ムター ペンデレツキ指揮ロンドン響 ペンデレツキ メタモルフォーゼン(1997.1録音)ほか

前衛的手法、例えば、トーン・クラスター、合唱による自由なしゃべり声に、グレゴリオ聖歌のモティーフなども用いながら強力な緊張感溢れる音楽を、自由自在に操ったクシシュトフ・ペンデレツキ。

「ルカ福音書」を選んだのは、バッハの使ったマタイとヨハネを避けたから。
(クシシュトフ・ペンデレツキ)

ペンデレツキは、不条理な死に見舞われた戦争犠牲者のイメージを、イエスの姿へと重ね合わせるべく「ルカ福音書」から必要なシーンを借用した。その上で、彼の創造した音楽は、前衛的でもあり、また伝統的でもあったのである。
風の禍の不穏な現況に重なり合うかのように、ペンデレツキが亡くなった。

「ルカ受難曲」第1部「キリストの受難」から第1曲「ああ唯一の望みである十字架よ」を聴いて、僕は魂から震えた。
ペンデレツキの哀しみが、彼自身の重みのある思念が音の一粒一粒に刻まれる。

また、アンネ=ゾフィー・ムターのために作曲されたヴァイオリン協奏曲第2番。
冒頭から調性感は顕著で、音楽は暗く重く、しかし、心に迫る。
何より弱音のヴァイオリン独奏に、大音響の管弦楽の対比。あるいは、ゆるやかに流れる旋律に、突如として猛スピードで駆け抜けるフレーズの対比。すべてが音楽的で、また心地良い。

・ペンデレツキ:メタモルフォーゼン(ヴァイオリン協奏曲第2番)(1992-95)
クシシュトフ・ペンデレツキ指揮ロンドン交響楽団(1997.1録音)
・バルトーク:ヴァイオリン・ソナタ第2番(1995.9Live)
ランバート・オーキス(ピアノ)
アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)

言葉にならない究極美。単一楽章の、文字通り「メタモルフォーゼン(変容)」というタイトル通りの(音楽は切れ目なく、アレグロ・マ・ノン・トロッポ―アレグレット―モルト・メノ・モッソ―ヴィヴァーチェ―スケルツァンド―アンダンテ・コン・モートと流れ、浮沈する)、音楽の逍遥を、ムターが、縦横に、自在に楽器を操り、表現する。ここには、ペンデレツキの持つ独特の重みや暗さは排除され、女性的で明朗な要素が前面に出されるのである。

アンネ=ゾフィー・ムターも新型コロナウィルスの陽性反応が出たらしい。
この恐るべきウィルスの猛威が一日でも早く収束することを心から願う。

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