ジョン・ケージ 4分33秒(1952)

帰省中は音楽を聴かない。というより、聴く時間がない。
世間の喧騒を離れ、自然の中にあり、そして、そこにまた日常がある。子どもの頃と何ら変わらない、田舎での日常である。

わたしは環境にある音を楽しむことを主張してきた。ちょっと前にとても美しい絵葉書をもらった、イギリスの画家リチャード・ハミルトンからのもので、彼はテレビを見ていたそうだ。ケルトの神話のついての番組で、その中にこんな問いがあった。「世界でもっとも美しい音楽はなにか」とね。英雄たちが次々に答えていって、最後の者が「何かが起きたときの音が、世界でもっとも美しい」と言って、それが最高の答えだとみんな思ったというわけ。
第8回ジョン・ケージ【20世紀アメリカの作曲家インタビュー】

そして、同じインタビューの中でケージは続けて次のように語るのである。

わたしはパーカッションの楽器をいくつか持っているけど、ピアノはないし、レコードは聞かない。環境の音を聞いてるんだ。家の中の家電の音とか、外からの車の音だとかね。
~同上サイト

僕は目から鱗が落ちた。
環境の音こそが、最も美しい音楽なのかもしれないと。

・ジョン・ケージ:4分33秒(1952)

ケージが不惑の年に書き下ろした(?)革命的傑作。
レコードのない、CDのない、あるいはDVDのない生活の中にこそ、「聴くこと」の豊かさが真にあるということをあらためて思った次第。

日常的に気づくことのない環境の音にこそ真理が詰まっているということ。
無駄のない、無理のない、ありのままの時間が過ぎる今日という日にこそ、生きる上での大いなるヒントがあるのだろうと思う。
モーツァルトの忌日に、奇蹟の273秒なり。

人気ブログランキング


コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む