マリア・カラス「プッチーニ・アリア集」(1954)を聴いて思ふ

callas_puccini_arias日中、ものすごい突風が吹く。でも、春の予感・・・っぽい。
もちろん春の到来は、まだ先だ。こういう天気の日に、女性の心の機微を余すところなく表現したプッチーニなどはうってつけ。

リハーサルの最中、時々私は我に帰ることがあります。気がつくと、コーラスの人たちの真ん中にいて、みんなは私が魔法をかけたと言うのです。衣装もつけず、普段着のままで、私は何もしていないというのに!本当に驚きです。

私は舞台の上では「どうすべきか」ということは忘れるようにしています。それは家で学ぶべきことです。私は何でも吸収しますが、その中から自分が良いと思ったことだけを取っておくのです。舞台ではいつも新しいものを求めなくてはなりません。その方がよりリアルです。

音楽は難しいものです。本当に音楽を演奏したいと思うなら、愛情、献身、作曲者への尊敬が必要です。音楽は、楽譜に書かれた通り立派に演奏したとしても、退屈なだけです。まず命が必要です。

マリア・カラスの言葉から学ぶことは多い。わずか53歳で亡くなってしまった彼女の波乱万丈の人生は、特にプライベートにおいて常に満たされない悲哀に満ちたものが先行していたように想像するが、であるがゆえに人々の心を動かす大きな歌唱につながったのだろう。

1953年末から54年にかけ、1年の間に25キロもの減量に成功したカラスは、以降一層の脚光を浴び、社交界の花形となって行く。しかし、おそらくそのことが彼女の潜在意識に与えたプレッシャーも並大抵ではなかったのではないのか・・・。
ちょうどその頃、EMIに録音されたプッチーニのアリア集。命を懸けて歌い切る姿と、ひとつひとつのアリアに感じられる鬼気迫るパッションが聴く者を金縛りに遭わせるよう。ここに全盛期のマリア・カラスが在る。

プッチーニ・アリア集
・「この柔らかなレースの中で」~歌劇「マノン・レスコー」第2幕
・「ひとり寂しくすてられて」~歌劇「マノン・レスコー」第4幕
・「ある晴れた日に」~歌劇「蝶々夫人」第2幕
・「かわいい坊や」~歌劇「蝶々夫人」第2幕
・「わたしの名はミミ」~歌劇「ラ・ボエーム」第1幕
・「さようなら、あなたの愛の呼ぶ声に」~歌劇「ラ・ボエーム」第3幕
・「母もなしに」~歌劇「修道女アンジェリカ」
・「お父さまにお願い」~歌劇「ジャンニ・スキッキ」
・「おききください、王子様」~歌劇「トゥーランドット」第1幕
・「この宮殿の中で」~歌劇「トゥーランドット」第2幕
・「氷のような姫君の心も」~歌劇「トゥーランドット」第3幕
マリア・カラス(ソプラノ)
トゥリオ・セラフィン指揮フィルハーモニア管弦楽団(1954.9.15-18録音)

必ずしもプッチーニがレパートリーの中心でなかったカラスだけれど、いずれのアリアもすごく泣かせるんだ。「ある晴れた日」になんていろんな歌手の歌唱を随分と聴いているけれど、カラスほど魂のこもった切ないものはなかなかお目にかかれない。本当に悲しくも儚い。

いつかある日、煙がひとすじ見えるの
はるか彼方の海の向こうに。
そして船の姿が現れるの。
真っ白の船、その船は港に入り、礼砲を鳴らすわ。
見えて?戻ってらしたのよ!私はお迎えに行かないわ。
あそこの丘の端に立って、待つの、長いこと。
でも辛くないわ、どんなに長くても。
そのうち町の中から人が、豆粒のように小さな人が、その人は丘の方へ向かって来るの。

本人も語るように、この人には他の人にない極めつけのオーラがある。
スタジオで録音されたこれらのアリアを聴くだけでそのことは十分にわかる。

小雪舞う気仙沼入り。こちらはやっぱり・・・、寒いけど、思ったほどでもない。

 


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