レンスコウ&ラムビアスのブラームス交響曲第3番(2台ピアノ版)(1992.9録音)を聴いて思ふ

ヨハネス・ブラームスは左脳の人だ。
ちなみに彼は、ピアノで創造する。ならば彼はピアノの人でもある。

ブラームスのピアノ曲には透明感がある。
一方、管弦楽曲には、音を不要に(?)重ね、色を塗りたくった重さがある。正直僕は、若い頃、ブラームスの交響曲が苦手だった。あの、鬱々とした雰囲気が嫌で堪らなかった。

直感にのみ従ったピアノ音楽が素晴らしい。
それも、愛するクララとの連弾を(あるいは2台ピアノを)想定した音楽は、無類の美しさ。

数日前にイタリアの湖水に休暇旅行に出かけるグリムが突然訪ねてきて、2,3日当地に滞在しました。コモの湖で私たちも逢いたいものです。
(1882年8月23日付、クララよりブラームスへ)
ベルトルト・リッツマン編/原田光子編訳「クララ・シューマン×ヨハネス・ブラームス友情の書簡」(みすず書房)P258

底知れぬ愛情こもる手紙。二人はやっぱり相思相愛だったのだろうと思う。
リヒャルト・ワーグナーの死の年に書かれた交響曲第3番。かの曲は、12月2日にムジークフェラインにてハンス・リヒター指揮の下、初演が行なわれた。その頃の、ヨハネスからクララへの手紙は、いかにも事務的な報告の体をとりながら、やはり深層にある極限の愛がにじみ出るくらい。

あなたの賑やかな門下生の音楽の集まりを、私は目の前に浮かべることができますし、心ではご一緒にその席につらなっているのです。各自思い思いの楽器を手や口にした門下の少女たちの一団が、陽気に行進する。そしてピアノの前に厳粛に座っておいでのあなた、あたかも短調で語られるバッハのフーガのように。
(1883年12月付、ブラームスよりクララへ)
~同上書P260

夢みるヨハネス・ブラームス。

ブラームス:
・交響曲第3番ヘ長調作品90(2台のピアノのための原典版)
・ハイドンの主題による変奏曲作品56b(2台のピアノのための原典版)
トーヴェ・レンスコウ(ピアノ)
ロドルフォ・ラムビアス(ピアノ)(1992.9録音)

第1楽章アレグロ・コン・ブリオは、本来雄渾な、英雄的な音調だといわれるが、2台ピアノ版で聴く限り実に女性的。また、あまりに瑞々しい(そして寂寥感に溢れる)第2楽章アンダンテ。あるいは、第3楽章ウン・ポコ・アレグレットは、憧憬をもってじっくりゆっくり歌われ、旋律は驚くほど希望的。そして、何と地に足の着いた終楽章アレグロの、コーダにおける第1楽章第1主題回想の幻想。

このウィーン初演のときには、すでにワーグナーは死去していたが(1883年2月13日死亡)、ブルックナー=ワーグナー派とブラームス派との間にはじめての公然の衝突をまきおこした。ワーグナー派の人たちは、あらゆる手段を使って妨害しようとした。その急先鋒がヴォルフだったのである。しかし、演奏が終わってみると、この曲の支持の拍手が圧倒的に多かった。また、この演奏会にはドヴォルザークの顔もみられた。ドヴォルザークは、ウィーンで自作のヴァイオリン協奏曲が演奏されるので、この地にきていたのである。
この交響曲と2台のピアノ用の編曲は、特定な人に献呈されたわけではない。
「作曲家別名曲解説ライブラリー7 ブラームス」(音楽之友社)P48

ブラームスはあえて献呈者を明言しなかったのかもしれない。
なぜなら、尊敬するリヒャルト・ワーグナーに捧げようと思っていたから(あくまで僕の空想)。

 

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