Miles Davis “Seven Steps to Heaven”を聴いて思ふ

Miles_Davis_seven_steps_to_heavenいちばん大事なことはな、己に忠実になれ、この一事を守れば、あとは夜が日につづくごとく、万事自然に流れ出し、他人に対しても、嫌でも忠実にならざるをえなくなる。
ウィリアム・シェイクスピア著福田恒存訳「ハムレット」P32

マイルス・デイヴィスが1963年に発表した”Seven Steps To Heaven”の、ジャケット裏冒頭に引用される言葉である。事の真理を突き、マイルス自身がおそらくこのことを地で追求した、その答がこのアルバムの中に在るような気がした。
ましてやタイトルが「天国への7つの階段」である。

ロンとハービーと、そしてトニーの繰り出す序奏に乗ってマイルスのトランペットが徐に鳴らされる7つの音が耳から離れない。ヴィクター・フェルドマンとマイルスの共作であるこの楽曲のレコーディングはロサンゼルスで行われた。しかし、アルバムに収録されたのはフェルドマンがピアノを担当した録音ではなく、当時、マイルス・バンドに招き入れられたハービー・ハンコックがピアノを務めたバージョンだった。

彼は酒を飲みはじめると、そこに酒瓶があるという理由だけで、空になるまで飲み続けるような男だった。最初の頃のハービーはそんな感じで実際弾けたし、アイディアにもあふれていて、とにかく弾きまくるのが好きだった。
「マイルス・デイビス自叙伝Ⅱ」P101

時たま、そんなに速く弾くな、もっと遅くやれといった程度のものだった。弾きすぎないことだ。たとえ一晩中座っていても何も弾かなくたっていい。88鍵もあるからって、ただ馬鹿みたいに弾いてしまわないことだ。
~同P101

ハービーとトニーとロンは、ホテルの部屋に戻ると毎晩、外が明るくなるまで、その日の演奏について話し合っていた。だから毎晩、彼らは何か変わった演奏をし、オレも毎晩、それに対応しなければならなかった。オレ達があのバンドでやった音楽は、ただの一晩だっておなじだったことはない。
~同P106

マイルスがハービーや当時のほかのメンバーにおいていた信頼は並大抵でなかった。彼らは、常に変化を求めるマイルスの志向についていくことのできた天才たちだったということだ。

Miles Davis:Seven Steps To Heaven

Personnel
Miles Davis (trumpet)
Victor Feldman (piano) Cal.
Herbie Hancock (piano) N.Y.
George Coleman (Tenor Sax)
Franck Butler (drums) Cal.
Anthony Williams (drums) N.Y.
Ron Carter (bass)

奇蹟のリズム隊がマイルスを引っ張った形か。それぞれのプレーヤーが自分に忠実になって、しかも毎晩「反省会」を開き、次に繋げるべく案を練り込むわけだから、そこには深化と進化しかなかった。”Joshua”の前傾の勢いと、マイルスの奏でる煌めくトランペットの旋律は5人のぶれない一体感を見事に表すよう。何てかっこう良くて、何て美しいのだろう。

ところで、「7つのステップ」って何だろう?
天国=幸福の結末を「自立と調和」と想定するなら、
第1「自分を知る」
第2「才能に自信を持つ」
第3「縦の関係から横の関係へ(親和)」
第4「比較をなくす」
第5「自分に忠実に」
第6「個の自立」
第7「社会との調和」
ということかな・・・。ということにしておこう・・・(笑)。

 


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Miles Davis “Seven Steps to Heaven” (1963) | アレグロ・コン・ブリオ へ返信するコメントをキャンセル

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