ヘルシャー&ケンペのR.シュトラウス ヴァイオリン協奏曲(1975.9録音)ほかを聴いて思ふ

先達の方法を吸収し、いわゆる物まねから早独自性を獲得した天才。
否、そもそもが彼は個性的なのだ。
19世紀浪漫の匂い薫る純独逸的協奏曲。17歳のときの作曲だというのだから驚きだ。
1882年12月5日、ひとまず作曲者のピアノ伴奏による室内楽版でウィーンにて初演(管弦楽伴奏の初演は遅れて1896年2月17日、ライプツィヒにて)。

前日、リヒャルト・シュトラウスは、父フランツに宛て手紙を書いている。

ウィーンでは上々の気分です。町の様子も、外側から見る分には、すでにすっかり頭に入りました。出かけて行くのはもっぱら劇場で、他にはまだ何も見ていません。土曜には《タンホイザー》を見ましたが、これはミュンヘンの方が上です。エリーザベトを歌ったマテルナも、特にいいわけではありませんでした。日曜には「ロメオとジュリエット」(入場料は4グルデン)で、これは素晴らしいものでした。ジュリエット役のヴェッセリが魅力たっぷりでした。今日はまたブルク劇場に行ってみるつもりです。
(1882年12月4日付、父フランツ宛)
日本リヒャルト・シュトラウス協会編「リヒャルト・シュトラウスの『実像』」(音楽之友社)P153

日々劇場通いという余裕がシュトラウスらしい。当の初演は成功だったようで、翌日、彼は次のように手紙で報告している。

昨日の演奏会はうまくいきました。優待券のおかげで、ホールはかなり満員でした。私のヴァイオリン協奏曲はすこぶる好評で、最初のヘ長調のトリルのあと拍手、各楽章のあと拍手、最後は2人のお辞儀という具合でした。・・・私は伴奏で少なくとも不手際なことはしませんでした・・・。
「作曲家別名曲解説ライブラリー9 リヒャルト・シュトラウス」(音楽之友社)P121

かの音楽評論家ハンスリックでさえ、とても好意的な批評を書いているのだから大したもの。

並々ならぬ才能だ。その若い作曲家は、この曲できわめて成功裡にデビューした。サラサーテがドール教授の好意的な推薦でこの(まだ印刷されていない)ヴァイオリン協奏曲をとりあげたいというニュースが本当だとすれば、シュトラウスの名前は間もなく広く知られることになるだろう。
~同上書P121

実際リヒャルト・シュトラウスの名は、その後あっという間に世界に響き渡ることになるのだから。

リヒャルト・シュトラウス:
・ヴィオリン協奏曲ニ短調作品8(1975.9録音)
・家庭交響曲作品53(1975.3録音)
ウルフ・ヘルシャー(ヴァイオリン)
ルドルフ・ケンペ指揮シュターツカペレ・ドレスデン

何て素直なシュトラウス!
ヨハネス・ブラームスの影、時にマックス・ブルッフの木霊。
第1楽章アレグロは15分近くを要する大曲で、堅牢なソナタ形式に守られ、シュトラウスが過去の天才たちのエッセンスを汲み取りつつ自らの力量を飛翔させた佳作。とはいえ、何より僕が最高に美しいと思うのは、青春の光と翳を包含する第2楽章レント・マ・ノン・トロッポ。甘く滴る旋律美と何とも暗い情熱溢れる音調が素敵。そしてまた、すでに巨匠然とした風格漂う終楽章ロンドも見事(ヘルシャーの芯のある堂々たるヴァイオリン独奏が素晴らしいのである)。

久し振りに、きみからの消息をもらって、ぼくはとても嬉しかった。ぼくはときどき、きみが最初の「マーラー信奉者」をすっかり忘れてしまったのではないかと、考えていたよ。
(1897年2月22日付、シュトラウスからマーラー宛)
ヘルタ・ブラウコップ編著/塚越敏訳「マーラーとシュトラウスある世紀末の対話―往復書簡集1888-1911」(音楽之友社)P67

互いへの尊敬が垣間見える、世紀末の対話。
ちなみに、「家庭交響曲」は、1904年3月21日、ニューヨークにて作曲者自身の指揮により初演され、また、ウィーン初演はマーラーの手に委ねられた。1904年11月23日のこと。

また特別に、きみが準備してくれたこの作品(家庭交響曲)の素晴らしい上演にたいし深く感謝する。一時的に興奮する「ウィーン人の熱狂ぶり」には、このような仕事も骨折り損というところだが、でもきみが演ってくれたことは、ぼく自身忘れてしまうことはないだろう。
(1904年11月27日付、ベルリンのシュトラウスよりマーラー宛)
~同上書P128

ケンペの指揮の素晴らしいのは、あくまで自然体でありながら、どの瞬間からもシュトラウス的香気が放たれ、思わず惹き込まれてしまうところか。作品への並々ならぬ愛情が感じられるのである。家庭交響曲も飛び切りの名演奏。

 

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