アンサンブルofトウキョウ第92回定期演奏会

091014_ensemble_of_tokyo.jpg少しずつ秋が深くなる。ここのところ天気が良いが、夜は少々雨が降った。慈雨である。

今宵、金昌国氏が主宰するアンサンブルofトウキョウの定期演奏会に出向く。秋の夜長に相応しいバロック音楽の夕べ。しかも、なかなかセンスのある選曲で2時間弱という時間を大いに楽しめ、日常の疲れを癒してくれる効果が十分にあった。チェンバロとチェロとを通奏低音にしたこういうコンサートはいつ以来だろうか?もう10数年ご無沙汰かもしれない・・・。

内容は、予想以上に素晴らしく、感動した。出演者のひとりが事情により急遽変更になったとのことで、代理出演された氏は大変だったろうが、アンサンブルもしっかりとし、申し分のない演奏を聴かせていただき、同行したK女史にも満足していただけたようだ。

プログラムは下記の通り。

第1部
・J.S.バッハ:フルート、ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタト長調BWV1038
・J.S.バッハ:オーボエ(チェンバロ)協奏曲ヘ長調BWV1053
第2部
・ヘンデル:ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ作品1-13
・J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲第6番変ロ長調BWV1051
~アンコール~ブランデンブルク協奏曲第6番第3楽章
金昌国(フルート&指揮)、アンサンブルofトウキョウ
佐原敦子(ヴァイオリン)、荒巻美沙子(ヴァイオリン)、長谷川彰子(チェロ)、菊池百合子(チェンバロ)ほか

第1部の最初は金昌国氏によるバロック音楽の特徴の簡潔明快な解説。バロック時代の作曲法は、まずバスを設定し、その後にメロディを付けていくというやり方。一方、その50年後のモーツァルトの時代になると最初にメロディを明確にし、その後に伴奏、つまりバスを付けていくというやり方が一般的になってゆく。つまり、このわずか数十年の間に西洋音楽史的には途轍もないコペルニクス的転回が生じていることを演奏を交えて教示してくださった。うん、とても勉強になった。

kioi_hall_091014.jpgそして、肝心の演奏。1曲目のバッハから惹きつけられる典雅な雰囲気を醸し出す。2曲目のオーボエによるコンチェルトの演奏は珍しい。バッハの音楽のもつ可能性が極めて広いということ、そしてその包容力の豊かさに度肝を抜かれる思いだ。圧巻は何といっても最後のブランデンブルク協奏曲。第6番は6つの中で最も地味な編成だと思うが、これほどまでに滋味に溢れた音楽を聴いたことがないと思えるほどの素敵な演奏だったことを記しておこう。何より金氏によるアンコール前の言葉。「この珍しい編成(ヴィオラ×2、チェロ×1、ヴィオラ・ダ・ガンバ×2、コントラバス×1、チェンバロ×1)による音楽は他にないのでブランデンブルク協奏曲第6番のフィナーレをもう一度繰り返します」ということでこの天下の傑作を2度聴かせていただけるという恩恵を蒙った。喜びに溢れるこの音楽の持つ力は絶大だ。感謝。

ちなみに、やっぱりヘンデルとバッハは同時代同国に生まれながら、全く印象を異にする音楽を書いた2大巨頭だと再確認した。甲乙はつけがたい。気分によって、あるいはその時々によってどちらが聴きたいか微妙に変化する。好き嫌いで言えば僕の場合圧倒的にバッハの勝ち!皆さんいかがでしょう?

ところで、チベット体操四谷教室が同じ時間に四谷地域センターで開催されており、終演後合流し、いつものように「和民」で一杯。盛り上がった。帰宅は午前様。明日、とある大学でのエントリーシート講座があるため、これから最終確認等。とほほ・・・。

5 COMMENTS

雅之

おはようございます。
アンサンブルofトウキョウのバッハとヘンデルのコンサート!、羨ましいです。中でもブランデンブルクの6番はヴィオラ好きには堪らんです。いいなあ!
ところで、世の中には相当なクラシック通でも「バッハ嫌い」って意外に多いですよね。宇野功芳氏はご自分で歌われた経験をお持ちの「マタイ受難曲」以外はそれほどお好きではないようですし、保守の論客である俵孝太郎氏
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%B5%E5%AD%9D%E5%A4%AA%E9%83%8E
も、「(バッハの音楽)は役場のおじさんの説教を聴いているよう」とか何とか、苦手なことを嘗て自著で告白しておられました(↓この本でしたかね?)。
http://www.amazon.co.jp/CD%E3%81%A1%E3%82%87%E3%81%A3%E3%81%A8%E5%87%9D%E3%82%8A%E5%B1%8B%E3%81%AE%E6%A5%BD%E3%81%97%E3%81%BF%E6%96%B9-COSMO-BOOKS-%E4%BF%B5-%E5%AD%9D%E5%A4%AA%E9%83%8E/dp/4906380484/ref=sr_1_4?ie=UTF8&s=books&qid=1255555639&sr=8-4
私はバッハもヘンデルもテレマンも大好きなのですが、昔、故柴田南雄氏はテレマンのことを「気の抜けたバッハ」だと表現し、音楽評論家の渡辺和彦氏は「気の抜けたところがいい」と、確かどこかで反論しておられましたが、私も渡辺氏の意見に同感です。
深かろうが浅かろうが、緻密であろうとなかろうと、音楽で大切なことは「好きか嫌いか」、ただそれだけです。
愛する恋人がバッハよりヘンデルの音楽が好きなら、私もヘンデルの音楽が好きになるでしょうし、私を裏切って別れた恋人がバッハを愛好していたのなら、今後バッハを聴くことが辛くなるでしょうしね(笑)・・・。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
>中でもブランデンブルクの6番はヴィオラ好きには堪らんです。
ですよね。こんなに渋く、しかも心を揺らす音楽はなかなかありません。
>世の中には相当なクラシック通でも「バッハ嫌い」って意外に多いですよね。
そうですね、とても意外なのですが、嫌いという方は多いみたいです。
>音楽で大切なことは「好きか嫌いか」、ただそれだけです。
おっしゃるとおり!結局そこですから、嫌いなものを好きになれというわけにもいかないし、好きになる努力をする必要もないですしね。こればかりは個人の感性だと思います。
>昔、故柴田南雄氏はテレマンのことを「気の抜けたバッハ」だと表現し、音楽評論家の渡辺和彦氏は「気の抜けたところがいい」と、確かどこかで反論しておられました
柴田南雄氏はそんなこと言っておられたんですか!とはいえ、柴田氏が一線で活躍されていたのはもう2,30年前ですからね。時代の受容度も違うと思います。
それにしても俵孝太郎氏は今どうされてるんでしょう?僕もご紹介の本は2冊とも読んでおりますが、良い本だと思います。

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雅之

>それにしても俵孝太郎氏は今どうされてるんでしょう?
タワーレコードの店頭無料配布のフリーマガジン「intoxicate」の連載コラム「クラシックな人々」で、クラシックの新譜や再発CDについて、毎号ずっと健筆を揮われています。私はこれが読みたくて、時々タワーレコードの店頭を訪ねています。
ご参考までに、タワーレコードのホームページの次の記事の、氏の文章などもお読みください。
http://www.towerrecords.co.jp/sitemap/CSfCardMain.jsp?GOODS_NO=1926074&GOODS_SORT_CD=102
俵孝太郎節、健在です(笑)。

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岡本 浩和

>雅之様
ありがとうございます。
タワレコのフリーマガジンは知りませんでした!読んでみたくなりました。
ご紹介のドラティのベートーヴェン全集の記事、まさに俵孝太郎ですね。

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