岩城宏之指揮アンサンブル金沢の「21世紀へのメッセージVol.1」(1993.9録音)を聴いて思ふ

messages_for_the_21st_century_1708明け方、北の空に飛ぶ鳥の集団を見た。
同じ方向に一斉に方向転換し、見事に調和する鳥の群れの様に自然の美しさを感じた。
鳥の集団にはリーダーはいないという。また、仲間同士の意思疎通もないのだと。それでも、仲間の方へ集まろうとする習性、互いに同じ速さで飛ぼうとする習性、そしてぶつからないようにする習性があれば、自ずとそういう動きになるのだそう。
人間も鳥のそういう行動習性に学ぶべきことがあるのかも。やはり、自然に還れと。

古事記の木梨の軽太子の天田振を歌詞にもつ高橋悠治の「鳥も使いか」の雅。
古来、鳥のいわば超能力を絶対視する人々の祈りの念が高橋の思考を媒介にし、音化されたようにも思える。

天(あま)飛ぶ 鳥も使いぞ
鶴(たず)が音(ね)の 聞こえむ時は 我が名問はさね

鳥の神秘。和というものの美しさ。
また、「アンダーカレント」と題する一柳慧の室内交響曲にある流麗で静謐な音の動きに、自然の美しさを重ねる。作曲者の言では、水を基本テーマとした3部作の3作目らしい。緩、急、緩という構成の1楽章形式の交響曲は、深沈としながらも巨大な塊として発露し、最後は強靭なうなりをあげ、曲を閉じる。

21世紀へのメッセージVol.1
・高橋悠治:鳥も使いか―三絃弾き語りを含む合奏(1993)(作曲委嘱:岩城宏之)
・一柳慧:室内交響曲第2番「アンダーカレント」(1993)(作曲委嘱:岩城宏之)
・新実徳英:生命連鎖―室内オーケストラのための(1993)(作曲委嘱:岩城宏之)
・西村朗:鳥のヘテロフォニー(1993)(作曲委嘱:オーケストラ・アンサンブル金沢)
高田和子(三絃弾き語り)
岩城宏之指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(1993.9録音)

そして、新実徳英の「生命連鎖」は、作曲者の次の言葉がまさに理解の助けとなる。

この地球上には無数の生命が絶えず生まれ、生き、そして滅する。そこに営まれる巨大で複雑な生命連鎖!私たち人類も、そして個としてのひとりひとりもその連鎖の一部として生き、生かされている。
沸々と無数に湧き起こり立ち昇ってくる生とそのエネルギー。今回の作曲にあたり、まずそのことを想った。
PROC-1947/50ライナーノーツ

音楽も生命同様、生まれては消え、消えては生まれる。単体ではどうにもならない音が、連なり集合体と化す中で、生命を吹き込まれるのである。不気味ともいえる新実の音楽にある大いなる生命力に感動。すべてはこうやって拡大発散し、縮小収斂されゆくのだろう。
終結部の突然の爆発と、その後の沈潜の妙。
さらに、美しいのは、西村朗の「鳥のヘテロフォニー」!!
次の作曲者自身の言葉に膝を打つ。

森からの樹々の声、鳥の声、異界の声、水の声、風の声、太陽の声、月の声、そして人間、歌とリズム―それらすべてが織りなす世界のざわめき。
~同上ライナーノーツ

プログレッシブな音楽の流れ、マクロコスモスとミクロコスモスの一体、世界のざわめきが緻密に音楽に映される様に感動を覚えずにいられない。

 

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3 COMMENTS

雅之

また突然ですが、曲の最小単位ってどこなんでしょうね?

CMなどのなどのサウンドロゴは曲なんでしょうか?

鳥の「ホーホケキョ」や「チュンチュン」といった囀りが天然の音楽であれば、「あじのもと」とか「AC」といったCMサウンドロゴ

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AD%E3%82%B4

も音楽ですよね。だとすれば、僕たちが2音だけの音の連なりで作曲しても、著作権が生まれるのでしょうかね。ということは、誰でも作曲家になれます(笑)。

鳥インフルエンザが流行っています。生物の最小単位とは? ウイルスは生物なんでしょうか? 考察すればするほど、これも深淵です。

「巨大ウイルスと第4のドメイン 生命進化論のパラダイムシフト」 武村 政春 (著)   講談社

https://www.amazon.co.jp/%E5%B7%A8%E5%A4%A7%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%81%A8%E7%AC%AC4%E3%81%AE%E3%83%89%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3-%E7%94%9F%E5%91%BD%E9%80%B2%E5%8C%96%E8%AB%96%E3%81%AE%E3%83%91%E3%83%A9%E3%83%80%E3%82%A4%E3%83%A0%E3%82%B7%E3%83%95%E3%83%88-%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9-%E6%AD%A6%E6%9D%91-%E6%94%BF%E6%98%A5/dp/4062579022/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1482015085&sr=1-1&keywords=%E5%B7%A8%E5%A4%A7%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%82%B9

返信する
雅之

誤 CMなどのなどの

生 CMなどの

こういうのは偶発性が生んだ最小コメントの一種(笑)。

返信する
岡本 浩和

>雅之様

思いつきの記事に、これまた深遠なテーマを投げかけていただきありがとうございます。
音楽にせよ生物にせよ「最小」って何でしょうね??
二音以上は音楽になるんでしょうかね・・・。
ウィルスも・・・。
うーむ、深い・・・。
年末年始の課題とさせていただきます。(笑)

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