
標題の通り、彼の思念はどこまでも遠いところへと飛翔する。
音楽は実に幻想的であり、音は深く、また意味深い。
何よりロストロポーヴィチのチェロが終始静かにうねるのである。感動だ。
アンリ・デュティユーの傑作チェロ協奏曲「遙かなる遠い国へ」
全5つの楽章が途切れなく歌われる。
第1楽章「謎」の暗澹たる美しさ、また、第2楽章「眼差し」の、まるでメシアンの如くの神聖な祈り、そして、第3楽章「うねり」の官能、さらには、第4楽章「鏡」での鎮まる湖水の表面を思わす静寂と終楽章「讃歌」の高まる興奮と映える希望の光。無心のロストロポーヴィチの感性が音楽を縦横無尽に表現する。名曲だ。
ヴィトルト・ルトスワフスキのチェロ協奏曲。
第1楽章序奏でのロストロポーヴィチの巧みなチェロの真骨頂。そして、第2楽章「4つのエピソード」における金管群の奇天烈な雄叫びに相対するチェロの思慮深い音に感応し、第3楽章「カンティレーナ」からフィナーレにかけての、まさに作曲家の言葉通りの「混沌から調和」への顕現。
私は混沌から始め、そしてそのなかにだんだんと秩序をつくることができた。
(ヴィトルト・ルトスワフスキ)
音のイメージの豊饒な広がりとストーリー性に僕は言葉を失う。
そこにルトスワフスキの、そしてそれを容易に再現するロストロポーヴィチの天才を垣間見る。
アンドレ・ジョリヴェのチェロ協奏曲第2番は、最長の第1楽章が肝。まるでロック音楽を聴くかのようなカタルシスは、不穏な空気を解放しようとする内なるパワーの成せる業。4分に満たない第2楽章アリアが美しく、「生き生きと」という指定通りチェロがうなり、管弦楽が細かいサポートをする終楽章が圧巻。
音楽は間違いなく夢と希望を運んでくれる。