初心忘るべからず

musik_fur_blockflote.jpg某大学での初のキャリア講座を終えた。人前で話すことは慣れているものの、僕の場合「枠」を設けられると苦手感が増幅する。指定の教材に沿って事を進めてゆくのは簡単なようで逆に難しい。昨日まで「何をどんな風に話そうか」あれこれと頭の中で考えていたが、きっぱり止すことにした。泣いても笑っても「自分がこれまで経験してきたこと」、あるいは「培ってきたこと」でしか勝負することはできないのだから。そう、直前でジタバタしてもしょうがないのである。背伸びせず、あくまで等身大の自分で・・・。と思ったら一気に楽になった。わずか90分の授業。されど受講する学生には今後の就職活動に相当の影響を与えるだろうからいい加減に済ますわけには行かぬ。

数十人、数百人という単位の、いわゆるマスプロ授業というのは手強い。相手が何を思っているのか、どう考えているのか瞬時に把握することが難しいから。基本的に一方通行になってしまうと、どんなものでも満足感は低くなる。いかに相手とコミュニケートし、学生のニーズに対してピンポイントで教示することができるかどうかがやっぱり鍵だろう。ひとつひとつ経験を増やしていって、場数をこなし、常に新鮮な気持ちで接すること。今日の授業がどのような評価だったかは現時点で知る術もないが、傲慢にならず謙虚に反省し、次に向けて準備を万端に臨もうと再決心する。明後日は千葉にある某大学にて「履歴書&エントリーシートの書き方(基礎編)」講座である。

初心忘るべからず。「風姿花伝」を著した世阿弥の「花鏡」中の有名な言葉である。「花鏡」には次のような記述がある。

『しかれば当流に万能一徳の一句あり。 初心忘るべからず。この句、三ヶ条の口伝あり。是非とも初心忘るべからず。時々の初心忘るべからず。老後の初心忘るべからず。この三、よくよく口伝すべし』

まずは、初めて事に対するときの新鮮な気持ちを忘れるなということ。そして、芸(一般的には仕事)の発展途上の中でも徐々に階段を上ってゆくわけだから、その時々の段階においての新鮮な気持ちを忘れてはならないということ。さらに、熟練してある一定の高みに達したとしても「終わり」というものはなく、常に謙虚にまた新しく学ばしていただこうと思う姿勢が重要だということ。

何事もチャレンジし、成功も失敗も体感すること。そうやって人は成長してゆくもの。

ヘンデル:ブロックフレーテ・ソナタ集作品1(1961年12月録音)
・ブロックフレーテ・ソナタト短調作品1-2
・ブロックフレーテ・ソナタハ長調作品1-7
・ブロックフレーテ・ソナタイ短調作品1-4
・ブロックフレーテ・ソナタヘ長調作品1-11
ハンス=マルティン・リンデ(ブロックフレーテ)
アウグスト・ヴェンツィンガー(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
グスタフ・レオンハルト(チェンバロ)

ブロックフレーテの音色は本当に落ち着く。ヘンデルの音楽も癒しである。ぼんやりとしながら音に耳を傾けるだけで緊張感が和らぐのだから不思議なものである。そう、初めてクラシックを聴き、感動したときの思い出、何だかそういう初心の気持ちを忘れてしまっていたように思う。初心忘るべからず。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
愛知とし子さんの岐阜県での二回のコンサート(多治見、瑞浪)、アンコールでの校長先生のリコーダー演奏は最高でした。ステージマナーも堂に入っておられましたし、超絶技巧(?)もありましたし(笑)、聴いていて感動して涙が出そうにもなりました。
ご紹介のヘンデルなど、バロックのブロックフレーテ(リコーダー)のために書かれた曲の楽譜を眺めると、私も小学生時代以来吹いていないこの楽器に、無性にチャレンジしてみたくなります。
今一番憧れているのはこの曲のリコーダーでの演奏↓
テレマン:(無伴奏フルートのための)12の幻想曲 ボスグラーフ(リコーダー)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2748522
有田正広やB.クイケンのフラウト・トラヴェルソやランパルの現代フルート、ホリガーのオーボエといった演奏のCDで愛聴している昔から大好きな曲なのですが、これ、余技として人前で上手に吹けたら、無茶苦茶カッコいいと思います。
岡本さんもリコーダー演奏へのチャレンジ、いかがですか?

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
>アンコールでの校長先生のリコーダー演奏は最高でした。
瑞浪での先生の演奏は残念ながら僕は聴けませんでしたが、良かったですよね。リコーダーの音って本当に癒されます。
それに小学生の時に吹かされた記憶が蘇ります。当時から僕は楽器が苦手でして・・・。あまり良い思い出はありません。
リコーダー演奏かぁ・・・。人前で吹けるようになったらまじでかっこいいですよね!!!
ご紹介のCDは未聴なので聴いてみようと思います。
いつもありがとうございます。

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