青春の記念碑

mahler_walter_1.jpg自分の理想とする形にこだわり過ぎると窮屈になる。それによって人ともうまくいかなくなることもある。自分の概念で想定しただけの目的、目標というのは得てして問題を抱えていることも多い。生きていく上で何が大事なのかというと結局「幸せになる」こと。一見マイナスに見えることも後から考えると「良かった」ということもざらにある。だから目先の状況だけを見てこだわらない方が良い。捨てるものは捨てる。思い込みをせず、ベストを尽くすこと。そうすれば必ず「最良の状態」に落ち着くはずだから。

この歳になってマーラーの長い楽曲をいくつも聴き比べたりするのは結構しんどい作業なのだが、週末の講座でとりあげる交響曲第1番を暇をみつけてはじっくりと聴いている。まさに彼の青春の記念碑的な名作で、弟子のブルーノ・ワルターをして「マーラーの『ヴェルテル』」といわしめた傑作である。彼の巨大な交響曲群の中では50分ほどの演奏時間ということでとっつきやすく、しかもわかりやすい構成で、朝比奈先生がいちゃもんをつけ生涯で一度も舞台にかけなかったのが不思議に思われるくらいの音楽だと思うのだ(ただ、薄っぺらなところも多いので聴き過ぎると間違いなく飽きるが・・・)。
この交響曲を作曲した当時、マーラーは24歳~28歳の頃で、所縁のある二人の女性が創作の原動力になっている。一人は初恋の相手ヨゼフィーネ・ポイスル。そしてもう一人は一方的な片想いに終わったといわれるコロラトゥーラ・ソプラノのヨハンナ・リヒター(彼は女性に関しては-もちろん仕事に関しても何でもそうだが-早熟で、恋に落ちるのも速ければ、好きになればとにかく即アタックするという行動派)。しかも全曲の仕上げはマーリオン・フォン・ヴェーバー夫人との不倫騒動の最中に進められたというのだからたいしたやり手である。

マーラー:交響曲第1番ニ長調「巨人」
ブルーノ・ワルター指揮コロンビア交響楽団

ワルター最晩年の名盤。マーラーの「巨人」に関しては誰が何と言おうとワルターのこの音盤に尽きると勝手に僕は思っている。悩みあり愉悦あり、そして爆発あり。「喜怒哀楽」-人間の持つあらゆる感情がこのレコードに刻み込まれている。

僕にとって芸術の目的は結局、常に苦しみからの解放とその克服であるように思われる。
グスタフ・マーラー

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