モーツァルト・オペラ

mozart_zauberflote_suitner.jpgモーツァルトの真髄はオペラとピアノ音楽にあるといわれる。僕がクラシック音楽を聴き始めた10代の頃、確かにモーツァルトのピアノ・ソナタやピアノ協奏曲の魅力にとりつかれ、毎日のように反復して聴いていたことを思い出す。さすがに今の歳になってしょっちゅう聴くということはなくなったものの、それでも時折僕のモーツァルト体験の原点であるバックハウスの弾くソナタなどを聴くと心洗われるような気持ちになるのだから、その力たるや凄いものだと思うのだ。
オペラはどうか?前にも書いたが、特に若い頃は「歌モノ」が苦手であった。対訳を読みながら音楽を聴くという行為に慣れないという理由(たとえ字幕付の映像であろうとその違和感は同じ)。そして、どうしても母国語でないと微妙なニュアンスまでが掴みきれないというもどかしさがあるという理由。そういったことから余程音楽や作曲家そのものに興味を持たない限り、随分オペラの世界は避けてきた。それでも音楽そのものを聴き込み、楽しむということを続けていくうちに、ワーグナーやR.シュトラウスなどのドイツ・オペラの奥深さにはまり、そうなるとヴェルディやプッチーニも押さえなくてはという考えからイタリア物も少しずつ聴くようになり、結果古今東西有名といわれる歌劇については一通り把握はしてきた。―それに1990年頃から休暇を取って頻繁に欧州を訪れるようになってからは本場のオペラハウス(ウィーン国立歌劇場やベルリン・ドイツ歌劇場、あるいはジュネーブ歌劇場などなど)でいくつもオペラを体験するようになり、その真髄に触れることで、ほんの少しずつだが理解できるようになったともいえる。

mozart_don_giovanni_krips.jpgさて、モーツァルトのオペラ。オペラを徹底的に聴かずしてモーツァルトは絶対に語れないと最近ようやく「解る」ようになってきた。30年以上聴き続けて来て「今頃か!?」と言われかねないが、そうなのだからしょうがない。それでも、まだまだ彼の有名なオペラしか聴いてこなかったゆえ、昨今は隠れた名作をじっくりと聴いてみたいと思いつつあるところ・・・。

さすがに昨日一日「愛知とし子ピアノリサイタル」の仕切りで疲れたようで(もちろんピアニスト本人ほどの疲れではないが)、それと明日の講演会のための英気を養うという意味も兼ねて今日はのんびりと過ごした。
で、今日はとりあえず有名どころの「魔笛」と「ドン・ジョヴァンニ」。

モーツァルト:歌劇「魔笛」K.620
テオ・アダム(バス)
ペーター・シュライヤー(テノール)
シルヴィア・ゲッツィ(ソプラノ)
ライプツィヒ放送合唱団
オトマール・スウィトナー指揮シュターツカペレ・ドレスデンほか

僕が日頃愛聴する音盤はベーム指揮のベルリン・フィル盤だが、そのベーム盤と双璧の価値を持つ唯一の音盤と勝手に僕が推すのが、このスウィトナーの有名盤。全編があっという間に過ぎ、どの瞬間をとってもファンタジーに溢れ、何度聴いても飽きないところが素晴らしい。それに、何よりタワーレコードでは今や3枚組¥790で手に入れられるところが貴重。

モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」K.527
チェーザレ・シエピ(バス)
リーザ・デラ・カーザ(ソプラノ)
アントン・デルモータ(テノール)
ウィーン国立歌劇場合唱団
ヨーゼフ・クリップス指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ほか

かのフルトヴェングラーの名盤(CD、DVD共)が録音された翌年に同じようなキャストにて録音されたこちらも名盤。時を隔てず録音された二人の指揮者の解釈を聴き比べてみると、いかにフルト
ヴェングラーが「神懸かり的」だったかがよくわかって面白い。重く暗く、音の「うねり」と一体となるフルトヴェングラーの解釈に対してクリップスの演奏の「明るさ」というか抜けた清涼感よ・・・。これはこれでいいだろう。

モーツァルトを聴いて癒される。明日は頑張ろう。

5 COMMENTS

trefoglinefan

私はワルターが指揮したオペラが好きで、
ワルターこそ最高のオペラ指揮者だと思っています。
交響曲などは録音に恵まれているのですが、
オペラに関してはフルトヴェングラー以上に、
録音に恵まれなかったですね。
そのなかにあって特にモーツァルトはどれをとっても良いと思います。
オペラを聴かずしてワルターを語るなかれですね。

返信する
雅之

おはようございます。
ご紹介のモーツァルトの歌劇の録音、学生時代、LPで、まさに擦り切れるくらい聴きました。懐かしいです。スウィトナー指揮の「魔笛」は、ほの暗い雰囲気とドイツ語台詞の心地よい響き、録音の良さにほれ込んだものでした(夜の女王はグルベローバのほうが好きでしたが)。「ドン・ジョヴァンニ」のクリップス盤は、シエピの素晴らしさに尽きると、当時から思っていました。おっしゃるように、フルトヴェングラー指揮との比較は興味深いです。
こうした音盤に親しんでいたある日、当時の「彼女」と、1984年公開の映画「アマデウス」を観ました。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2706794
史実とは異なるにもかかわらず、これこそモーツァルトの本質だと思い、私達は益々モーツァルトの音楽の「毒」にのめり込んでいきました・・・。

返信する
岡本 浩和

>trefoglinefan様
ワルターのオペラに関しては僕は疎いですね。
宇野功芳氏が推薦されているメトでの「ドン・ジョヴァンニ」とSP復刻の「ワルキューレ」以外は聴いたことがありません。
>オペラを聴かずしてワルターを語るなかれですね。
なるほど、痛いところを突かれた感じです(笑)。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
>ほの暗い雰囲気とドイツ語台詞の心地よい響き、録音の良さにほれ込んだものでした
おっしゃるとおりです。素晴らしいですね。
>史実とは異なるにもかかわらず、これこそモーツァルトの本質だと思い、私達は益々モーツァルトの音楽の「毒」にのめり込んでいきました・・・。
僕も当時「アマデウス」にはのけぞりましたね。まさに本質だと捉え、同じくのめりこんだものです。

返信する
アレグロ・コン・ブリオ~第4章 » Blog Archive » モーツァルトに耽る

[…] 昨日はモーツァルトに浸った。今夜はモーツァルトに耽る。またもや最初の本格的なジングシュピール(厳密には「バスティアンとバスティアンヌ」が初)である「後宮からの逃走」を(半年ほど前にも採り上げたが)。僕は昔から「魔笛」を何より愛するが、その「魔笛」の先取りがこのオペラであり、モーツァルトがウィーンに移り住んで間もない時期の作品ですでに完成していたんだということをあらためて確認し、やっぱり感動した。 […]

返信する

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む