プレヴィン指揮ロンドン響のコルンゴルト映画音楽集(2001.7録音)を聴いて思ふ

音と映像の饗宴。
音楽は映像によって力を得、映像は音楽によって一層力を増す。
ハリウッドのセンスと技の勝利というのか、目は空気に感応し、耳は光に感応する。
ヨーロッパ的高貴さとアメリカ的能天気さのど真ん中を貫くエーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト。この人の映画音楽は、時代を先取りし、21世紀の今聴いても一切の遜色なく、美しい。何というスペクタクル!

とくに、ワーグナーがオペラで活用したライト・モティーフの手法を大胆に導入するなど、後期ロマン派の華麗な書法と緻密な変奏技法を採り入れ、天性のメロディストとしての資質をフルに活かして、ハリウッドのシンフォニック・スタイルに多大な影響を及ぼした。
(満津岡信育)
PROC-1313/4ライナーノーツ

その名の通り、彼はやっぱりモーツァルトの生まれ変わりなのかも。

コルンゴルト:
・「シーホーク」組曲(1940)(ヒューゴー・フリードホーファー、レイ・ハインドルフとミラン・ローダーによる管弦楽編曲)
・「女王エリザベス」組曲(1939)(ミラン・ローダーとヒューゴー・フリードホーファーによる管弦楽編曲)
・「海賊ブラッド」組曲(1935)(ヒューゴー・フリードホーファー、ミラン・ローダーとハインツ・レームヘルトによる管弦楽編曲)
・「放浪の王子」組曲(1937)(ヒューゴー・フリードホーファーとミラン・ローダーによる管弦楽編曲)
アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団(2001.7録音)

単なる「映画音楽」と馬鹿にするなかれ。どこかで聴いたメロディ頻発。戦前、戦中の作風とは思えぬ未来音楽に舌を巻く。

それにしてもアンドレ・プレヴィンは、こういう音楽を演らせると滅法巧い。ふくよかな薫り、そして鮮やかな色彩、ロンドン交響楽団を振っての音楽たちはどの瞬間を切り取っても輝かしいシーンを髣髴とさせるもの。

音楽が人々に与える影響とはなんぞや?

意図的、意識的、自発的につくる心象には、聴覚と運動の皮質だけでなく、選択と計画にかかわる前頭皮質も関与する。そのような意図的な心象がプロの音楽家にとってきわめて重要であることは明白だ。ほかの人たちも、よく音楽を頭に浮かべる。とはいえ私たちの頭に浮かぶ音楽の大部分は、自発的に要求したり呼び出したりしたものではなく、自然にわいて来るように思える。ひょいと頭に浮かぶこともあれば、自分でも気づかないうちに、しばらく静かに鳴っているときもある。自発的な音楽の心象は、音楽的素質があまりない者にはなかなか呼び起こせないが、無意識の音楽の心象は、ほとんど誰の心にもある。
オリヴァー・サックス/大田直子訳「音楽嗜好症—脳神経科医と音楽に憑かれた人々」(早川書房)P57-58

「無意識の音楽の心象は、ほとんど誰の心にもある」とは間違いない。
コルンゴルトの天才、プレヴィンの先見!

 

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