一流のガーシュウィンが・・・

少し前、しばらくシューベルトに浸り、極めつけは「ザ・グレイト」のいくつかの音盤を聴き、その後におそらく影響を受けているであろうマーラーを聴いた。西洋クラシック音楽の巨大化と革新の道筋がこれによって簡単に俯瞰できるが、その流れで極小的ヴェーベルンの作品もじっくりと耳にした。こうやって眺めてみると独墺系音楽は本当に堅い。いや、何と言うか真面目、である。
一方、隣のフランスはどうか。19世紀前半にはベルリオーズがいて、ショパンやリストが活躍し・・・。明らかに趣向が違っている。どんなものも受け容れる器の深さというか、軽さというか・・・。そして、19世紀後半にはドビュッシーが出、ラヴェルが活躍を始める。20世紀のポピュラー音楽の扉がようやく開かれる。

ラヴェルは1928年にアメリカを訪問した際、自身の誕生パーティーの席上でジョージ・ガーシュウィンと知己を得た。ガーシュウィンはラヴェルに弟子入りを請うたらしいが、「一流のガーシュウィンが何も二流のラヴェルになることはない」とラヴェルは断ったと言われる。確かにその数年前にすでに「ラプソディ・イン・ブルー」を作曲し、アメリカ国内では大作曲家として認知されていたのだから、ラヴェルの言うとおりである。しかしながら、かの「ラプソディ・イン・ブルー」もオーケストレーションはグローフェの協力の下に成ったものだから、少なくとも「オーケストラの魔術師」と呼ばれたラヴェルの方法をガーシュウィンは欲しかったのだろうが。

いずれにせよガーシュウィンはガーシュウィン。後のジャズ界に多大な影響を与え、そしてヨーロッパのクラシック音楽界に大いなる影響を与え1937年に39歳にして亡くなる。
フランス音楽がアメリカ音楽、あるいはジャズに与えた影響、そしてその逆。
独墺系音楽とはまったく別の手法で20世紀音楽に影響を与えた・・・

ヴェーベルンらと同世代を生きたガーシュウィンの音楽は明るく自由だ。

ガーシュウィン:
・ラプソディ・イン・ブルー(グローフェ編曲)
・パリのアメリカ人
グローフェ:
・組曲「グランド・キャニオン」
レナード・バーンスタイン(ピアノ&指揮)
コロンビア交響楽団
ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団

ガーシュウィンの音楽を聴くと「魂」が震える。リズムや音調が人間の鼓動、呼吸に近いのだろう。それはビル・エヴァンスやクリーム、あるいはポリスの音楽に触れると同じような感覚。その意味では後のジャズやロックにも多大な影響を与えているはず。
グローフェのオーケストレーションによって作品としてはきれいにまとまっているが、アレンジ前の、ガーシュウィンの脳内で鳴っていた「ラプソディ・イン・ブルー」ってどんなだったのだろう?もっと直接的で、もっと赤裸々で・・・。
それにしてもバーンスタインは滅法上手い。


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