ふたご座

cannonball_adderley_sextett_in_newyork.jpg2001年3月19日。その日は朝比奈隆が人生最後のブラームス・ツィクルスの最後のプログラムをサントリーホールにて披露した日であった。二重協奏曲と第4交響曲。早8年の月日が流れる。まさかその年のうちに先生が天に召されるとはその時は思ってもみなかった。ただ、その直前までニューヨークに所用で出掛けており、ひょっとすると19日当日にフライトが間に合わない可能性があることを友人から示唆された時、「次が聴ける保証はないから絶対帰りたい」旨を伝え、辛うじて前日の帰国で間に合ったことを思い出す。虫の知らせというほどのものでもないが、1回たりとも先生の舞台を見逃しては後悔するという念が先に立ち、ほとんど強引に予定を繰り上げたというのが実情である。執念というか執着というか・・・、でも今から考えると聴いておいて良かったとつくづく思う。

ニューヨークでは例によってVillage VanguardでLiveに触れたと記憶する。同時テロが起こる半年前のニューヨーク。世界貿易センターも訪れた。地下のカフェで食事もした。まさかああいう惨事が起こるとはその時は想像だにしていなかった。何の変哲もない、慌しさの中にも普通に日常がいつものように流れる景色。かのライブハウスで何を聴いたのかは全く覚えていない。それでも何度か行ったその地の記憶だけが走馬灯のように蘇り、いまだにジャズ魂が沸き立つニューヨークのことを昨日のように思い出す。灼熱のバンドのうねりと響き。鳥肌が立つほどの刺激と興奮。

The Cannonball Adderley Sextet in New York

Personnel
Julian “Cannonball” Adderley(as)
Nat Adderley(cor)
Yusef Lateef(ts, fl, oboe)
Joe Zawinul(p)
Sam Jones(b)
Louis Hayes(ds)

まだ僕が生を享ける以前の実況録音。Cannonballの最初のイントロダクション・アナウンスからもうかっこ良さの極致。それに続く1曲目Geminiは楽曲の素晴らしさもさることながら、中でのCannonballの即興演奏は抱腹絶倒、悶絶もの。そして極めつけはLateefのオリジナルとなる5曲目のSyn-Anthesia。決して西洋的とはいえない意味深い音の連続が聴く者の心を串刺しにする。Lateefの奏でるオーボエの旋律はどこかで聴いたことのあるもの。何だったっけ、あの懐かしいメロディは・・・。残念ながら思い出せない。Village Vanguardでの熱い一夜があっという間に過ぎ去ってゆく。

「ワークショップZERO~人間力向上セミナー」が無事終了した。お陰さまで参加いただいた方には喜んでいただけた。いよいよ本格的に発進するべく明日は誕生日会と会社設立祝いを兼ね自宅でパーティーだ。楽しくなりそう・・・。

2 COMMENTS

雅之

おはようございます。いろいろ、お慶び申し上げます(笑)。
ご紹介の盤、まさに私の生まれたころの録音ですね(1962年1月、違ってましたっけ?)。そういうことを意識して音盤を聴くようになったのは、40代になってからのことなので、この盤も、また聴いてみたくなりました。ジャズは勉強不足なのに加え聴き込み不足なので、演奏についてのコメントは出来ません。しかし、録音のタイム・マシンとしての価値は、本当に魅力的だと思っています。
ブログ本文の話題とは外れますが、上野の東京文化会館が開館したのも、私たちの学年の生まれた時期の出来事(1961年4月)です。最近の新譜で、1961年5月1日の、コンヴィチュニー&ゲヴァントハウス管の日比谷公会堂での来日のライヴ録音のCDが出ました。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1213787
同時期、開館したばかりの東京文化会館には、バーンスタイン&NYフィルが来て演奏していました(こちらも当日のライヴCD、出ないかなあ)。東西冷戦の真っただ中のころですよね。
ちなみに昨日ご紹介のワインガルトナー&ウィーン・フィルのベト8が録音された1936年2月24~26日は、二・二六事件の当日にかかっていますよね。歴史聴きって面白いです。
朝比奈先生のアメリカデビューの話などにも脱線したかったのですが、また後日に・・・。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。いろいろ、ありがとうございます。
そうです、1962年1月12日&14日の録音です。
>録音のタイム・マシンとしての価値は、本当に魅力的だと思っています。
ですね、そういう聴き方は本当に面白いです。
ご紹介のコンヴィチュニー盤は未聴ですが、良さそうですね。その時期のバーンスタインのライブも確かに聴いてみたいところです。
>ワインガルトナー&ウィーン・フィルのベト8が録音された1936年2月24~26日は、二・二六事件の当日にかかっていますよね。
確かに!おっしゃるとおり歴史聴きっていうのは抜群に面白いと思います。

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