逃げるって・・・

mozart_horn_civil.jpgふと高校生の頃を思い出す。もう30年も前の話だ。先のことなど全く考えず、他人のことも知らぬ存ぜぬで、ひたすら自己中心的に「現実逃避」していた時代。今でもそうだが、新しい知識を導入することに貪欲で、そういう意味では「勉強好き」だったのだが、ともかく「勉強」を言い訳に自分のことしか考えていなかった「恥ずべき」時期である。人より明らかに成長が遅いのか、それとも日々目の前に起こることに鈍感なのか、最近になってようやく物の「本質」に気づけるようになってきた。

壁にぶつかった時、誰しもその壁を乗り越えるべく七転八倒し、乗り越えた時に安堵感と達成感を体感する。要は、乗り越えるか逃げるかしかないのだが、「逃げること」に対してマイナス感を持っていた。「逃げること」って悪いことか?どうやらそうでないことに気づいたのである。ひょっとして「ぶつかる」ということは方向ややり方が間違っているということではないのか?一旦そこでリセットし、考え直せという思し召しなのではないか?そう考えると全てが楽になる。

1981年だったか、京都の岡崎にある京都会館(だったと記憶する)で、いわゆる「輸入盤フェア」に初めて行った。その頃、レコード蒐集のために専ら訪れていたのは四条烏丸にある十字屋(嗚呼懐かしや)。当時レコードを買うのに輸入盤のバーゲンに頼るのが最も効率的に求めることができたゆえ、膨大な輸入盤を目の当たりにした時、何を手に入れるか相当時間をかけ、財布と相談しながら迷いに迷ったことを思い出す(何て純粋だったんだろう(笑)!)。会場で何時間か過ごした後、結局購入したのは、今でも手元に残る次のアナログ盤。

メンデルスゾーン:交響曲第1番ハ短調作品11&第4番イ長調作品90「イタリア」
ベルナルト・ハイティンク指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

モーツァルト:ホルン協奏曲集
アラン・シヴィル(ホルン)
ネヴィル・マリナー指揮アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ

mendelssohn_haitink.jpgハイティンクによるメンデルスゾーンの「イタリア」交響曲はその前にNHK-FMで聴き、一目惚れした音楽。一般的評価としては決してNo.1の音盤とはいえないが、何しろ人間の刷り込みというのは恐ろしいもので、僕にとっては懐かしくかつその当時の記憶がまざまざと蘇るという意味でこのハイティンク盤は不滅(今となっては、特にハイティンクの音楽性に惹かれているわけではないのだが・・・)。初体験が人間に与える影響というのは大きいものだ・・・。

ところで、今日は朝から「菜食料理教室」で都合25人くらいの人たちが集まった。いろんな人がいる。ワインを片手に疲れを癒すために久しぶりに取り出したのが上記のモーツァルト。オランダ、フィリップスの優秀録音によるLP。

最近になってモーツァルトの最晩年の作品だと認定されたホルン協奏曲第1番ニ長調K.412。誰もが知る有名な主題が朗々と流れるところから一気に引き込まれる。貧困の極致にあったであろうアマデウスの手からこれほどまでに明るく開放的な音楽が生まれたことがまさに奇跡である。そして、僕が最も好きなホルン協奏曲第2番変ホ長調K.417。ほんとに懐かしい。そして素晴らしい。こういう直截的な「素直さ」を失くしたくないとつくづく思う。感謝。

※それにしてもこういう再発モノのジャケットって味気ないなぁ・・・。買う気が失せてしまう・・・。


4 COMMENTS

雅之

こんばんは。
>「逃げること」って悪いことか?
私も悪くないと思います。野球では、「敬遠」も立派な戦術です。戦争でもそうですが、撤退する方が勇気が必要な場合も多いです。また、勝ち目の無い戦いは、するべきではないとも思います。美学やメンツ、プライドに拘り過ぎると、ロクなことはないです。
十字屋、関西出身の人には懐かしいのでしょうね!私は名古屋出身ですから、別な店でしたが、レコード店のエサ箱は、よく物色したものです。フィリップスの録音は、LP時代、メジャー・レーベルでは一番好きでした。ご紹介の盤もLPで所有していました。懐かしいですね。ただ、おっしゃるように、今の再発モノのジャケットって味気ないですね。ジャケットと音楽のイメージって、LP時代は密接につながっていたと思います。ジャケットは、音楽に愛着を持つための大切な要素だと思います。
しかし、当時からすれば、所有する音盤、増えたものだと思います。
この間、昔のアマオケの友人に教えられた、東フィルの、ちょっと面白いブログをご紹介しましょう。
http://ameblo.jp/tpo/entry-10209841612.html
いやー!このソロ・コンサートマスターの荒井さんの状況、身につまされますねぇ(爆笑)!

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
>勝ち目の無い戦いは、するべきではないとも思います。美学やメンツ、プライドに拘り過ぎると、ロクなことはないです。
おっしゃるとおり、同感です。僕も昔から「苦手」な分野には一切手を出しませんでした(笑)。
昔のレコード店って懐かしいですよね。LPを1枚1枚丁寧に探しながら、時にはジャケ買いする喜びは今の時代のCD物色とはニュアンスが少々違います。
しかし、ご紹介いただいた東フィルのコンマスのご自宅・・・、凄いですねぇ!さすがに僕はここまではいきませんが・・・。
気持ちはよくわかります(笑)。

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ふみ

僕はメンデルスゾーンは実にもっともっと発掘されるべき作曲家だと強く信じています。今年はメンデのアニヴァーサリーイヤーということで色々とコンサートが催されており嬉しい限りですがやはり認知度や評価はいまだにまだまだ正当のものではないと思っております。正直僕はメンデはモーツァルトよりもあらゆる才能に恵まれていた真の天才だったと思うのですが残念ながら影に隠れた作曲家のままです。どうか講座を通してメンデの偉大さを知らしめて下さい(笑)!
僕は勿論LP世代ではないのでどうもピンとこない感がありますがさぞかし岡本さん雅之さんには感慨深いものなのでしょうね。将来CDが違うものに変わったら僕もCD物色が懐かしいなぁなんて言ってるかも知れませんね。

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岡本 浩和

>ふみ君
こんばんは。そうそう、メンデルスゾーンは天才だと僕も思います。ただし、モーツァルト以上かと言われるとちょっとそこは何とも言えないけど・・・。でもふみ君の言わんとする気持ちはよーくわかります。講座を通して・・・、がんばります!
そう、LPはとっても懐かしいのです。将来、CDにとって代わるものが現れたらふみ君も気持ちがわかるかもね。

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