Live At The Marquee 1969

引き続きキング・クリムゾン。少しばかり気になって、久しぶりにオリジナル・クリムゾンのライブ盤を聴いた。1969年のマーキー・クラブでのもの。明らかに”Earthbound”のそれとは違う。テンションはいずれ譲らぬほど高いのだけれど、少なくとも僕の耳にはオリジナル・クリムゾンの演奏の方が「整然」としている。いや、ちょっとこの言い方はわかりにくいかも。要は「暴走」がないのである。それゆえ、「生」のアクシデント的なインプロヴィゼーションを志向する者にとっては物足りなさを感じるかも(待て、この言い方も違う。第1期クリムゾンのライブは決して物足りないものではないから。あくまで比較するとそういう違いが見えるというだけ。しかし、2つのクリムゾンを比較するべきではない。なぜならロバート・フリップがそこにいるというだけで全く別のバンドだから)。

それにしても熱い。それと、今頃気がついたのだけれど、”Travel Weary Capricorn”はメタル・クリムゾン(僕にとってはこの時期のクリムゾン、すなわちジョン・ウェットン、デイヴィッド・クロス、そしてビル・ブラッフォードを擁したクリムゾンがベスト。こちらも実際には比べられないが)の”Exiles”の元ネタみたいだ。あくまで即興風にやられているが、かの曲の旋律やら節回しやらが時折顔を出す。長大なインプロ・インスト・ナンバーが収められているこの音盤を聴くに至り、既にキング・クリムゾンの方向性はこの時点で決定しており、それをマイルストーンにロバート・フリップがメンバーの入れ替えを頻繁に行いつつ「理想」を目指して進んでいこうとしていたんだということがわかって面白い。

この異様なテンションとエモーションに聴衆は本当についていけたのだろうか?
メンバーですら匙を投げたのに・・・。

King Crimson:Live At The Marquee 1969(1969.7.6Live)

Personnel
Robert Fripp (guitar)
Ian McDonald (woodwind, mellotron, vocal)
Greg Lake (bass guitar, lead vocal)
Michael Giles (drums, percussion, vocal)
Peter Sinfield (illumination)

聴衆によるテープ録音(日時はおそらくということだが、とすると例のハイド・パーク・コンサートでストーンズの前座を務めた翌日のギグ)。よって音は割れる。当然モノラル。しかし、パフォーマンスはこれ以上のものはない。

以下その日のフリップの日記。
「スタンディング・オベーション。巨大な成功、その重要性をかみしめるまでには時間がかかりそうだ。はるか未来にこの日を振り返えれば、その意味するところを完全に理解できるに違いない」

何て冷静なのだろう。まるで他人事のようだ。しかし、それこそがロバート・フリップその人なのである。あくまで彼はメンバーを支配するコントローラー。ゆえに常に客観的であらねばならない。そういう監視者のもとで熱演を、集中力をもってやり遂げねばならなかったマクドナルド以下のメンバーの大変さはいかばかりだったか・・・。

ただただ”Mars”のおどろおどろしさよ。
足がすくむほどのエネルギーを秘める。

3 COMMENTS

みどり

>「暴走」がない

より、寧ろ「暴走」はさせない、されたくないのでしょう?フリップとしては。
どのようにライヴで再現したいかというイメージがフリップの中には明確に
存在していたのだと思うので、そこから逸脱されたくないのですよね?
この時点で既に「理想」を目指していたのか私にはわからないのですが、
その後、目指さざるをえなくなったのだろうとは思います。
あの3人を失う訳ですから。

イアン・マクドナルドの脱退が、ツアーが嫌だったのでという言われ方を
していた時期がありましたが、あれが不思議で。
私は、「元は自分がアイデアを持ち込んだ作品なのに、管理されて自由が
ないのは嫌だ」と思ったのかなと。

教えていただきたいのですが、フリップがこの時点でライヴに拘る理由と
いうのは何なのでしょう?
例えば、Colosseumなんかだったら問題ないと思うのです、ライヴって。
時代が少し後になりますが、APPのようにライヴはしないという選択も
ない訳ではない。
でも、クリムゾンはあの「宮殿」を演るのですよね?
ご教示をいただけると有難いです。
お忙しいと思いますので、急いでいただかなくて大丈夫です!(笑)

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岡本 浩和

>みどり様

>「元は自分がアイデアを持ち込んだ作品なのに、管理されて自由が
ないのは嫌だ」と思ったのかなと。

なるほど、確かにその推測は正しいでしょうね。

それと、フリップの件ですが、やっぱり「自己顕示欲」の類じゃないでしょうかね。
それと単に金儲け。
なぜなら、当時の日記に克明に今日はギャラがいくらだったかを書いてますから(笑)
あくまで僕のカンですが。
ちなみに、以下、1969年の日記。

7月6日(日)、動員499人。受けた。客は手拍子のタイミングをつかんだようだ。
7月20日(日)、まあまあ。動員488人。売上:90ポンド6シリング6ペンス。
7月27日(日)、68ポンド6シリング9ペンス。イアンの怪我が心配。
8月17日(日)、「マーズ」をやらず。
8月24日(日)、さらばマーキー。

フリップは相当細かい性格ですね。一緒に仕事したらかなり面倒くさそうです(笑)
もう少し根拠を探りますので、ご質問の件、少し時間をください(笑)。

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