「素」でいこう

beethoven_3_4_uchida.jpg年度末のこの日、外は雨。急激に寒くなり、2月に戻ったような天気。相方が何年かぶりに風邪をひいて熱を出し寝込んでいる。心配は心配だが、たかだか風邪のこと。ゆっくり寝て休息すればすぐに治るだろう。とはいえ週末は新人研修合宿が控えているのでうつされるわけにはいかない。ということで僕自身も風邪薬を念のため飲み予防。

今晩はいつものように就活学生のための「ES&面接講座」。少しずつ書くことが整理されてきたので進歩は見られる。ただし、「しゃべり」になるとまだまだ。こういうことは人前で何度も話す癖をつけて場数をこなすに限る。今の学生はマニュアルに頼るきらいがある。どうすれば格好よく聞こえるかばかりに頭が回り、整理はされているものの心底本音というか人間性が伝わってこない。その人個人のスペックを聞きたい、知りたいのではなくどういうことに興味を持ち、日々どういうことに感動し、どんな人間なのかを知りたいだけなのだが・・・。どうも評価されるとなると人間は一気に固くなる。と同時に格好をつけたがるものだ。「素」でいこうよ。

「傑作の森」の後期、すなわち1808年に初演された高貴で優雅な協奏曲を聴く。古典派協奏曲の中では画期的な構成をもつ。すなわち、ピアノのソロによる主題の再現から始まるこの曲は第3協奏曲や第5協奏曲「皇帝」とは趣を異にし、ベートーヴェンらしからぬ女性的な面を前面に押し出している。「運命」交響曲や「熱情」ソナタ同様、「同音連打」のメロディが印象的で若い頃から僕の愛聴曲でもある。昔はバックハウスがイッセルシュテットと組んだ録音を好んで聴いたが、最近は内田光子がザンデルリンクの棒の下熱演を聴かせてくれる音盤を取り出すことが多い。

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番ト長調作品58
内田光子(ピアノ)
クルト・ザンデルリンク指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

昨日の「早わかりクラシック音楽講座」でも抜粋で聴いていただいたが、本当にこの楽曲は素晴らしい。「運命の4つの音」とは楽聖が幼少時に父親から受けた鉄拳のフラッシュ・バックがモチーフになっているというが、少なくとも第4協奏曲にはその「暗さ」は見当たらない。それよりもむしろヨゼフィーネとの不倫の恋を謳歌しているベートーヴェンの内なる情熱が優しく微かに吹き抜けるかのようにサラッとしつつも、最終楽章では輪舞するような愉悦感を演出し、ひょっとするとこの時期がベートーヴェンのもっとも幸福な時期だったのではないかと思わせるだけの説得力があるように思う。
何年か前サントリーホールで内田のリサイタルを聴いたとき、とても感動した。2つのプログラムを聴いたが、そのひとつはベートーヴェンの後期3大ソナタの夕べであった。思い出すだけで震えてくる。

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