小澤征爾&ボストン響の「ピーターと狼」を聴いて思ふ

prokofiev_peter_ozawa蕭々と雨が降る。
ただし、決して鬱陶しくなく、木々の緑が潤って、一層光り輝くよう。真に清々しい。晴天ならば、壮大な富士の景観を背に音楽を嗜むところだが、軒を打つ雨音をバックに耳を傾ける。それもまた良し。

プロコフィエフ自身が「モスクワの子どもたちへの、そして私の子どもたちへのプレゼント」と称した音楽物語「ピーターと狼」を聴いた。わずか数週間でテキストから音楽までが仕上げられた子ども向けの作品だが、馬鹿にはできない。プロコフィエフ特有の抒情的で美しく、しかもキャッチーな旋律に溢れ、大人でも十分に楽しめる内容だから。

こういう作品を振らせると小澤は巧い。

・プロコフィエフ:交響的組曲「ピーターと狼」作品67
・サン=サーンス:組曲「動物の謝肉祭」
・ブリテン:青少年のための管弦楽入門―パーセルの主題による変奏曲とフーガ作品34
ジョン・ブラウニング、ギャリック・オールソン(ピアノ)
小澤征爾指揮ボストン交響楽団(1992.2.14&15録音)
小澤征爾(ナレーション)(1992.3.15&18, 1993.3.9&13録音)
実相寺昭雄(ナレーション演出)
小澤幹雄(台本・脚色)

プロコフィエフはストラヴィンスキーとはまた違った意味で器用だ。ロシア革命前後のモダニズム期の作品と10数年の亡命生活を終えての完全帰国後の作品の表面上の相違は実に見事としか言いようがない。しかしながら、どんな作風であろうとプロコフィエフという人の根底に流れるものは「正義」だ。自然というものを正しく捉え、その中でいかに人間が正しくあるべきかを主題にする。「炎の天使」や「賭博士」などのオペラですら人間の醜さ、不完全さをテーマにしながら、実に逆説的に「本来のあるべき姿」を謳うのである。

ブリテンは、小澤の颯爽とした客観的で正確な音楽作りがぴったりなのだけれど、ナレーションが邪魔(笑)。残念ながら「動物の謝肉祭」は何とも陳腐。もう少し遊び心のある演奏が僕好み・・・。

さて、山中湖の夜が更けてゆく。
明日もまた早朝から。ということで、そろそろ・・・。

 


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2 COMMENTS

畑山千恵子

これにはカラヤンのものがあります。坂本九のナレーションで、大変面白い、素晴しいナレーションでした。これが復活してほしいものです。

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