グリュミオー・トリオのハイドン&ベートーヴェン

昨日のジュリアード弦楽四重奏団は熱かった。
ジョセフ・リンの音の美しさに惚れ惚れした。ベートーヴェンの最晩年の四重奏曲がまさに今生み出されたかのようなリアリティでもって目の前に現れる、そんな錯覚に陥った。そして、特に古典派の四重奏曲においては基本的に第1ヴァイオリンが主要旋律を奏しながらリードし、他の楽器とのいわばキャッチボールを交えて音楽が進行してゆくものなんだと再確認した。昨日も書いたけれど、弦楽四重奏というのはある意味弦楽三重奏を伴奏にしての協奏曲とも言えるんだ・・・。
そもそも西洋音楽においては4声というのが基本であるからだと思うのだけれど、ハイドンもベートーヴェンも、おそらく弦楽トリオは機会音楽的に書くもの、あるいは習作的に創造するものと想定していたのだろうか・・・(少なくともベートーヴェンはある程度その分野で力を試してから本格的にカルテットの世界に足を踏み入れている)。

では、弦楽三重奏が弦楽四重奏に劣るのかといえば・・・、決して僕はそうは思わない。
例えば、ハイドンが残した弦楽三重奏曲。グリュミオー・トリオのものを愛聴するが、これらがピアノ・ソナタの焼き直し、つまり編曲版とは思えない出来で、どちらかというとソナタよりも音楽的ニュアンスに富んでおり、実は先に三重奏ができてからピアノに編曲したのではないのかと僕などは想像してしまうほど(トリオ編曲はホフマイスターによるものだという説が一般的らしいが、真偽は不明とのこと。どうにもハイドン自らの作ではないかとあえて僕は空想する)。ともかく反復するたびに、その柔和な音調と愉悦的な響きにますます虜になってゆく。

ハイドン:3つの弦楽三重奏曲作品53(ピアノ・ソナタHob.XVI:40-42の編曲)(1969.2録音)
・弦楽三重奏曲第1番ト長調作品53-1
・弦楽三重奏曲第2番変ロ長調作品53-2
・弦楽三重奏曲第3番ニ長調作品53-3
ベートーヴェン:弦楽三重奏曲第1番変ホ長調作品3(1968.9録音)
グリュミオー・トリオ
アルテュール・グリュミオー(ヴァイオリン)
ジョルジュ・ヤンツェル(ヴィオラ)
エヴァ・ツァコ(チェロ)

生れたばかりのような柔らかい音色、そしてオーソドックスな楽曲再生。こういうのをフランス的エスプリというのかどうかはわからないけれど、繰り返し聴いてまったく飽きない。(3人で奏でているとは思えないほど)音の厚みも十分だし、何よりグリュミオーが他の2人と巧みに和合しようとする様が目に見えるようで感動的。そう、何も足さず、何も引かず。3声というのは極めてバランスに優れた形態であると感じる。ハイドンの作品の中でもあまり顧みられることの少ないジャンルだと思うが放っておくにはもったいなさ過ぎる。もっと世に知られるべき佳曲であると僕は信ずる。

ところで、ベートーヴェンの若き日の秀作である作品3。6楽章制のいわばディヴェルティメントのようなものだが、ここでは師ハイドンや先輩モーツァルトの語法を上手く取り入れ、しかもベートーヴェン的な革新要素も織り交ぜながら音楽が作られており、これももっと聴かれるべき佳品である。

 


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