命懸けのピアニスト

bill_evans_at_the_montreux.jpg男と女、大人と子ども、与える人ともらう人。世の中、2つに分けようとするといろいろな分け方ができる。面倒見が良い人、そうでない人。見返りを期待する人、そうでない人。どちらが良い悪いではないが、人間模様様々だ。

他人思いの人は「おせっかい」な一面も当然持っている。何かとやってあげたいという思いが強い分、必要以上に注力するものだから少しばかり重くなる。特に見返りを期待するわけでもないのだから素晴らしい素養であるのだが、仕事をする上ではそのあたりが玉に瑕になることも時にある。人間関係のバランスというのはなかなか難しい。

タイマンだと何かと問題が生じることでも、第三者に客観的な眼で仲介してもらえれば状況が一変する。当事者であることがこれまた問題を難儀にする。一歩引いて冷静に・・・。

ここのところいろいろとピアノ三重奏曲を聴いていて、音楽をするときも果敢に作品に挑む二人の間にひとり冷静に架け橋になるような存在があるトリオの紡ぎ出す音楽が最高だと感じることが多い。ルービンシュタイン、ハイフェッツ&ピアティゴルスキーのようなヴィルトゥオーゾ3人が寄っての超絶的名演奏ももちろんあるにはあるが、太く長く継続するにはそうでない方がいいのかも、とも思う。

Bill Evans at the Montreux Jazz Festival(1968.6.15Live)

Personnel
Bill Evans(p)
Eddie Gomez(b)
Jack DeJohnette(ds)

エヴァンス、モチアン&ラファロの黄金トリオはラファロの悲劇的な死により解散の憂き目に会いはしたが、ああいう「火花散り」系の音楽集団はいずれにせよ長くはない。エヴァンスの場合、以降も面子を入れ替えながら1980年まで活動するのだが、1968年のモントルー・ジャズ・フェスティバルの様子を記録したこの実況録音盤は、当時まだまだ無名だった二人のジャズメンの「若さ」に引っ張られる形で生み出された、ある意味エヴァンスらしくない刺激的でギリギリの音楽が繰り広げられる。それでも、ビル・エヴァンス自身がぶっ飛んだ感覚の持ち主ゆえ、トリオを組む場合他の2人は随分苦労したのではないか、そんなことも想像させられる。

この録音を聴いていて感じるのは、エヴァンスといえどもやっぱり他のプレイヤーの力があってこそのエヴァンスだということ。彼の途轍もない才能を引き出すのもドラマーやベーシストの力量なのだと。サイドメンとしてのゴメスやディジョネットの能力が抜群であることはその後の彼らの活躍が見事に物語っているが、そういう協力者をいとも軽く見つけ出すところにビル・エヴァンスというピアニストの凄さがある。何せ命がけのピアニストだから・・・。

やっぱり命を懸けて仕事をしている人の姿はかっこいい。


3 COMMENTS

雅之

おはようございます。
先程寝ている時、夢で観た、「霊」が語ったヒントから、私の大嫌いなスピリチュアルの話を・・・。
今「パワースポット」が流行っていますよね。
石鎚山、高野山、天河大弁財天社、瀧原宮、伊勢神宮、豊川稲荷、分杭峠、諏訪大社本宮、身延山久遠寺、久能山東照宮・・・、不思議と中央構造線や糸魚川-静岡構造線など、「パワースポット」はプレートの境界線に多いそうです。昔の人は不思議ですね。
http://bungui.fineup.net/landsat.html
・・・・・・「気」とは、いったい何でしょう?
(中略)古代中国につくられた陰陽思想の象徴ですが、この世界はすべて「陰」と「陽」の二つの『気』からなり、万物の生成消滅といった変化はこの二気によって起こるとされています。・・・・・・
(中略)
・・・・・・これまで行われてきた研究から、「気」の発生源の1つは、『ゼロ磁場』ではないかと言われています。
「ゼロ磁場」というのは、電磁誘導でいう2つの磁界の方向が向き合って、「ゼロ」になっている場のことです。
逆向きに同じ長さ、巻き数の電線を巻いた2つのコイルを向かい合わせて電流を通すと、磁界の向きが正反対になるため、つくられるはずの磁場が打ち消しあって発生しません。
これを「ゼロ磁場」といいます。
つまり、2つのエネルギーが向き合うことによって、本来発生するはずのエネルギーが見かけ上、ゼロになっている状態です。
でも、本当にエネルギーはなくなってしまったのでしょうか?
それは、力の同じ二人の力士が、がっぷり四つに組んで動かない状態と同じで、両側から強い力で押しているのに、見かけ上静止しているように見えるだけで、実際には双方からエネルギーが加わっています。・・・・・・(下サイトより)
http://bungui.fineup.net/
「自分軸」とは、「パワースポット」とか「ゼロ磁場」みたいなものじゃあないでしょうか。心の安定とは、「陰」と「陽」の二つの『気』の絶妙なバランスなのでは・・・。安定には、綱渡りのように、「陰」と「陽」の間で時に左右にぶれながら、中心でバランスを取る必要も当然あるでしょう。
男と女の関係、一対一の人間関係も、同様なバランス感覚が必要です。
そこにもうひとり加わり3人の人間関係になるとどうなるか・・・。
本当はグー・チョキ・パーの関係が理想です。
しかし、一人が片方にひっつこうとするとパワーバランスが崩れ、シューマン夫妻とブラームス、民主党の菅、小沢、鳩山の危ういトロイカ体制みたいになります。「3人目はあくまで客観的な眼で仲介する」、これは良好な人間関係を保つ鉄則だと思います。3人目は「ゼロ磁場」の「パワースポット」みたいな、中立の存在にならなきゃいけません。
ピアノ三重奏曲は、演奏者にとって「求心力より遠心力が働く」、何度も言いますように、これは事実です。
3人がまとまることって、大変高度な人智を要求されます。だからこそ「3」という数字は尊いのでしょう。
本日ご紹介の音盤については、語るには勉強不足です。

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雅之

×「パワースポット」はプレートの境界線に多いそうです。
正確には、
「パワースポット」は、断層やプレートの、境界線付近に多いそうです。
訂正します。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
こんにちわ。
>「パワースポット」はプレートの境界線に多いそうです。昔の人は不思議ですね。
そうなんですよね、ほんとに不思議です。少なくとも「現代人」とは違いますね。
>「自分軸」とは、「パワースポット」とか「ゼロ磁場」みたいなものじゃあないでしょうか。心の安定とは、「陰」と「陽」の二つの『気』の絶妙なバランスなのでは・・・。安定には、綱渡りのように、「陰」と「陽」の間で時に左右にぶれながら、中心でバランスを取る必要も当然あるでしょう。
まったくその通りだと思います。僕がワークショップに”ZERO”という文字を入れたのもひとつはそういう理由からです。雅之さんがお嫌いなスピリチュアルに偏ることなくあくまで三次元的に、とはいえ霊性までも高められる、「物質性と霊性の統合」がテーマだと思っています。バランス感覚が大事ですね。
>3人目は「ゼロ磁場」の「パワースポット」みたいな、中立の存在にならなきゃいけません。
そうです!!わかりました!!
>3人がまとまることって、大変高度な人智を要求されます。
中立の存在になることが難しい故ですよね。ありがとうございます。

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