思春期の頃受けた衝撃というのはその後の人生を左右する。スティーヴ・ライヒの音楽的目覚めは14歳の時であったという。
それまで、ハイドン以前とワーグナー以降の音楽を聴いたことがなかったので、ジャズも全く聴いたことがありませんでした。14歳になって初めてそうした音楽を聴いて、次から次へとさまざまな録音を、かなりのスピードで聴き漁りました。
~ハンス・ウルリッヒ・オブリスト著/篠儀直子・内山史子・西原尚訳「ミュージック―『現代音楽』をつくった作曲家たち」(フィルムアート社)P282
機会がないと、あるいはそういう状況を自ら作らないと、人間は「新しいもの」に触れることは難しい。誰もが変わることを嫌がるゆえ。
中で、やはりジョン・コルトレーンとの出会いが彼の音楽人生に一層の熱を与えたのだという。
西洋音楽において私が大好きなものは、ヨハン・セバスチャン・バッハから始まって中世音楽のペロティヌスまで遡ったあたりと、ドビュッシー、サティ以降の音楽です。また、ジャズも好きです。ジョン・コルトレーンの音楽を発見したことも閃きのひとつで、先ほどの閃きより後に起こりました。それは、1950年代終わりにジュリアード音楽院に既に通っていた時から1960年代はじめにカリフォルニアでルチアーノ・ベリオに師事していた頃でした。彼とエリック・ドルフィーの共演を何度か聞いていますが。驚くほど素晴らしかったです。2人はとても共鳴し合う、素晴らしいプレイヤーだからです。
~同上書P283
天才の共鳴の、周囲に与える影響は計り知れない。コルトレーンから学んだことが、ライヒの作風を決定づけたと言っても過言ではないだろう。
つまり私たちは皆、コルトレーンがいなかったら存在していなかったように思います。
~同上書P284
ライヒががそう断言するように、ミニマル・ミュージックの原点はジョン・コルトレーンにあるのだ。
私がコルトレーンから学んだことは、とりわけ「アフリカ/ブラス」(1961、インパルス・レコーズ)というレコードで聞き取ることができますが、ひとつのハーモニーに長い間とどまったとしても、音楽を面白くすることができるということです。ひとつのハーモニーの上で、ほとんど何でも演奏できるからです。
~同上書P283
単純さの中に明滅する「何でもあり」こそコルトレーンの真骨頂。
同じくスティーヴ・ライヒの、ひとつのハーモニーの上で、いかにも永遠に繰り返される「最小単位の音楽」は、僕たちをいつの間にか覚醒させるほどのエネルギーを持つ。この変奏曲は真に素晴らしい。
・ライヒ:管楽器、弦楽器と鍵盤楽器のための変奏曲
・ジョン・アダムス:「シェイカー・ループス」
エド・デ・ワールト指揮サンフランシスコ交響楽団(1983.10録音)
そして、ブライアン・イーノのアンビエント・ミュージックを髣髴とさせるアダムスの「シェイカー・ループス」。おそらく彼の音楽も、コルトレーンから多大な影響を受けているのかもしれない。
ちなみに、第1楽章「シェイキング・アンド・トレンブリング」には伊福部昭の「ゴジラ」の木魂が聴こえるよう。終楽章「ア・ファイナル・デェイキング」の宇宙の塵のような微細さ、消え入りそうな印象になぜだか魂が触発される。
音楽の進化というのは真に興味深い。
そして、このドラマは、一言、格好良い。
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