山田一雄指揮ウィーン響の團伊玖磨交響曲第1番&第2番(1988録音)を聴いて思ふ

ikuma_dan_symphonies689人間の感覚というものは面白い。
見ているのだけれど見ていない、聞いているのだけれど聞いていないということ多々。興味のないことを人は認識し難い。すべては各々の認識によるのである。
大切なことは「好きである」こと。好きだからそこに意識が向き、認識できるのである。「好きこそものの上手なれ」とはよく言ったもの。

團伊玖磨さんの「パイプのけむり」を読んで考えた。
感じるためには何事にも興味を持たねばならぬ。しつこいようだが、「好きであること」が重要なのである。

子供の頃から、僕は夕焼けを見るのが好きであった。そして、好きであるためであろう、数々の、忘れられない美しい夕焼けを方々で見て来た。
日本アルプスの槍ヶ岳の肩で見た、湧き上がる雲の中の夕焼け、真向うの海に落ちて行く雄大な八丈島の入日、大王椰子の葉のさやぎをうしろに聞きながらワイキキの浜に寝そべって見ていたハワイの落日、木枯らしが吹き抜けて、黒い枯木のシルエットが揺れている向うに、マンハッタンの摩天楼群が残照に光っていた冬のニューヨークの夕景、ヨーロッパに向う途中にその中を飛んで行った白夜、カーレン・ベルグに近いウィーンの森の春の夕暮れ、パリの、ニースの、ローマの、ミュンヘンの、ジュネーブの、エディンバラの、それぞれの国の、それぞれの場所で見た夕焼けの美しさは、いつも僕を佇ち尽くさせ、感動させるのだった。
團伊玖磨「パイプのけむり選集―旅」(小学館文庫)P10

自然に見事に同化できるこの感性が、團伊玖磨の創造の原点なのだとあらためて思う。
彼の生み出した交響曲は、初期のものから旋律に富み、闘争あり癒しありと、悠揚迫る自然美の極致。時に北欧の音調を醸し、また時に南国熱帯の雰囲気を髣髴とさせる真に不思議な(それでいて美しい)音楽たち(そこに東洋的趣味が付加されるのだからなおさら)。20世紀の中ごろに書かれたものの実に浪漫的でわかりやすい。

團伊玖磨:
・交響曲第1番イ調(1950)
・交響曲第2番変ロ調(1956)
山田一雄指揮ウィーン交響楽団(1988.6.27-7.2録音)

1956年の交響曲第2番の雄大さ。どこかで聴いたことのある音調、旋律が随所に溢れ、聴く者を虜にする。特に、全曲の半分を占める第1楽章アンダンテ・セリオーソ―アレグロ・マ・ノン・タントの、西洋的恰幅に日本的情緒を注入したような音楽に感動を覚えずにいられない。そして、第2楽章アンダンテ・コン・モトの、クラリネットやオーボエ、フルートのソロに聴く懐かしさは、やっぱり和の趣だ。
さらに、第3楽章アレグロ・コン・ブリオは冒頭から豪快、雄渾。それでいて細部は見事に繊細なのだから音楽の構成力は抜群。
山田一雄の棒も冴えに冴え、音楽は生き生きとうねり、最後は大きな喜びを爆発させる。

あの青春のウィーン以来、35年が過ぎた。その間何度も何度もウィーンを訪ねた。その度にウィーンは僕に豊かな音楽的な贈りものを与え、僕は励まされた。
去年の7月、尊敬する山田一雄先生と一緒に、シンフォニカーとこのCDの録音に取り掛かり、1番と2番。今年の1月に4番と5番、6月から7月に掛けて3番と6番を録音する旅が続いた。
團伊玖磨「ウィーンでの幸福」
PROC-1046/9ライナーノーツP70

團伊玖磨の交響曲第1番&第2番、いずれも傑作だ。

 

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2 COMMENTS

雅之

アントニ・ガウディの言葉を思い出します。

「全ては、自然が書いた偉大な書物を学ぶことから生まれる、人間が造る物は、既にその偉大な書物の中に書かれている」

「創造的であろうとして、意味の無いものを付け加えてはいけない。 自然の原理をよく観察し、それをよりよくしようと努力するだけでいい」

「美しい形は構造的に安定している。構造は自然から学ばなければならない」

「未来の建築は自然のイミテーション(真似)に基づいたものになるだろう。なぜならあらゆる手法の中でそれが最も合理的で、長持ちし、経済的だからだ」

「芸術におけるすべての回答は、偉大なる自然の中にすべて出ています。ただ私たちは、その偉大な教科書を、紐解いていくだけなのです」

私は、芸術家は自然の美を超える気概がなければならないと思っています。

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岡本 浩和

>雅之様

ガウディの言葉いずれも深いですね。

>芸術家は自然の美を超える気概がなければならないと思っています。

芸術家に限らず、今の時代特に、人間というもの誰しもそういう気概が必要だと思います。
ありがとうございます。

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