モントゥー指揮ロンドン響 エルガー エニグマ変奏曲(1960録音)ほか

新しい交響曲は初期の作品群のどれよりも断然軽妙で、しかも輝かしい。ヘルシンキにおける初演はすばらしい成功をおさめ、その雰囲気は、多くの点で《クッレルヴォ交響曲》初演の寄ると同様だった。《第2交響曲》は輝かしいクライマックスをもち、聴衆はそれがフィンランドの闘争の勝利への道程を表現しているものと確信した。
マッティ・フットゥネン著/舘野泉日本語版監修/菅野浩和訳「シベリウス―写真でたどる生涯」(音楽之友社)P48

作曲家はその標題性を否定するが、その内容は間違いなく民族主義を煽るものであり、ナショナリズムに火のついた聴衆には受けが良かったのだろうと想像する。確かにこの音楽には、華々しい勝利への凱旋たる終楽章アレグロ・モデラートがある。

内側で燃える魂の発露は、指揮者の力量の表れなのだろうか。
ここでのモントゥーの指揮は、若々しくも重厚で、かつ情熱的なものだ。第1楽章アレグレット冒頭から音楽は途轍もなく意味深く鳴り響く。あるいは、第2楽章テンポ・アンダンテの慟哭は、呪縛からの解放を願う意志の表れか、真に迫る(モントゥーの真骨頂)。第3楽章スケルツォから終楽章アレグロ・モデラートになだれ込む瞬間の、魂の大いなる解放感が堪らない(終結の、荒々しいばかりの思念と感情の坩堝)。

・シベリウス:交響曲第2番ニ長調作品43(1959録音)
・エルガー:エニグマ変奏曲作品36(1960録音)
ピエール・モントゥー指揮ロンドン交響楽団

一方、エニグマ変奏曲の主題の、老練の儚さの表出が実に美しい(音楽は決して枯れず、むしろ色香すら漂わせる)。愛妻アリスを表す第1変奏の感謝の念、あるいは、友人のピアニスト、スチュワート・パウエルへの第2変奏の忙しない動きにも思いがこもる。大地主ウィリアム・ベイカーの第4変奏の激性はモントゥーならでは。また、エルガーのヴァイオリンの弟子であったイザベル・フィットンを表す第6変奏での、(あえての)ヴィオラ独奏の何とも悲しげな表情に、ロンドン交響楽団のメンバーの技量を思う。
それにしても第9変奏ニムロッドの、静寂から湧き出で、クライマックスへと徐々に移行する音楽の神々しさよ。さらには、エルガー及びスチュワート・パウエルと共にトリオをしばしば楽しんだ盟友ベイジル・ネヴィンソンを示す第12変奏の弦楽合奏の妙味、そして、イニシャル代わりの星3つで表された意味ありげな第13変奏に、心に内を秘めるエルガーの心情を、自画像たる最後の変奏曲に、作曲家の堂々たる自信を思う。

自在に飛翔する入魂の棒は、晩年のピエール・モントゥーの慈しみ。

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