イ・ムジチ合奏団のレスピーギ、バーバー、ロータ&エルガーを聴いて思ふ

respighi_barber_rota_elgar_i_musici164音楽というものは美しく、優しくなくてはならない。イタリア、ナポリ派のペルゴレージら古の旋律を引用してストラヴィンスキーはバレエ音楽「プルチネルラ」を作曲した。どの瞬間も心に染み入る癒しの音楽。真に美しく、芯から優しい。イタリアはまさに「歌」の宝庫なのだった。

オットリーノ・レスピーギの「リュートのための古風な舞曲とアリア」第3組曲を聴いた。ローマの聖チェチーリア音楽院の図書館で発見された中世・ルネサンス期のリュート音楽を基に書かれたこの作品は、「リュートのため」と名がつくものの演奏は弦楽合奏による。
第1曲「イタリアーナ」の、微風が舞うようなピッツィカートを伴奏にした心地良い主題に心ならずも涙。第2曲「(ベサールの曲による)宮廷のアリア」の、悲しく深い祈りは誰のためのエレジーなのか?そして、突如として明るくなるパートの舞踊は何を表現するのか?陰陽が見事に錯綜する名曲なり。
第3曲「シチリアーナ」の、いわずと知れた懐かしの旋律は明朗な光の裏にある翳の象徴。ずっと浸っていたい、そんな音楽がここに在る。さらに、終曲「(ロンカッリの曲による)パッサカリア」は、基はギター音楽であり、そのスペイン情緒を湛えた情熱的な響きに思わず唸る。

・レスピーギ:リュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲
・バーバー:弦楽のためのアダージョ作品11
・ロータ:弦楽のための協奏曲
・エルガー:弦楽セレナードホ短調作品20
イ・ムジチ合奏団(1985.7.25-8.2録音)

サミュエル・バーバーのアダージョについては、バーンスタイン屈指の分厚く崇高な名録音を一推しとする僕には正直物足りない。例えば、室内楽的な中途半端な弦楽の響きが、この作品の持つ深みを残念ながらスポイルしてしまっているように思われるのである。

しかし、イ・ムジチのために書かれたニーノ・ロータの協奏曲は本当に素晴らしい。第1楽章前奏曲の甘美さは、さすがは映画音楽を生業とするだけある大衆アピール度を誇る。第2楽章スケルツォも単に諧謔性を追求した音楽でなく、映画のBGMの如く一度聴くと忘れられない。第3楽章アリアのどこか不安の表象についても然り。さらにはフィナーレのバルトークを髣髴とさせる前進性!
なるほど、ロータはどちらかというと「ゴッドファーザー・愛のテーマ」をはじめとする映画音楽作曲家だと思われがちだが、本人は「本業はクラシック音楽作曲家だ」と語っていたそう。さすがに自負あるだけのことはある。

ちなみに、エルガーの弦楽セレナードも実に美しい逸品。特に第2楽章ラルゲットは、エルガーならではの愛妻キャロラインへの愛のラヴレター。
イ・ムジチの演奏は実に瑞々しい。この活き活きとした生命力に、20世紀の生んだ大作曲家たちの名作が生き返るよう。

 

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