音楽のない生活

liszt_prelude_furtwangler_vpo.jpg音楽のない生活。
厳密にはそんな生活はありえないが、あえて音楽を聴かない生活というのは1年の間にそうそうはない。30年近くの間で、大学受験の浪人時代、ストイックに1ヶ月だか2ヶ月の間、そんな時期はあったが、それ以降まったく聴かないという日はなかったのではないか。
若い頃は寝ても覚めても音楽、音楽、音楽・・・、そんな生活。レコード・ショップに寄ると欲しい音盤は限りなくあり、1枚1枚を購入しては大事に繰り返し聴いていた。今でこそ特にクラシック音楽の音盤はボックス・セットなど信じられないような格安価格で販売されているものだから昔欲しかった音盤を気軽に手に入れて聴けることはうれしい限りなのだが、それでも音楽を聴く時間そのものが濃密でなくなったことには少し残念さを感じる。その分、できるだけ実演に触れる機会をこれまで以上に増やしたいと当たり前のように思うようになった。2011年はどんな年になるのだろう。仕事もプライベートも一層充実した濃い日々を送ろうと改めて思う。

さて、今年はフランツ・リスト生誕200年の年である。リストについては「早わかりクラシック音楽講座」で採り上げる予定だが、僕はこれまでそれほどリストの音楽そのものに魅力を感じたことが正直ほとんどなかった。それこそ彼の音楽を語るだけの資格はないのだが、ベートーヴェンのシンフォニーやワーグナーの管弦楽曲のピアノ編曲モノを好んで聴いていた時期もあり、リストの変幻自在のアレンジ能力やヴィルトゥオジティには都度舌を巻いた。しかし、何と言っても作曲家の性質そのものが明らかに僕自身の性格と異質だからだろうか、どうも根底で共感できない作品が多かった(実際、残された彼の伝記などを読んでみて、そのプライベートの言動に関しては僕的にまったく信じられない事実が多い)。いずれにせよ、その良さを享受できるようこの機会に少し勉強してみようと思っている(音楽講座を続けている効果効能はこの辺りにもある。自分にとっても大いなる勉強の機会であることが貴重)。

ところで、決して深い音楽ではないが、高校生の頃、初めて聴き、感動したリストの作品がフルトヴェングラー指揮する交響詩「前奏曲」(有名な「エロイカ」とカップリングされた東芝エンジェルのブライトクランク盤)。

リスト:交響詩「前奏曲」
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

もう何度も書いているが、15年以上前に処分したアナログ盤、エアチェック・テープなどのことを実家にいるとついつい思い出す。今となっては何とも悔しい思いでいっぱい。中でもフルトヴェングラーのレコードは本当に大事に、そして繰り返し聴いた。嗚呼、あの懐かしのLPレコードたちよ・・・。

60年前の古い録音からもフルトヴェングラーの血の通った表現が直接心に響く。CDとはまた違った「良さ」があのアナログ盤にはあったように記憶する。久しぶりに聴くと、「英雄」交響曲にはまり込んでいたあの当時のことがまざまざと思い出される。

昨日の「展覧会」が今ここの音楽なら、フルトヴェングラーのこのリストは、ある意味何度も繰り返し聴くに耐える古の彼方の音楽か・・・。

※昨日、ほんの少しだが、ウェルザー=メストの棒によるニューイヤー・コンサートを聴いたが、ウィーン・フィルの音も随分変わったとあらためて感じた。テレビのことなので、比較して良い悪いの批評などはできないが・・・。


4 COMMENTS

yoshimi

リストは、超絶技巧のイメージばかりが強い気がしないでもないですが、オリジナル作品は作風の変遷が激しくて、いろいろ聴いていると面白い作曲家だと個人的には思います。(好みの問題もありますけど)
ブレンデルが評論集の中で、短いですがリスト論を書いていて、これを読んでからは、俗っぽいイメージが消えて、リストに好感を持つようになりましたね。
ハンガリー狂詩曲やエチュードが好きではなかったので、昔はリストはほとんど聴きませんでしたが、《死の舞踏》に《巡礼の年》、ロ短調ソナタなどを聴いてからは、今では好きな作曲家の一人になってます。
編曲物でも、バッハ作品はとてもシンプルな編曲で、美しいものが多いですね。

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岡本 浩和

>yoshimi様
こんばんは、コメントをありがとうございます。
>オリジナル作品は作風の変遷が激しくて
なるほど、そういう視点でリストを考えてみると面白いかもしれませんね。ブレンデルのリスト論は未読ですが、ぜひとも読んでみたいと思いました。これを機にリストについて少し勉強させていただきます。
yoshimi様のブログも少しですが読ませていただきました。これからじっくりと拝読させていただきます。

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