートルズ:「ザ・ビートルズ」を聴く。

別名「ホワイト・アルバム」。マネージャーのジョン・エプスタインが急死し、ポールがイニシアティブをとりはじめ、ビートルズが崩壊しつつある最中の「傑作楽曲群」を含む名盤である。
メンバー各々が勝手に自己を主張し、バラバラ感は否めない。しかし、その「バラバラ」の中に、怖ろしいほど「ピュアな天才性」が各楽曲から読みとれるのである。メンバー各人の才能やエネルギーは奇跡である。しかしながら、一番の奇跡はこの4人が同時期同じ場所に生まれ育ち出逢ったことではないだろうか。4 人の才能が合わさりまさにシナジーを生んだ奇跡のビートルズ。彼らが「一体感」を失いつつある時期に生み出した傑作として永遠に語り継がれるべき名盤であると僕は確信する。
例えば、1枚目の第15曲「Why Don’t We Do It In The Road」を聴いてみるがよい。初めて聴く人は、ポールが作った曲とは信じないだろう。イエスタデイやレット・イット・ビーを作曲した同じ人が書いた曲である。こういう曲を一方で創作できるところがポールのポールたる所以だろう。

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