昨日、いつもお世話になっているカメラマンの関根孝さんがエルーデ*サロンにいらしたので、いろいろ雑談しているうち、「なるほど」という気づきを得たことを今になって思った。彼はテコンドーをやられている。それに、ブログを拝見すると、いかに格闘技好きかということもわかる。いつだったかのブログで相撲の四股ではないが、股を思いっきり広げて柔軟体操をやられている写真を見たことをネタに、「凄いですね」と振ってみた。関根さん曰く、やっぱり「脱力」だと。ただし、単独で体操をしているうちは人間の身体の構造上「脱力は不可能」で、結局誰かの力添え、協力があって初めて脱力状態で開脚柔軟体操が可能になるんじゃないかとおっしゃっていた。
その時は「ふーん」と聴いていただけだが、ふと今になって気がついた。単独で何かに臨んでいる時って実は「力が入り過ぎているんじゃないか」と。誰かに力を貸していただいて初めて「脱力」が可能になるのではないかと(少なくとも我々凡人にとっては他人の力がどうしても必要だ)。
日常生活を送っていると、どうしても独りでは解決できない問題に直面する。そんなとき、恥も外聞も捨てて素直に表現、援助を求められれば即座に解決策が見いだせるのに、プライドが邪魔するのかそもそも素直になるってどういうことかよくわからないせいなのか、なかなか人に協力を乞うことができないという場合が多々ある。独りで悩んでいる状態って、おそらく「頑張っている」状態なのだろう。頑張らなくて良いよ、ひとつひとつ地道に努力さえすれば、といつも人にはアドバイスするが、ひょっとすると僕自身が無用な力を入れ過ぎて、とにかく頑張らなきゃとなっていたのかもしれないと気がついた。
互いの力を信じて脱力し、自身の力を100%出し切れている音楽は素晴らしい。
バルトーク:ヴァイオリン・ソナタ第1番(1921)
ヤナーチェク:ヴァイオリン・ソナタ(1914~1921)
メシアン:ヴァイオリンとピアノのための主題と変奏(1932)
ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
クレーメルとアルゲリッチというのは、どちらかというと互いに自己主張が激しいタイプだから間に入る誰かの存在がないと難しいのかなと思っていた。しかしながら、80年代から90年代にかけて2人が録音した様々な作曲家の作品を聴く限りにおいては、そのどれもがスリリングで、他のどんなデュオでさえ太刀打ちできないであろうエネルギーに満ち溢れている。だから、未来永劫いつまでもこういう関係を続けていただき、できるなら何度も実演に触れる機会を我々聴衆に与えてもらいたいと願っていた。
いつの間にか(袂を分かったのかどうかは知らないが)実演は愚か音盤ですらリリースが途絶えてしまったが、久しぶりにバルトーク他のソナタを聴いてみて空前絶後、他のどんなペアにも代え難い魅力を持ったコンビだったとやっぱり再確認した。いずれも20世紀前半に生み出された、つまり100年近く前の音楽だが、まるで今その場でできあがったかのような錯覚を起こさせるほど、リアリティに富んでおり、即興的でありながら、真に地に足のついた堅牢な表現である点が見事。これこそ「脱力」の極致なり。
おはようございます。
スポーツでも楽器演奏でも、我流だけで覚えたら、必ず変な癖が身に付いてしまい、かえってマイナスになりますよね。そうなってから、その癖を直すのは、容易なことではありませんが、しかし、世間の一般的風潮のように、その癖を「悪い」と考え過ぎるのもどうなんですかね?
バルトークがヴァイオリン・ソナタ第1番を作曲したころは、最初の妻マルタと離婚し、デュータ・パーストリ(ピアニスト)と再婚したころで、その精神的葛藤が、何らかの形で作曲者のインスピレーションを喚起していると、私は思います。
アルゲリッチも、共演のパートナーを替えるたびに、心に新しい波風が立ち、それが新たな葛藤を生み、演奏のインスピレーションを喚起させるタイプの芸術家なのではないでしょうか? 悪い癖だ(笑)。
ベートーヴェンの引越し癖なんかも、ある意味、似た効果を狙っていたのではないかと、ふと思いましたが。
ちょっと前、「男はつらいよ」の中の2本をDVDで観ました。もはやこの世にはいない、太地喜和子(1943年12月2日 – 1992年10月13日)と、大原麗子(1946年11月13日 – 2009年8月3日 )の、マドンナ役を観たかったので・・・。
第17作 男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け
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第22作 男はつらいよ 噂の寅次郎
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新しいマドンナとの出会い、心に波風が立ち、寅さん、相変わらず肩に力が入っています。でも、それがまた新たなドラマを生みます。
意地の張り合いで肩に力が入ってタコ社長と大喧嘩したって、おいちゃんの忠告をちっとも聞かなくたって、どうでもいいことじゃないか! 失恋し、やっと脱力できてまた旅に出る、・・・それが寅さんらしい、人間らしい生き方で、それがこうして皆に愛されているんだから、それはそれでいいじゃないか、と思ったものです。
言い忘れましたが、ご紹介の盤、クレーメルがまた、断トツにいいですよね。アルゲリッチのような女性と共演して脱力するって難しそうだけど、本当に脱力できたのかなあ(笑)。
>雅之様
こんにちは。
その癖が悪いかどうかなんて他人は判断するものじゃないですね。ともすると常識という枠に当てはめようとする人が多いですが、癖=個性という考え方も可能です。
>その精神的葛藤が、何らかの形で作曲者のインスピレーションを喚起していると、私は思います。
なるほど、同感です。
>新しいマドンナとの出会い、心に波風が立ち、寅さん、相変わらず肩に力が入っています。でも、それがまた新たなドラマを生みます。
>それが寅さんらしい、人間らしい生き方で、それがこうして皆に愛されているんだから、それはそれでいいじゃないか、と思ったものです。
余計な力がついつい入ってしまうというのも人間らしいですからね。本当に「脱力」してしまったら人間じゃなくなるかも、です。
>アルゲリッチのような女性と共演して脱力するって難しそうだけど、本当に脱力できたのかなあ
少なくとも演奏中は惑わされないでしょうね、彼らは(笑)。