陽気な未亡人

lehar_merry_widow_matacic.jpg年末年始の5日間、音楽を聴かない生活だったからか昨日から無性に(笑)音楽が恋しい。長年の習慣だからだと思うが、最低でも1日に1曲は何らかの音楽を聴きたい。若い頃はそんな状況は考えられず、帰省のたびに数枚から10数枚の音盤を必ず持って帰ったものだが、ここ数年はそういう「病気」もほぼなくなった(笑)。それでも、昨日から一体何枚のCDをかけただろうか・・・。オペレッタも管弦楽曲も、ロックもポピュラーも、そして歌謡曲もジャズも、何だか手を変え品を変え、流し聴きした。

午前中、考え事をしながら、昨日の続きでかけた音盤がレハールの「メリー・ウィドウ」。真に正月に相応しい。だいぶ前に買ったもののほとんど聴いていなかったザンデルリンクのボックス・セットからショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲を聴き始めたが、どうにも暗くて気分が乗らず、10分ほどで挫折(笑)、繰り返しこの「陽気な未亡人」を聴くことにした。

もう50年近くの前の録音にもかかわらず、演奏・音質ともに色褪せない。マタチッチはもともと重心の低い、表面はごつごつした演奏をする指揮者だが、こういう何ともローカルな作品を解釈させると右に出る者はいなさそう(ともかく余所行きでない表現が良い)。もちろん錚々たる歌手の力量もあるだろうが、この名盤の立役者は間違いなく指揮者その人。

レハール:喜歌劇「メリー・ウィドウ」
ヨーゼフ・クナップ(バリトン)
ハンニー・シュテフェック(ソプラノ)
エバーハルト・ヴェヒター(バリトン)
エリザベート・シュヴァルツコップ(ソプラノ)
ニコライ・ゲッダ(テノール)ほか
ロヴロ・フォン・マタチッチ指揮フィルハーモニア管弦楽団&合唱団

オペラやオペレッタは舞台を観るに限るのだが(映像でも良い)、なぜだか僕は昔から「音」だけを「ながら」で聴くのがことのほか好きで、今日だけで何度反復して聴いたろうか・・・(笑)。いや、飽きない・・・。第1幕の短い導入曲から一気にレハールの、というより100年前のパリにいるような気分にさせられる。ドビュッシーが、ラヴェルが、そしてストラヴィンスキーが闊歩していたであろうパリに立ち込める匂い(僕は20年ほど前に1度だけ、それもたった1日だけパリを訪れた。当時松井守男画伯と親交があり、彼が住んでおられたショパンの元住居であったというアトリエにお邪魔した。伺った時、カラヤンの有名な「蝶々夫人」を聴きながら絵を描かれていた光景をまざまざと思い出す。その後、近くのレストランで夕食をご一緒したことも懐かしい)。パリ・・・、フランスは是非とももう一度行ってみたい場所。

ところで、田舎に比較すると東京は暖かい方だと思うが、それにしても寒い。足元から底冷えするような寒さ・・・。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
おう、これも1962年録音の名盤でしたね!!
私もLP時代から大好きです。
マタチッチは「熊」みたいな体型だったのに、こんなおしゃれなオペレッタも得意なのが面白いですよね(笑)。
でも、マタチッチの人生も調べてみると、
・・・・・・第二次世界大戦中はヨシップ・ブロズ・チトー率いるパルチザンに反抗し、親独・親ナチ主義者として活動、大戦後もチトーに反対し続ける態度を取ったため、投獄され死刑を宣告される。その死刑当日に収容所所長にピアノを弾くことを命令され、それを聴いた所長が「芸術家を死刑にするのは忍びない」と処刑だけは免れた(ちなみに、マタチッチ夫人はこの所長の愛娘であるが、他に3人いたと言われている)。ただ、「ナチ協力者」のレッテルは剥がし難く、しばらく活動停止を余儀なくされた。・・・・・・ウィキペディアより
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%B4%E3%83%AD%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%82%BF%E3%83%81%E3%83%83%E3%83%81
なんて、あの時代の苦労を背負った芸術家だったのですね。
この曲の初演は1905年12月30日(アン・デア・ウィーン劇場)、日本では日露戦争が終わったくらい。R・シュトラウスの「サロメ」初演(1905年12月9日 ドレスデン宮廷歌劇場)とほぼ同時期なんですよね。
戦争と平和、官能、退廃・・・、波乱万丈だった20世紀幕開けの音楽の中の1曲として、やはり波乱万丈な世相になりそうな2011年の幕開けに「メリー・ウィドウ」を聴いてみるのも、有意義かもしれませんね。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
>あの時代の苦労を背負った芸術家だったのですね。
音楽ができるってことは素晴らしいことだということですよね。裏返せば、どんなひどい時代でも人々は「音楽」を求めているということです。おっしゃるように2011年の幕開けに「メリー・ウィドウ」はぴったりだと思います。ご指摘を受けてあらためて感じました。
それにしても「サロメ」とほぼ同時期に初演されたことは興味深いですね。

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