3つ目の轟音とぶれないアンサンブルによる強烈な破壊力

めっきり秋、である。
季節の変わり目、風邪などが流行っているようなので気をつけねばと思っていた矢先、どうも喉元がおかしいので温めた。もともと身体は丈夫な方なので問題ないとは思うけれど。
ついでに心も・・・。
ということでヨハネス・ブラームス、それもムラヴィンスキーの演奏で。

ムラヴィンスキーの指揮する独墺系作曲家の作品は実に冷徹で即物的でありながら火傷をしそうなほど熱い。何だか矛盾した表現だが・・・。ベートーヴェンの第4交響曲などはその意味で昔から有名なものだけれど、「エロイカ」も第5も、そして第7も、もっと聴かれるべきものだと前から思っていた。ブラームスなどは4曲ともいかにもムラヴィンスキー色に染められていて、いつ聴いても襟を正して聴かざるを得ない。
今夜は第3交響曲と第4交響曲がカップリングされたメロディア盤。

交響曲第3番第1楽章冒頭のモットーは、F-A♭-Fというものだが、ムラヴィンスキーは最初の2つの和音は控えめ、3つ目で轟音を響かせるという方法をとる。このやり方は他の箇所でも随所にみられ、とても効果的に響く。
この内向きの、どちらかと言うとイジイジした交響曲を僕はティーンエイジャーの頃苦手としていた。もう少し解放して、外に弾けるのならまだ許せるのに、分厚い殻に閉じ籠ったまま爆発するものだから。

ブラームス:
・交響曲第3番ヘ長調作品90(1972.1.27Live)
・交響曲第4番ホ短調作品98(1973.4.28Live)
エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

第3交響曲におけるムラヴィンスキーの方法は、そういう意味では僕を納得させてくれた。
「3つ目の轟音」が外側に飛び出しているから。そう、破れなかった殻をこの一撃で破ってみせたというような・・・。
ところで、ホ短調交響曲の方。最初に聴いたときは妙に感動したものだ。この作品のクライマックスはもちろんフィナーレのパッサカリアで、ムラヴィンスキーの演奏もこの最後の楽章に向けて少しずつヒートアップしてゆくが、第1楽章のいかにも柔らかで囁きかけるような音楽作りと、第3楽章のぶれないアンサンブルによる強烈な破壊力が白眉なのでは(それにしても、ティンパニの威力が並大抵でない)。

さて、だいぶ心も温まった。


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