Peter Gabriel:US

20年前にリリースされたピーター・ガブリエル6枚目のオリジナル・アルバムは、今もって古びない傑作であり、ある意味で彼の経歴の頂点だったのではないかと僕には思えてならない。後にツアーの名称にもなるが、このアルバムのラスト・ナンバーとして鎮座する”Secret World”が彼の思考を読み解く鍵なのではないかと考える(日本で最初にリリースされた音盤にはボーナス・トラック”Bashi-Bazouk”が収録されているが、このインストが実に最高。しかし、権利関係の問題で確かすぐさま店頭から姿を消して、再販されたものには入ってないのでは・・・?未確認だけれど)。

With no guilt and no shame, no sorrow or blame
Whatever it is, we are all the same

罪悪感も恥も、哀しみも非難もない
結局のところ、人間は誰も皆同じだってことだ

Making it up in our secret world
Shaking it up
Breaking it up
Making it up in our secret world

秘密の世界で僕らは皆辻褄を合わせようと必死だ
いろいろと混乱を招きながら
秘密の世界で僕らは皆辻褄を合わせようと必死だ

ちなみに、ピーター・ガブリエルの主宰するレーベルを”Real World”という。
まるで、上記の歌詞にあえて相反させたかのようだ。

ピーター自身はリアル・ワールドを次のように考えている。「大学と休暇村とテーマ・パークとディズニー・ランドをミックスしたようなものだ。自分をテストしたり、自分自身にチャレンジしたり、自分を楽しませたり、理想を言えば今の自分を少しなりとも変えられるような場所」
ガブリエランドとも命名されたことのあるこの夢の国は、今のところまだ実現を見ていない・・・。
スペンサー・ブライト著ピーター・ガブリエル(正伝)より)

Peter Gabriel:US

Personnel
Peter Gabriel (programming, triangle, keyboard bass, keys, Mexican flute)
Manu Katche (drums, electric drums)
The Babacar Faye drummers (sabar drums)
Doudou N’Diaye Rose (drum loop)
David Bottrill, William Orbit (programming)
Tony Levin (bass)
David Rhodes (guitar)
Daniel Lanois (shaker, hi hat, guitar and additional vocals)
Richard Blair (additional verse keyboards)
Chris Ormston (bagpipe)
Levon Minasian (doudouk)
Sinead O’Connor (vocals)
Dmitri Pokrovsky Ensemble
Hossam Ramzy (tabla)
Daryl Johnson (hand drums)
Brian Eno (additional keys)
Shankar (violin)
Caroline Lavelle (cello)
Tim Green (tenor saxophone)
Reggie Houston (baritone saxophone)
Renard Poche (trombone)
Assane Thiam (talking drum)
John Paul Jones (surdu, bass and keyboards)
Richard Evans (mandolin)
Manny Elias (Senegalese shakers)
Marilyn McFarlane (vocals)

“Love To Be Loved”にはイーノが、”Come Talk To Me””Blood Of Eden”にはシンニード・オコナーが、”Fourteen Black Paintings”にはジョンジーが・・・。
錚々たるメンバーが揃う。これだけで圧巻。
リアル・ワールドが実現を見ないのは、ピーター自身がまさに「秘密の世界」の住人だからだろう。仕事でもプライベートでもその詩の如く混乱を生じつつ、とにかく誤魔化そうとしてきたことを省みる。人気の絶頂でGenesisを脱退したのもそういう自らに嫌気がさしての行動だろうが、「脳のシステム」にはそもそも抗い難い。
しかし、僕はそれで良いと思う。それであるがゆえにピーター・ガブリエルという独自の世界が現出するのだから。

「正伝」は1988年に出版されたものだ。よって、今のところまだ実現を見ていないというのはかれこれ25年前のこと。2013年の現在だって現実にはなっていない・・・と思う。
そろそろまたピーター・ガブリエルが表舞台に出て来るころだろうか?(昨年一昨年と連続でリリースされた新作はどちらもオーケストラをバックにしての変則アルバムだった。正統派ロック・アルバムの出現を今か今かと待つ)


2 COMMENTS

みどり

「作業用BGM」というのがありますが、無音でなく集中したい時に
ピーター・ガブリエルのインストは最高だと思うことがあります。
引き摺り込まれることで集中度が上がる…というか。
なので、新作が全編インストでも個人的には大歓迎(笑)

ピーター・ガブリエルのお父様、昨年100歳で逝去されていますよね?
ピーターとの関係がどんなものであったのか存じ上げないのですが
何か心境の変化はおありなのでしょうか…

人生があと丸50年以上あるとわかったら、私は途方に暮れます。
まだ覚悟が足りていないのでしょう…

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岡本 浩和

>みどり様
全編インストのぞむところです!!
「作業用BGM」ですか!いや、僕はインストだろうと何だろうとPGについては気を取られてしまいます(笑)。

>ピーター・ガブリエルのお父様、昨年100歳で逝去されていますよね?
ええーー、そうだったんですか?!それは知りませんでした。
曖昧な記憶ですが、ピーターは家族の確執があったように思います。
というか、ジェネシスのメンバーはマイクもフィルもみな父親とうまくいっていません。
そういう観点でみても興味深いバンドです。

>人生があと丸50年以上あるとわかったら、私は途方に暮れます。

同感です。

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